皆さんこんにちは、HATAKENです。先月からご紹介している1010MUSIC Bitbox MK2の後編です。今回は5つのサンプル再生モードを通して、具体的な能力の高さ、パッチングや使用例を紹介していきます。
●1010MUSIC Bitbox MK2の前編はこちら:
今月のモジュール:1010MUSIC Bitbox MK2
5つのサンプル再生モードを搭載
まず、ディスプレイ上にある16のサンプル・スロットへmicroSDカードに保存されたサンプルを読み込み、自由にサンプル・キットを組みます。サンプルごとに出力先をアサインし、細かな設定や外部制御のアサインをしたものをまとめて一つの“Preset”と呼び、名前を付けて保存します。また、本体で新たに外部入力(モノ/ステレオ)をサンプリングして、保存も可能です。サンプルの振る舞いを決める再生モードは、各サンプルで自由に選ぶことができます。Sample、Clip、Slicer、Granular、New Recの5つです。
まずSampleは、ディスプレイへのタッチや外部入力(CV/Gate、MIDI)などによりワンショット/ループ再生をトリガーする基本的なモード。マルチサンプル・キーボードのようにサンプルをマッピングして使用することもできます。Clipは外部クロックに同期して、ABLETON Liveのクリップ再生のようにピッチを変えずループ再生できます。タッチするだけで、同期したループ再生ができるなら、ラップトップより便利! プリセットの切り替えも速いので、よくライブ中に切り替えて使用しています。続いて“Slicer”は、任意の場所を選択するか、音量レベルによって自動でサンプルをスライスしてくれて、そのファイルを外部クロックやトリガーに従い再生させることができます。任意のスライスをトリガーしたり、ランダムにトリガーさせたりすることも可能。
そしてBitbox MK2に加わった新機能の一つGranularは、グラニュラー・シンセのように動作させて、複雑でリッチなサウンド・テクスチャーを生成できます。グレインの再生速度(Speed)を外部制御することも可能です。
最後にNew Recは、外部入力から新しいサンプルを録音して再生するモード。4時間も記録できるので、ライブ演奏を録音することもできます。また、クロックに同期させながらサンプリングして、終了後に即ループ再生することも可能。そのため、ライブでも制作でも実験的なサンプル・ファイルを次々に作成できます。マスター・アウトをリパッチ無しでリサンプリングすることも可能なので、本体のみで限りない創造性を持っていると言えるでしょう。各サンプルのピッチはもちろん、フィルターや外部制御可能なディレイ/リバーブを備えており、少ない機材構成のシステムでも重圧のあるサウンドを創造できる点が魅力です。
ライブ演出をアシストする効果的な機能たち
Bitbox MK2は、同時サンプル再生数が十分で、音質が良く、タッチ・パネルによる機敏な操作と、各サンプルのフィルター調整、エフェクト、ミュート画面もあり、とにかく機能と操作性に優れています。モジュラー・シンセの並ぶ中、どうしても必要なデジタル・オーディオ・ソースを一手に引き受ける、頼もしい一台です。クロックと同期させれば、Clipモードに設定したサンプルを早めにタッチして次の小節の頭で再生スタートするようにしておき、その間に今再生中のサンプルのリバーブを深めて残響音が明けたときに新しいサンプルが姿を表すといった演出ができます。また、ルートを合わせたワンコードのシンセ・パッドのドローンを再生して、途中から外部CVで転調させたり、メロディ演奏させたりすることも可能です。
Slicerモードでスライスしたサンプルをトリガーでランダムに再生して、グリッチな音を使うことも多いです。例えばジャズ・ドラムをオート・スライスさせたものをピッチを変えてランダムに再生したり、ライブ・リサンプルしたリズム・ループをスライスして外部トリガーで変則的なドラム・パターンにリミックスもできます。僕はそれらの音を以前紹介したMUTABLE INSTRUMENTS BeadsやCloudsなどを通して使っているケースが多いです。
動画ではBitbox MK2の5つのサンプル再生モードを通して利便性を紹介しつつ、CVサンプリングやMIDIによる外部制御を試してみたいと思います。
1010MUSIC Bitbox MK2 製品情報
【Profile】1990年代よりシンセ奏者として活動。2013年から東京モジュラーフェスティバル(TFoM)をデイブ・スキッパーとともに毎年開催。世界中のモジュラー・シンセ・メーカーや、モジュラー・シンセを演奏するアーティストを招き、国内でのモジュラー・シンセの普及に努めている
Patch The World For Peace 〜モジュラー・シンセを選ぶ理由