皆さんこんにちは、HATAKENです! 今月は、ユーロラック・モジュールの老舗メーカー4MSのQuad Clock Distributor(以下QCD)を紹介します。QCDは4つの独立したクロック・ディストリビューターとしても、同期した4種類のクロック出力としても使用可能。クロック・モジュールの名機であるQCDを通して、同期やテンポを司るだけではない、モジュラー・シンセならではの自由な使い方を掘り下げてみようと思います。
今月のモジュール:4MS Quad Clock Distributor
今回の動画ではQCDを使って具体的に音を出しながら、基本的な機能と応用方法を紹介します。QCDのクロックでキックやハイハットを鳴らしたり、同期したシーケンサーでMUTABLE INSTRUMENTS Ringsを演奏したり、Richter WogglebugのランダムCV出力でQCDのクロックを制御したらどんなことになるのかを試してみましょう。
クロックのテンポを分割/倍増させる
4MSはもともと、ギターのペダル・エフェクトをリリースしていました。ユーロラック・モジュールの開祖DOEPFERが既に多くのモジュールをリリースしていた当時、4MSの創始者ダン・グリーン氏もモジュラー・シンセの柔軟さに魅了されてユーロラック・モジュールの開発をスタートさせます。まずは“拍子記号”に着目し、複雑なパッチを要した“ポリリズム”を可能にするRotating Clock Dividerなど、クロックを操るモジュールをさまざまとリリース。中でもQCDはクロック・モジュールの代名詞とも言える名機で、シンプルだからこそ柔軟。さまざまな用途に活用できるモジュールです。
QCDはタップ・テンポによるクロック出力(Tap Out)のほか、4つのクロック出力を用意。各チャンネルにはクロック入力(CLK IN)、クロック出力(OUT)、リセット(Reset)、ノブの値を外部から電圧制御するCV入力(Div/Mult)があります。4つの独立したクロック・ディバイダー/マルチプライヤーを装備しており、クロックのテンポを分割/倍増させることが可能です。各ノブは、センター位置でマスターと同じクロックを出力。左に回すほど周期は遅く、右へ回すほど周期は速くなります。その範囲は64分の1〜64倍まで変更可能。ノブの操作だけではなく外部からのCVコントロールもできます。
セルフ・パッチを連ねて複雑なパターンを生成
各チャンネルは個別のクロック入力を備えているので、独立して動作もしますが、入力が無い場合は1つ上の段のクロックに同期します。そのため、1つの入力に同期した4種類のクロックを取り出す用途に便利です。タップ・テンポでマスター・クロックを設定し、4チャンネルを同期して使うことも可能。一部のチャンネルのみ別のクロックに従わせることも、外部入力で同期しているときにタップ・テンポで設定したクロックを独立して出力することもできます。同期しないクロックの出力を任意のチャンネルのクロック入力にセルフ・パッチすると複雑なパターンを生み出せるので、個人的にライブで重宝しています。セルフ・パッチを連ねれば、より複雑なリズム・パターンを生み出すことも可能。アルペジオのような一定のリズムの演奏を、ギター・リフのような複雑なリズムに変化させることもできます。ほかにも複数のシーケンサーやリズム・マシンにクロックを送り、任意のマシンだけテンポを半分に落とすのはライブでの展開や演出で有効。モジュレーション・ソースとしてどう生かすかは、アイディア次第で無限大ですね。
QCDの表現力は専用の機能拡張モジュールQCD Expanderでさらに増します! クロックの波形の振幅を調整できるほか、本体のクロックと反転したゲート出力を装備。さらにDiv/MultのCV入力に対するアッテネーターがチャンネルごとに追加されます。ゲート・シーケンサーのようにも使えますね。先月紹介したMAKE NOISE Richter Wogglebugのようにクロックと同期しつつランダムを出力する装置や、QCDのようにマスターのクロックと同期しつつ複雑な変化を加えることができる装置は、どちらもグリッチな効果がありながら音楽的な表現に一役買ってくれるので面白いです。
4MS Quad Clock Distributo 製品情報(英文)
【Profile】1990年代よりシンセ奏者として活動。2013年から東京モジュラーフェスティバル(TFoM)をデイブ・スキッパーとともに毎年開催。世界中のモジュラー・シンセ・メーカーや、モジュラー・シンセを演奏するアーティストを招き、国内でのモジュラー・シンセの普及に努めている
Patch The World For Peace 〜モジュラー・シンセを選ぶ理由