HATAKENです。これまで“私がどうしてそのモジュールを選ぶのか”という理由を通して、モジュラー・シンセの魅力と数々のモジュールを紹介してきたこのコーナー。あと2回で連載終了となります。読んでくださった方々、ありがとうございました! 最後は今まで紹介してきたモジュールでライブ・システムを組み、演奏をして締めくくろうと思います。なので今月はシステム構築の考え方を、来月は演奏で具体的な使用イメージをお伝えできれば幸いです。
リズムはVarugate 8+とVoltage Blockで操作
“これまで連載に登場したモジュール”というモジュールのセレクトに特殊な条件を設けつつも、普段のようにライブ・システムを考えてみました。
まずリズム音源は、キックがWMD Crater、シンバルはWMD Crucible、パーカッションはWMD Fracture、NOISE ENGINEERING Basimilus Iteritas Alterを使用します。
これらリズム系モジュールの音色操作は、自由度の高いゲート・シーケンサーMALEKKO HEAVY INDUSTRY Varigate 8+をメインに、メモリーを共有して呼び出せる相棒=同社のCVシーケンサーVoltage Blockで行います。
次にベース音源はCWEJMAN BLDというベース・リード&ドラム・ジェネレーターを使用します。フィルター・エンベロープなども充実しているので、一台でベースは完結です。
ベースのシーケンサーは、MAKE NOISE Reneを使用。クロック・ディストリビューター4MS Quad Clock Distributorの2つのチャンネルからクロックをReneのXとYに送ってシーケンスを進めます。クロックを送る各チャンネルのCVインにLFOでモジュレーションをかけているので、シーケンスのクロックは常に変化し続けます。つまり、ベース・ラインを発音するタイミングがLFOによって常に変化し続ける状態です。LFOのソースは、ROSSUM ELECTRO-MUSIC Mob of Emusの変化のレンジをアッテネーターのINTELLIJEL Triattで狭めて、ベース・ラインの符割りが自然になるように調整したものを使用。Reneのタッチ・パネルとホールドを使用して、ルートのみ鳴らしたり、任意のステップ数でループさせたり、ランダムのようなフレーズを生み出します。
Marblesでヨレた上モノのフレーズを作る
次に中音域のパートを含む上モノにはMUTABLE INSTRUMENTSのランダム・サンプラーMarblesでシーケンスに乗ったフレーズやジャズのインプロビゼーションのようにヨレたグルーブを作りたいと思います。
Marblesで鳴らす音源は、音長の調節もしやすく多彩な音を持つ同社の物理モデリングの音源RingsとINTELLIJEL Plonk。そして、和音にはQU-BIT ELECTRONIX Chordを使います。さまざまなパッドやオルガンなどを備えるため、単体で和音を演奏するモジュールとしてライブで有用です。そしてサンプラーの1010MUSIC Bitbox MK2もミキサーからステレオ・フィルターのMAKE NOISE QPASとMAKE NOISE Mimeophonというステレオ・ディレイ/リバーブを通して、空間の演出に一役買います。
リードとしてMAKE NOISE Richter WogglebugのStepped OUTをINTELLIJEL ScalesでChordのスケールと合うように設定。そしてMAKE NOISE Pressure PointsをWogglebugのコードとスケール、そしてChordのボイシングを切り替えるCVバンクとして使用すると、全部で4つのコードを切り替えられます。それぞれのコードのアサインなどノブの調整でいつでもリアルタイムに変更可能です。
それ以外にもモジュレーション・ソースとして活躍するのがWogglebugとMob of Emusで、さまざまなモジュールの機能にリアルタイムでCVを送ります。そこではTriattがアッテネーターとして活躍します。
そして、パーカッシブなリズムとPlonkは、ミキサーのHAPPY NERDING 4X Stereo Mixにまとめ、MUTABLE INSTRUMENTSのテクスチャー・シンセBeadsを通しています。キック、ベース、RingsやHIKARI INSTRUMENTSのシンセSineは、ミキサーXAOC DEVICES Pragaにまとめています。Pragaの2つのセンド&リターンにはERICA SYNTHS Pico DSPとHAPPY NERDING FX Aid XLをディレイとリバーブとして用意しました。それぞれのディレイ・タイム、リバーブ・タイムにMob of Emusからモジュレーションをかけてあります。
ChordやBitbox MK2は、4X Stereo Mixなどミキサーにまとめて、QPASとMimeophonを通り、それらのアウトをEXPERT SLEEPERS ES-9でまとめています。ES-9を経由するので、USBでコンピューターに接続すれば、各ミキサー別のマルチトラック録音が可能です。
このように、演奏性に富んだモジュラーらしい演奏を可能にするセットとなりました。来月は実際に演奏してみます!
【Profile】1990年代よりシンセ奏者として活動。2013年から東京モジュラーフェスティバル(TFoM)をデイブ・スキッパーとともに毎年開催。世界中のモジュラー・シンセ・メーカーや、モジュラー・シンセを演奏するアーティストを招き、国内でのモジュラー・シンセの普及に努めている