こんにちは、HATAKENです。これから紹介するBEFACO VCMCはMIDIコントローラーで、CV to MIDIインターフェース。モジュラーから直でリズム・マシンやMIDIシンセを操作できます。あらゆるMIDIプラットフォームとの互換性を持ち、USBクラス・コンプライアント対応なのでコンピューターに接続すればドライバー無しですぐに認識。iOSアプリやソフト・シンセもコントロールできて、モジュラーのユニークな制御信号をMIDI環境にコンバート可能なVCMCを、早速見てみましょう。
今月のモジュール:BEFACO VCMC
今月の動画ではiOSアプリのソフト・シンセをポリフォニックで鳴らしたり、MIDIマシンをモジュラー・シーケンサーからVCMCを介してコントロールしてみたいと思います。
CVとGateからMIDIノートを生成する
VCMCはVoltage Controlled MIDI Controllerの略で、CVをMIDIにコンバート/アサインできます。全部で8ブロックがあり、各ブロックにCV/Gate入力、フェーダーとボタンを装備。2つのAUX CV入力(A/B)、OLEDモニターとエンコーダーによるCV入力、Gate(Gate入力とボタン)、フェーダーに割り当てる機能の選択と設定をします。CV入力やフェーダーの動きをOLEDモニターで確認でき、Gate入力はボタンの点滅でモニターできるので視認性が高いです。内部メモリーも備えており、MIDI機材に応じた設定を保存可能。OLEDモニターの画面は小さいですが、VCMC専用オンラインWebエディターも使えるので便利です。
では一番基本的な機能=CVをMIDIノートにコンバートする“V/Oct to Note”を通して、VCMCの働きを見てみます。モジュラー・システムでピッチを指示するCVとタイミングと長さを決めるGateの2つの信号から、1つのMIDIノート・メッセージを生成する機能です。Gate入力がされた時点で“MIDI Note ON”のメッセージが送信され、CV入力の値に従った音階となり、Gateが閉じると“MIDI Note OFF”が送信されます。“Note”機能を選べば、一つのCV入力で、一定のGate長(選択可能)のMIDIノートを生成できるモードも搭載。例えば別ブロックで“Velocity”を選択し、別のCVソースでベロシティ操作もできます。MIDIキーボードで一つの鍵盤を弾くと、音のピッチ/タイミング/長さ/強さがまとまったMIDIノートになりますが、それらを個別のCVでコントロールしたら、どのような結果を生むのか想像が膨らみませんか? NRPNなどを使い細かい指示をする場合、ビット・レートを7/14ビットから選ぶことも可能。クロック入力に対しても、ディバイドとマルチプルまで用意されていて、細かいところまで気が利いているのは好感が持てますね。
1つのCV/Gateから和音を作り出す
MIDIでは簡単にポリフォニック・ノートをプログラム/送信できますが、モジュラー・シンセの場合はポリフォニックな和音は手ごわくなります。モノフォニック・シーケンスを複数使って和音は作れますが、鍵盤で和音を押さえるようなプログラムがやりにくかったのです。VCMCには、複数の送信先を同じMIDIチャンネルに送ることで和音演奏させる機能があります(V/Oct Poly)。さらに、新機能として最近加えられたポリフォニック・モードを使うことで、CV/Gateで入力された単音からポリフォニックな和音を作り出すことができるようになりました。生成される和音のタイプ(コード・ネーム)、モード(スケール)、ルート、ボイシングまで細かに指定し、そのパラメーターをフェーダーにアサインしてマニュアル操作することも、CV入力にアサインして、モジュラーの信号でコード・チェンジすることもできます。
今回のアップデートでモジュラー界の“ポリフォニック問題”に風穴をもたらしたかもしれないVCMC。モジュラー・シンセとDAWが共存するために重要な一台です。また、VCMCは単なる信号変換だけでなく、CVレンジの指定や信号の解像度の選択、クロックのディバイドやマルチプルまで細かに設定できます。そのため、オールドMIDIマシンを聴いたこともない使い方で現代によみがえらせるなど、さまざまなアイディアへ応用が効くのではないでしょうか。モジュラー・シンセとMIDI機材たちとの距離もグッと縮めてくれる、大切な一台だと思います。VCMCのサイズは20HPですが、6HPサイズの姉妹機CV Thingもコンパクトで魅力的ですね。
BEFACO VCMC 製品情報
【Profile】1990年代よりシンセ奏者として活動。2013年から東京モジュラーフェスティバル(TFoM)をデイブ・スキッパーとともに毎年開催。世界中のモジュラー・シンセ・メーカーや、モジュラー・シンセを演奏するアーティストを招き、国内でのモジュラー・シンセの普及に努めている
Patch The World For Peace 〜モジュラー・シンセを選ぶ理由