皆さん、こんにちはHATAKENです。本連載で毎月1つずつモジュールを紹介してきて半年以上がたちました。モジュラー・シンセの魅力を紹介しつつ、“なぜ今モジュラー・シンセを使うのか”をお話ししてきましたが、“実際にモジュラー・シンセを購入してみたよ”なんて方も居るころでしょうか? 今回紹介するINTELLIJEL Triplattというアッテネーターは、皆さんが実際にモジュラー・シンセを始められる際に、きっと役立つ“知っ得”モジュールです。
今月のモジュール:INTELLIJEL Triplatt
モジュール間で行き来する電圧を最適にする
まずアッテネーターとは減衰器のことで、信号を適切なレベル(振幅)に減衰させる回路のことです。例えば、LFOを使ってフィルターのカットオフ周波数に揺らぎを加えようとするときに、入力電圧が高いと効果が大き過ぎることがあります。ちょうど良い範囲でモジュレートできるように、アッテネーターで電圧をシフトして信号の調整を行います。
アッテネーターは思い付いたパッチングを具現化しようとするときに、モジュール間の信号を適切なものにしてくれるという大切な役割を果たします。最近は各モジュールの入力にアッテネーターを備えたモジュールも増えてきて、省スペースという面でも便利になりました。本連載で紹介してきたMAKE NOISEやMUTABLE INSTRUMENTSなどは充実した入力を備えたモジュールをそろえていると言えるでしょう。逆にすべてのモジュールがアッテネーターを持っているわけではありませんので、Triplattのような気の利いたモジュールが重宝するのです。Triplattはアッテネーターの定番で、Triattの後継機種です。Triplattには各チャンネルに“スペシャル・ファンクション”と呼ばれる入力コントロール・スイッチが追加され、ますます便利に。また、3段階あった極性スイッチは、2段階に簡素化されました。
入出力によってミキサーやCVソースとして機能
Triplattは減衰させるだけでなく、電圧の“−/+”を反転させることもできます。そのため1つのCVを分岐してTriplattで極性反転させて、ほかのステレオのモジュールを制御することが可能。各チャンネルにはスイッチが付いているため、入力信号が小さくても、chAでは信号を2倍に、chBでは+5V電圧を追加、chCでは入力信号のミュートもできます。また、信号の“−/+”の極性を2色に光るLEDが知らせてくれるので、出力信号を視認できるのはとても助かります。
シンプルながら、その入出力の方法によって機能がさまざまに切り替わります。すべてのチャンネルの入力と出力の両方に接続をすると、3つのチャンネルが別々のアッテネーターとして機能します。さらに、chAに入力して、出力に接続が無ければ、次のチャンネルにそのまま信号が送られるので、3chミキサーとして機能します。また、chAから入力して出力は接続せず、chBから出力を取り出す場合は、chAのノブはアッテネーターとして入力信号を減衰させ、chBのノブで電圧をシフトさせることができます(動画参照)。2チャンネル分をそのように使っても余ったchCは、独立したアッテネーター/CVソースとして使用できます。
入力に何も接続されていないときに、各チャンネルはアッテネーターとは別の“CVソース”として機能します。ノブの下のスイッチがUNIのときは0〜5V、−/+のときは−5〜+5Vの範囲で調整できます。これはとても便利で、CV INだけを持つモジュールのコントローラーとしても、サンプラーのバンクの切り替えや、はたまた買ってきたばかりのモジュールのテスト用外部入力信号としてなど、さまざまな場面でかゆいところに手が届くモジュールです。
今回の動画では、そんなTriplattの挙動をオシロスコープで確認していきましょう。文章でお伝えしたことが、一発で理解できると同時に、Triplattの機能がどのようなシーンで応用できるのかお話しします。フィルターやオシレーターに対して、Triplattを通してLFOやエンベロープの信号を送ってみて、その効果を確認していきましょう。
INTELLIJEL Triplatt 製品情報(英文)
【Profile】1990年代よりシンセ奏者として活動。2013年から東京モジュラーフェスティバル(TFoM)をデイブ・スキッパーとともに毎年開催。世界中のモジュラー・シンセ・メーカーや、モジュラー・シンセを演奏するアーティストを招き、国内でのモジュラー・シンセの普及に努めている
Patch The World For Peace 〜モジュラー・シンセを選ぶ理由
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