Digital Performerの自由度が高いMIDIの操作でメロディとリズムを打ち込む!|解説:高藤大樹

Digital Performerの自由度が高いMIDIの操作でメロディとリズムを打ち込む!|解説:高藤大樹

 こんにちは、高藤大樹です。Digital Performer(以下DP)バージョン10から11へ完全に移行し、大きなトラブルも無く動作も軽くなり、音も格段に良くなった印象です!明らかに感じる進化は日々の音楽制作でとても助かっています。昨今ソフト・シンセを使う方も多い中、DPは多くのソフト・シンセを同時に立ち上げられるDAWの代名詞。気軽に音源やプラグインを安定して立ち上げられるのは、現代の制作スタイルやアレンジ作業上とても助かりますね。

MIDIノートの譜面と数値を一画面に表示してエディット

 前回はDPの便利な機能や自分なりの使い方の一部を紹介しましたが、今回はあらためてDPの長年の推しの一つ、MIDIを中心に、日ごろ行う実際の作編曲手順に添いつつお伝えしていきます。私はほぼすべてのパートにてリアルタイムで“鍵盤を弾いて”MIDI入力し、必要に応じてエディットする手順を基本としています。今回は音程のあるメロディ・パートの打ち込みと、リズムの打ち込み方を中心に解説していきます。

 

 まずは音楽の基礎となるメロディ。私はアレンジや作曲の際、必ず最初にMIDIでメロディを打ち込みます。仮歌があるアレンジの場合は譜面を見て弾くと速いのですが、実際には歌を聴いて耳コピし、それを弾いて打ち込みます。歌の節やタイミングなどを身体に入れた方が、曲の理解度が深まるからです。作曲では“難しくて弾きにくい=歌いづらいメロディ”という事実もあり、その辺りを意識して弾いたり、クイックスクライブエディターで五線譜を見ながら試行錯誤をします。

 

 メロディの打ち込みに使うのは、DP純正ソフト・シンセのPolySynth。パラメーターをサクッと触れるので、曲調に合わせたり、アレンジを進める中で“仮メロ”がしっくりこない場合にもすぐ音色変更できます。ハモリやラップなど複数の仮メロが同時に鳴る場合も、ニュアンスの違う音を手軽に作成可能。各パートの違いを演出し分離感を出すこともできます。またキャラ立ちのある音も作成できるので、そのままシンセ・リードとしてメロディとユニゾンで使うなど、曲のつかみとしても使用できるオススメのシンセです。

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Digital Performer付属のソフト・シンセ、PolySynth。ROLAND Juno-106をほうふつさせる外観で、発信の種類やレンジ、ADSR、ディチューンなどを手軽に変更でき、かつ負荷も軽い点が筆者のお気に入り

 メロディができた後は、ピアノの音色で全体のイメージを組んでいくことが多いです。弾いたものをそのままピアノ・パートとして本チャンまで使う場合と、とりあえず“アレンジの土台”として仮で使う場合の、大きく分けて2パターンがあります。なぜピアノかと言うと、ルートやコード感、グルーブ、レンジなどを一度に表現できる楽器だからです。ギター中心の曲でもピアノでイメージを作成。アルペジオやストロークも表せますしね。メロディに対して考えつつ弾いて打ち込み、最終的に楽器をどのように入れていくかなどを考えたり、メロディから得られるインスピレーションを大事に進めていきます。

 

 ちなみに私は多くの場合、インプットクオンタイズを16分音符に設定して進めます。都度クオンタイズをかけずに済むので余計な操作が減り、必要な作業のみに没頭できるところが大きいためです。もちろんバラードのピアノや歌に寄り添うパートなどは、まずクオンタイズをかけずに弾いてからエディットすることもあります。その場合はクイックスクライブエディターの画面から指定個所を選んでクオンタイズしたり、ベロシティなどをエディットしていく手法が多いです。並行してイベントリストを表示しておけば、リリースやベロシティなども数値で可視化でき、気になる点を素早くエディットしていけるので、この2つの軸を同時に見て進めていきます。

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インプットクオンタイズ設定画面のグリッド設定で、楽曲中の最も細かい音符に設定しておくと自動的に自然なクオンタイズがかかる。画面は16分音符を選択。スイングの値を変えることで、リズムのハネ具合を設定できる

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MIDIノートを楽譜化するクイックスクライブエディター画面。イベントリストを同時に表示することで、選択した五線譜上の音符とリストの数字がリンク(赤枠)。ベロシティなどの情報が数値として可視化されるため、エディットを素早く行うことができる

 また、よく行う方法として、インプットクオンタイズをかけているトラックとかけていないトラックを分けることもあります。クオンタイズを基調にしつつ、歌にしっかり付いていきたいポイント、付点8分音符や3連符、グリッサンドといった装飾は、リアルな人間のタイミングの方がしっくりきますし、ユニゾンなど楽曲の肝となることも多いです。ベロシティを一括で上げたりなど、後からエディットをしやすくするという目的もあります。

