今月のモジュラー・シンセ:MUTABLE INSTRUMENTS Marbles(後編) 〜第17回 Patch The World For Peace

今月のモジュラー・シンセ:MUTABLE INSTRUMENTS Marbles(後編) 〜第17回 Patch The World For Peace

 皆さんこんにちは、HATAKENです。先月よりMUTABLE INSTRUMENTS Marblesを紹介しております。Marblesは、ポストシーケンサーとしても期待できるランダム・ジェネレーターです。ランダムな信号をサンプリングして、ボタン1つでループさせて、リアルタイムにステップの長さを変更でき、そのループに変化を加えることが可能です。3つのGate/CV OUTで3つのパートを演奏させたり、tとXを別々に用いてさらに大きなアンサンブルもできるでしょう。先月は機能の概要を紹介したので、今月は“t”と“X”セクションそれぞれの3つのモードを通して、Marblesの豊かな表現力をお話ししたいと思います。

●MUTABLE INSTRUMENTS Marblesの後編はこちら:

今月のモジュール:MUTABLE INSTRUMENTS Marbles

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Gateの発生率を選ぶ“t”セクション・モード

 まずパネル左側の“t”セクションの3つのモードは、左上の黒いセクション・モード・ボタンで選択し、LEDの色で表示します。3つの出力のうち、t2の振る舞いはどのモードでも同じですが、t1とt3についてはモードごとに異なります。

 

 ランダムGateをt1とt3に振り分ける“コイン・トス・モード”(緑)では、Biasノブがt1とt3のGateの発生率をコントロールします。左でt1、右でt3のGateの数が増えます。次の“ディバイダー・マルチプライヤー・モード”(橙)ではクロックのランダムなディバイドをt1、マルチプルをt3から出力します。Biasノブを左に回したらディバイダー、右がマルチプライ出力となります。“キック・スネア・モード”(赤)では、さまざまなドラムのパターン・コンビネーションを生成して出力します。Biasノブを左に回すとt1、右でt3の出力が増加。名前が示す通り、ドラム・パターンに適した信号が出力されます。僕の所感では、t1がキック、t3がスネアに相当するかと思われます。t2はハイハットに入れると3ピース・ドラム・キットをMUTABLE INSTRUMENTS Gridというトリガー・パターン・ジェネレーターのように使用できます。クロックに対して“タメ”の効果、元に戻すために速いテンポで追い付いたりするような出力が可能。セクション・モード・ボタンを押しながらBiasノブを操作することで、Gateの長さを調整でき、セクション・モード・ボタンを押しながらJITTERを調整すると、Gate長をランダム変化させる度合いを設定できます。

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Marblesのパネル。パネルの左側が“t”、右側が“X”セクション。それぞれ3つのモードを選択して、出力する信号をコントロールできる

X1〜3のランダムCV出力も3つのモードで変化

 パネル右側はランダムCV生成に関する設定をする“X”セクションです。クロックに基づいたサンプル&ホールドによる、階段状のCVを生成します。Xセクション・モード・ボタンでは、X1〜3のCV出力の振る舞いを切り替え。それぞれ3つの出力すべてノブの通り(緑)、X2のみノブに従い、X1とX3はノブの設定と真逆を出力(橙)、X3がノブの通りで、X1が真逆、X2はノブがすべて12時の出力(赤)から選ぶことができます。それぞれが同じ条件でランダムCVを生成する緑のモードはMarblesの挙動を理解する上では分かりやすいですね。しかし、実際のライブでアンサンブルを構成しようとした場合、3つとも同じ条件のCV出力よりも、真逆の出力が混ざっている方が便利です。例えば、一方が高い音域、もう一方が低い音域、と振り分けて演奏させることで、高音とベース・パート両方を演奏させられます。

 

 また外部クロックを入力せずに、tセクションのクロックと内部同期で使用していれば、ベース・パートのt1の音数を少なめに、高音パートのt3は多めに鳴らして、JITTERノブで揺らぎを付けたりできます。また、t2はモードの影響を受けないため、クロックのようにいつも同じものを刻んでいますから、X2の出力はアルペジオ的な響き方でスケール感を強調してくれるでしょう、そのスケールにあったベースと高音パートを演奏させることができるわけです。しかもモードの切り替えで、ベースと高音パートを入れ替えたり、ノブやレンジ設定の組み合わせ次第で、バリエーション豊かな演奏ができます。

 

 今回の動画では、複数の音源、キックやパーカッションを鳴らすために、Marblesからの信号を複数のモジュールに分岐して使っています。そちらもお楽しみに!

MUTABLE INSTRUMENTS Marbles 製品情報

 

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HATAKEN

【Profile】1990年代よりシンセ奏者として活動。2013年から東京モジュラーフェスティバル(TFoM)をデイブ・スキッパーとともに毎年開催。世界中のモジュラー・シンセ・メーカーや、モジュラー・シンセを演奏するアーティストを招き、国内でのモジュラー・シンセの普及に努めている

 

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