皆さんこんにちは、HATAKENです! 今回はシンセの肝、フィルターを取り上げます。最近の製品の中で最も興味を引くのが、ステレオ仕様のフィルターです。モジュラー・シンセをDAWなどと共存させるために需要が高まったのでしょう。各社が趣向を凝らしてステレオ効果を得られるフィルターを作っているのですが、今回はMAKE NOISEのステレオ・フィルター、QPASを紹介します。
今月のモジュール:MAKE NOISE QPAS
今回の動画では、音源を4MS Stereo Triggered SamplerからQPASへ送り、それをMAKE NOISEのステレオ・ディレイMimeophonに送っています。空間系のエフェクトと組み合わせて使うことで、QPASがさらなる効果を発揮する様子を見ていきましょう!
アンビエント向きのドローンの制作に最適
ユーロラック規格でリリースされたフィルターはさまざまあり、あらゆるモジュールが登録されているWebサイト=Modulargrid.netによれば生産完了のものも含めて964機種もあるそうです(2020年10月現在)。シンプルな製品から多機能なものまで、多様なフィルターがリリースされています。
フィルターとは、入力音声の特定の周波数をスルー/カット/ブーストするための装置です。QPASは、入力(ステレオ)にVCAを備えているため、入力レベルによりフィルターの効果を変えられます。また、L/Rのそれぞれに2つずつ、計4つのフィルター・コアを備えています。指定した周波数を基準に、片側につき2つのフィルター・コアの周波数が互いに上下に離れるのを調整するという仕組みです。さらに、レゾナンス・ピークの値(Q)の鋭さをコントロールすることで、ステレオ音像を変化させることができます。QPASは、レゾナンスのQを上げたときの音が美しく柔らかなのが特徴的ですが、下げたときのサウンドも格別で、特にアンビエント向きのドローンの制作などには最適なフィルターだと思います。
出力はステレオでローパス、ハイパス、バンドパスのほか、QPAS特有のスマイルパスを含む4種類を備えています。スマイルパスは、一定の音量を保ちながら、スムーズなスウィープ効果が得られるものです。出力は同時に取り出せるので、後段でさまざまな利用が可能。入出力はスマイルパス出力を除き、Lのみを利用してモノラルとして使うこともできます。
外部クロックでモジュレーションが可能
続いては、パネル上の操作子を見ていきましょう。まずは中央の“FREQ”ノブで“中心となる周波数”を調整します。次に、その右下のQコントロールでレゾナンス・ピークの鋭さを決めましょう。その後にRADIATEノブで、L/Rに2つずつあるフィルター・コアの周波数を、“中心となる周波数”に対して高い側と低い側にシフトさせて、その距離を調整します。このRADIATEとQノブでレゾナンス・ピークの調整をすると、ステレオの音像をダイナミックにコントロールできます。
また、どのCV INにもアッテネーター・ノブを備えており、外部CVの値を“どれほど反映させるのか”または“反転させて影響させるのか”を調整します。メインのFREQのCV INはアッテネーター付きFREQ1のほかに、アッテネーター無しのFREQ2を装備していて、併用も可能です。
RADIATE INにはL/Rで別々のCVを入力することもできますが、LのみでCV入力をしてRに共有することもできます。さらに、L/Rでアッテネーター・ノブの設定を変えて音像の広がり度合いを調整することが可能です。また、実験的な入力端子“!!¡¡”を備えており、クロックやGate信号をオーディオ信号のモジュレーション・ソースとして入力することで、ステレオのレゾナンス・ピークに作用させることができます。Qを上げていくことで、さらに効果が強まりますよ。
このようにQPASは、我々になじみのあるフィルターの機能を生かし、新たなステレオ表現の可能性を探究できる一台です。
製品情報
【Profile】1990年代よりシンセ奏者として活動。2013年から東京モジュラーフェスティバル(TFoM)をデイブ・スキッパーとともに毎年開催。世界中のモジュラー・シンセ・メーカーや、モジュラー・シンセを演奏するアーティストを招き、国内でのモジュラー・シンセの普及に努めている
Patch The World For Peace 〜モジュラー・シンセを選ぶ理由
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