Patch The World For Peace 〜モジュラー・シンセを選ぶ理由〜第1回 MAKE NOISE Rene

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 こんにちは、HATAKENです。このたび僕のお薦めのモジュール紹介を通してモジュラー・シンセの魅力をお伝えする新連載を始めることになりました。多くの方がモジュラー・シンセに興味を持っていただけますように! これからどうぞよろしくお願いいたします。

Photo:Yusuke Kitamura

今月のモジュール:MAKE NOISE Rene

コンセプトと即興性がモジュラーの醍醐味

 モジュラー・シンセの魅力と言えば、まず“音の良さ”が挙げられますね。でも僕は、モジュールそれぞれのユニークなコンセプトと即興性に優れた機能の数々こそがモジュラーの醍醐味だと考えています。

 

 ということで最初に紹介するのは、16ステップのシーケンサーMAKE NOISE Reneです。現行モデルはRene 2ですが、今回はReneを紹介します。MAKE NOISEはユーロラック・モジュラー・シンセ・メーカーを代表する重要ブランド。BUCHLAやSERGEなど西海岸系のシンセ・テクノロジーを踏襲して発展させたモジュールをリリースしています。Reneは哲学者ルネ・デカルトに由来して名付けられており、彼が提唱したデカルト座標を世界最初に採用した音楽用シーケンサーです。

 

 そもそもステップ・シーケンサーは、クロックに従ってステップを進めたり、各ステップに値をプログラムするモジュールです。ほかのステップ・シーケンサーはDAWのタイムラインと同じように、直線的な動作になりがちでしたが、Reneは直線軸(X軸)以外にもう一つの座標軸(Y軸)を持っています。それ故、新感覚で演奏ができる点が面白いのです。X軸とY軸にクロック信号を受けて、平面上の4×4の座標を走ります。例えばパネル左上にあるゲート入力のX-CLKに16分音符のパルス波を送ると、左から右へ横に動く4ステップ・シーケンサーとして走行します。同様にY-CLKにも16分音符のクロックを入れてあげると、今度は縦で下から上へのカウントが加わります。なので、X-CLKとY-CLKの両方から同時に同じものを突っ込めばシーケンスの進行は左下から右上に斜めに向かって座標(1,1) (2,2) (3,3) (4,4) (1,1)……と進むシーケンスとなります。そこから各CLKのパルス波を異なる音符にしたり、パネル右下のタッチ・グリッドで各ステップのゲート出力のオン/オフを設定したりして、シーケンスの通り道を変化させることで16ステップを生かした複数のパターンをどんどん生み出せるのです。

 

 さらにXとYのクロック入力と各MOD入力のトリガー・ゲートに対してAND/OR/XORの論理演算処理を加えることで、ステップの進行の仕方やゲートの長さを変えられます。各ステップのゲート出力のオン/オフ設定には、オフのステップに来たとき進めるステップを探すSEEKモードか、次のオンのステップを指示されるまで同じステップにとどまるSLEEPモードを選択。ステップのミュートと組み合わせて使えば生成できるフレーズ・パターンは無限です。

 

 またReneは、演奏中にタッチ・グリッドで自由にパターンを変えたり、ピッチを変えるノブを変更したりできるので、演奏性に優れたライブ向きのシーケンサーとも言えるでしょう。

思い付かないパターンを発案してくれる

 実際にReneを使って、簡単なベース・ラインを作ってみました。アナログ・オシレーターのTIPTOP AUDIO Z3000の三角波/ノコギリ波/矩形波の音をブレンドして、ミキサーのHIKARI INSTRUMENTS Atten/Mixerに入力します。フィルターのMUTABLE INSTRUMENTS Ripplesを通したら、ReneでクオンタイズされたCVをZ3000のピッチ・コントロール入力の1V/Octにパッチ。続いて、TIPTOP AUDIO Trigger Riotの任意のトリガー出力から、ReneのXとYにクロック信号を送ります。そしてReneのXとYのゲート出力をエンベロープ・ジェネレーターとして使用するMAKE NOISE Functionへ入力して、さらに出力はRipplesのGainに入力。最後に、RipplesのVCAと書かれた端子から出力します。

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 Reneでベースを作るメリットは、頭の中のアイディアがゼロの状態で触ってみても、自分では思いつかない新たなフレーズ・パターンを発案してもらえることです。DAWのようにMIDIノートを打ち込んでパターンを再現するのではないので、予定調和を避けてさまざまなパターンを創造できます。タッチ・グリッドでAND/OR/XORの論理演算処理を加えてゲートの長さを変えたり、トリガー信号を入力しても威力を発揮します。外部モジュールの組み合わせによっても、一期一会の即興的な要素を楽しめるでしょう。

 

 モジュラー・シンセと向き合うと、制約や当たり前の手法、凝り固まった価値観から抜け出せたり、曲のインスピレーションを与えてくれます。デカルト座標や論理演算などは言葉にしてみると難しいですが、実際の操作=演奏は単純で楽しいです。シーケンサーの概念を変えたプレイアビリティにあふれる名機なので、僕はReneがずっと大好きです。

 

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HATAKEN

【Profile】1990年代よりシンセ奏者として活動。2013年から東京モジュラーフェスティバル(TFoM)をデイブ・スキッパーとともに毎年開催。世界中のモジュラー・シンセ・メーカーや、モジュラー・シンセを演奏するアーティストを招き、国内でのモジュラー・シンセの普及に努めている

 

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