今月のモジュラー・シンセ:MUTABLE INSTRUMENTS Beads(後編) 〜第13回 Patch The World For Peace

今月のモジュラー・シンセ:MUTABLE INSTRUMENTS Beads(後編) 〜第13回 Patch The World For Peace

 皆さんこんにちは、HATAKENです。先月はMUTABLE INSTRUMENTSのテクスチャー・シンセサイザーBeadsに搭載された、ライブ・グラニュラー処理、アッテニュランダマイザー機能、音の質感などについて話しました。今月はBeadsの具体的な魅力や使用例を紹介します。

今月のモジュール:MUTABLE INSTRUMENTS Beads

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音の移り変わりを美しくスムーズに演出できる

 Beadsは外部入力のオーディオ信号をリアルタイムにライブ・グラニュラー処理するDSPです。リフやメロディ、ルーパー、ディレイのように使うことができ、音声入力に何も接続しなければ内蔵ウェーブテーブルを使ったグラニュラー・シンセとして機能します。そして、画期的なアッテニュランダマイザー機能や、こだわりの録音品質エミュレートなどは、MUTABLE INSTRUMENTSのデザイン力の賜物です。

 

 ちなみに僕は、Beadsの前身であるCloudsの大ファンで、何台も所有しています。あちこちのラックで使う身として、Cloudsはグラニュラー・シンセというより“新感覚のエフェクター”といった認識です。最終段に入ったリバーブはツマミ一つの操作でここまで機能していれば十分! 世話要らず! 感謝です。Beadsは豊かな表現力のサンプルをベースにしたグラニュラー・エフェクトとして、ときに演奏上の一場面をこの一台のみで演出することも可能だと思います。それほどパワフルで、頼りになる一台なのです。

 

 Cloudsと使い心地は似ていますが、先述のような音質向上だけではなく、ユーザーの求める音に的確にたどり着ける、素晴らしいインターフェースに生まれ変わっています。どういじっても分かりやすく、良い音を見付けやすいので、非常に使いやすいです。あれこれ試すうちに、デザイナーの設計意図を理解できる気がしてくるのも、モジュラー・シンセの楽しみ方の一つでしょう。入力したオーディオ信号をリアルタイムでプロセッシングしながら、全く違う音の場面への移り変わりもスムーズに美しくできるのはBeadsの特徴です。ランダマイザーを生かせば、新鮮な音を生み出し続けることのできる、素晴らしいポテンシャルを持っています。どんなソースを入力するかで、同じ設定のままでも出音が変わり、使い手のセンスでさまざまな音を作れるでしょう。また、FEEDBACKノブで出音を入力ソースとブレンドすると、よりなじみが良く、アンサンブル全体に一体感や厚みを生み出す音になります。

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Beadsのパネル下部にある端子のうち、上段がCV IN×6。下段は左から、Audio IN(L/R)、FREEZE IN、SEED IN、Audio OUT(L/R)が並ぶ

クロックとピッチ・クオンタイザーで音楽的に演奏

 具体的にBeadsの使用例を、今回ビデオで使用したセットを通して紹介します。今回はBeadsのステレオ入力ソースとしてサンプラーの1010MUSIC Bitboxを用意しました。Bitboxはタッチ・パネルのサンプラーで簡単にソースを試すことができるからです。私のライブのセットにも、同じ理由でよく採用しています。

 

 今回は、ERICA SYNTHS Pico Triggerをマスター・クロックとして、BeadsのSEEDSインとBitboxのCLKインに分岐して送ります。これでサンプルが再生されるテンポとBeadsでグレインされるタイミングが同期されました。さらに内蔵アッテニュランダマイザーだと永遠にランダムな音階が続くところを、INTELLIJEL ScalesのCV出力をPITCHに入れて、任意のスケールでピッチ・クオンタイズされた変化を得られるようにします。そして、SOUNDMACHINES LS1というタッチ・パネル式CVフェーダーをキーボード代わりにいじって、Beadsのグレイン・シンセを指で演奏できるようにしました。さらにLS1は指でなぞった動きを一定の時間記録してループできるので、ランダムではない決まったフレーズをリピートさせることができます。そのときにScalesのTRIGインにPico Triggerのトリガーを送り、そのタイミングだけ音程が変わるScales内蔵のサンプル&ホールド機能を使うことで、Beadsをより楽器のように演奏させることもできます。

 

 ビデオでは、幾つかのサンプル・ループを用いてBeadsがどんな振る舞いを見せてくれるのか、その可能性の一端に触れてみたいと思います。また、インプットに何もつながないときのモード、ウェーブテーブル・グラニュラー・シンセとしての働きや音色も紹介しますので、ぜひご覧ください!

 

MUTABLE INSTRUMENTS Beads 製品情報

 

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HATAKEN

【Profile】1990年代よりシンセ奏者として活動。2013年から東京モジュラーフェスティバル(TFoM)をデイブ・スキッパーとともに毎年開催。世界中のモジュラー・シンセ・メーカーや、モジュラー・シンセを演奏するアーティストを招き、国内でのモジュラー・シンセの普及に努めている

 

 

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