今月のモジュラー・シンセ:MUTABLE INSTRUMENTS Rings 〜第2回 Patch The World For Peace

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 こんにちは、HATAKENです! 今月も私の大好きなモジュールをご紹介しながら、モジュラー・シンセの魅力に迫ります。今回は物理モデリング音源、MUTABLE INSTRUMENTS Ringsです。

今月のモジュール:MUTABLE INSTRUMENTS Rings

物理モデリング技術をお手軽に体感できる

 物理モデリング音源とはDSPを用いたもので、エキサイターとレゾネーターで構成されています。ソフトウェアで先行していた物理モデリングの技術が、Eurorackのフォーマットでより感覚的な形になったのがRingsと言えるでしょう。モジュラー・シンセがお手軽で、生な音作りをする楽器であることをきっと実感していただけるはずです。

 

 Ringsは生楽器のように、刺激が加わる→ノイズ発生→共鳴する仕組みを再現しているシンセです。そもそもアナログやデジタルの音源とサンプラーを自在にモジュレーションできるシンセのフォーマットに物理モデリングを加えたものとしてリリースされたのがMUTABLE INSTRUMENTS Elementsというモジュールでした。そのElementsのレゾネーター部分を独立させてリリースしたものがRingsです。Ringsは、ほかのMUTABLE INSTRUMENTSの物理モデリング音源と同様に、革命的で爆発的なヒット・モジュールとなり人気を不動のものとしました。それまでの電子音にあふれていたモジュラー・ラックに、新鮮でリアルな“仮想アコースティック・サウンド”をもたらしたのです。

 

 肝心の音ですが、Ringsの音色はどれも美しいです。抜けの良いデジタル・サウンドとアコースティックに近い不思議なサウンドを自由に行き来できます。また、フロント・パネルに配置された5つのノブと外部CVによって、音作りに必要なすべてを操作可能。フィルターもエンベロープ・ジェネレーターもアンプも必要としない、一台の楽器として完結するので素晴らしいです。コンパクトなのに機能性に優れているため、ライブで使うスペースの限られたラックに入れるモジュールとして、Ringsはとてもお薦めできます。

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MUTABLE INSTRUMENTS Ringsのパネル

表現力の幅が広がる5つのノブを装備

 Ringsでは、3種類のレゾネーター・モードが選べます。振動する構造体を再現するModal resonator(緑)、和声的なドローンと倍音を生み出してシタールやサロードなどの弦の響きを再現するSympathetic strings(オレンジ)、カープラス・ストロング合成を拡張しフィードバックの回数が非常に多いショート・ディレイを使用して、弦をたたいたりこすったり弾いたりしたようなピッチのある波形を再現するModulated/inharmonic string(ピンク)です。

 

 パネルには表現の幅を広げてくれる5つのノブを設置。ローパス・フィルター/EQのように使えるBRIGHTNESS、音の長さを調節するDAMPING、共鳴体を刺激する位置を調整するPOSITION、コース・チューンに相当するFREQUENCY、共鳴体の構造やピッチ・スケールなどモードごとに役割の変わるSTRUCTUREがあります。すべてのノブにアッテネーター付きCV入力を装備。右上のボタンでモード切り替えし、左上のボタンで発音数を1/2/4音から選びます。STRUMというトリガー入力を備えており、ここから入力すれば弦楽器をかき鳴らすような表現やフラムにも使用できます。

 

 今回の動画では、同じくMUTABLE INSTRUMENTSのMarblesというランダム・サンプラーを使ってRingsを鳴らし、最終段にエフェクターとして同社Cloudsを入れて、アコースティックなエレクトロニック・アンビエントの演奏をしてみます。コンタクト・マイクロフォン・モジュールの同社Earsは、レゾネーターとしての働きを試してみるために使いました。

 

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 このセットだけでも、ソロ・ライブができてしまうほど音楽的な表現ができます。Ringsたった一台で、フィルター、長さ、ピッチなど音の主要な成分を簡単に調整できてしまいます。非常に容易に音作りができる、便利なモジュールです。

 

fukusan.com

 

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HATAKEN

【Profile】1990年代よりシンセ奏者として活動。2013年から東京モジュラーフェスティバル(TFoM)をデイブ・スキッパーとともに毎年開催。世界中のモジュラー・シンセ・メーカーや、モジュラー・シンセを演奏するアーティストを招き、国内でのモジュラー・シンセの普及に努めている

 

Patch The World For Peace 〜モジュラー・シンセを選ぶ理由 

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