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ピアノのトラックで、クオンタイズをかけたトラック(赤)とかけていないトラック(紫)を分けた状態。トラック自体を分けることで後のエディットが楽になる。また視覚的にも管理しやすい

クオンタイズでグルーブを細かく作り込む

 続いてリズムの打ち込み。基本的には同じくリアルタイム入力です。ケース・バイ・ケースですが、ドラマーがたたくように手ドラム(得意です!)で同時に入れる場合と、キックとスネア、シンバル類、フィルなどで分けて鍵盤をたたく場合があります。リズムはベロシティの強弱がとても大切なので、曲を聴きながらたたくのは大事なこと。基本はインプットクオンタイズを16分音符に設定し、それより細かい音符やスネアのフラムなどのゴースト・ノートは、インプットクオンタイズを外して入力したり、ステップレコードを使い仕上げていきます。

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MIDIノートを1つずつ入力するステップレコード機能。中央にある9つの音符はテンキーの1〜9とリンクしているなど、各ボタンがコンピューターのキーボードにコマンドとしてアサインされているため、ステップ入力の際に音符や休符の選択といった操作を容易に行うことが可能となる

 そしてDPのスプリットノート機能。特定のノートを柔軟に抽出でき、カットやほかのトラックへのコピーも可能です。スプリットノートとトランスポーズの合わせ技として、例えば生ドラムで3タム想定のものを、アレンジ途中で2タムに変更する場合、一番高いタムのピッチを低いタムへトランスポーズできます。ほかにも、途中で“やっぱりリム・ショットはやめよう”と思った際はスネアのリム・ショットのノートを選び、ノーマルのショットへトランスポーズすればOK。このような作業が発生しても、あらためて一から入力し直さなくても簡単に行えます。

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ドラム・トラックから、ハイ・タムだけをほかのノートにトランスポーズする例。ドラム・トラックを選び、スプリットノート画面で、“スプリットしたノートを”の“新規トラックへ”を選択し“HT”と名付ける(青枠)→“ピッチを指定”からD2を選択(赤枠)。新たに出来上がったHTというトラックを選び、リージョントランスポーズ画面でD2から移行したいMIDIノートのB1を入力(黄枠)すれば移行が完了となる

 別音源でレイヤーしたい場合なども、スプリットノートで別トラックへコピーしておくと必要な際は簡単に同タイミングで鳴らすことも可能です。とりあえずすべてコピペしておき、トラック画面で必要の無いところだけミュートするなどの使い方をよくしています。この機能はドラムの打ち込みで特に便利ですが、アレンジが仕上がって来た際にピアノの最低音だけオクターブ上げたり、ストリングスのボイシングを変更したりといった場面でも非常に有効ですね。

 

 リズムの場合は“ノリ=グルーブ=気持ちの良い音の揺れ”が重要。音色の持つグルーブもあるのですが、MIDIへ若干のスイングを加えたり、昨今のダンス・ミュージックにおけるスネアのリリース感などはクオンタイズで細かく作り込めます。スイングをかける際に、必要に応じてランダマイズという音をバラけさせる機能も同時に若干かけて揺らしたりもします。

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クオンタイズ設定画面。オプションのランダマイズを設定することで、音をグリッドからバラけさせたり、揺らしたりといった効果を与える

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筆者がクオンタイズでよく併用しているグルーヴクオンタイズ機能も効果的。往年のパッド・サンプラー独特の揺れ具合などを取り入れることができ、市販のループ素材のようなグルーブを簡単に作り込んでいくことが可能

 いかがだったでしょうか。音楽を作る上でMIDIの操作はとても重要なはず。DPはMIDI操作の自由度があり、再構築の際もどんどんやりたいことを短時間で試せる機能が満載です。ぜひいろいろと試してみてください!

 

高藤大樹

【Profile】プロデューサー/作編曲家/キーボード・プレイヤー。“イマ”の時代を意識したジャンルにとらわれない音楽を作り、他セクションとも柔軟に連携してさまざまなアーティストやクライアントとともにリスナーの琴線に触れる音を追求している。また、プレイング・マネージャーとしてクリエイター・マネジメントを行うSound Bahnの代表も務めている。

【Recent Work】

『NO BORDER』
田村直美
(ライフタイム/MOJOST)

 

MOTU Digital Performer

オープン・プライス

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LINE UP
Digital Performer 11(通常版):60,500円前後
*オープン・プライス(記載は市場予想価格)

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS X 10.13以降
▪Windows:Windows 10(16ビット)
▪共通:INTEL Core I3または同等のマルチプロセッサー(AMD、Apple Siliconを含むマルチコア・プロセッサーを推奨)、1,024×768のディスプレイ解像度(1,280×1,024以上を推奨)、4GB以上のRAM(8GB以上を推奨)

製品情報