録音後のテイクにノイズが入っていた際の修正方法 〜特集『ボーカル宅録ガイド』

ボーカルを自宅で録ってみたいあなたのために、神聖かまってちゃんのサウンド・プロデューサー/エンジニアの萩谷まきお氏が一肌脱ぐ! 今回は、しーな(東京初期衝動)の自宅を実際に訪問してより良い音質で録るために実験してみました。ボーカルを自宅で録ってみたものの“これで良いのか?”と不安に思う方は、より良い音質を追求するためのテクニックを音例とともに学びましょう。

Q20. 気に入っているテイクにノイズが! 修正の方法はある?

 A. 場合によって手段はあります。 

 ボーカルを録った後にオケが変わる際には、録った素材にオケの音やクリック音が漏れ入っていると問題です。しかしオケに大幅な変更が無い場合は、そこまで気にする必要はありません。ほかにも、マイク・スタンドに当たってしまったような大きなノイズは消すのが大変ですし、曲調が静かだった場合はミックスの仕方ではどうにもできないノイズもあります。でも僕らミックス・エンジニアは渡された素材にノイズが乗っていたら、できる限りノイズを消したりしながらミックスをするほかありません。

 

 僕らが使うツールの中に、オーディオ修復ソフトのIZOTOPE RXがあります。これで僕もハウリングなどを除去してミックスをした経験があり、とても便利なツールです。しかし、RXに頼り過ぎると、意に反する音質変化が起こってしまうこともあります。歌だとハリのある良いテイクだったのに、声のおいしい成分がノイズとともに除去されてしまうといった恐れがあるのです。そのため、やはりできるだけ録音環境=部屋を整えて、ノイズを入れないようにするということが一番大事です。自分でノイズに気付いているならば改善して録り直した方がいいとは思うのですが、もしどうしてもお気に入りのテイクにノイズが入ってしまったら、ミックス前にエンジニアに相談してみることをお勧めします。

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萩谷氏から最後に……

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 自分も宅録をする中で、技術の好奇心よりも自分の理想を求めて面白がることが一番大事なプロセスだと常々思います。宅録の良さは、テイクに及ぼす独特の影響にあるからです。失敗と思えることが、表現的成功になることがあります。例えば、自分が歌いやすい環境を追求した結果オケになじまない響きのボーカルが生まれたりしますが、それが音楽家特有の表現につながることがあるのです。神聖かまってちゃんなど打ち込みを取り入れた国内のバンドや最近のUSインディーズの音楽には、そういう面白さが隠し味になっていると思います。

 

 何を魅力と思うかはあなた次第なので、おっかなびっくりやるのではなく、まずは試すことが大事です。自分で好きな音を探しつつ実験をしてみましょう。

 

【特集】ボーカル宅録ガイド〜20のQ&Aで悩みを解決!

Q1. 宅録ボーカルで必要な機材は?
Q2. コンデンサー・マイクとダイナミック・マイクの違い
Q3. 単一指向性、双指向性、全指向性……マイクの指向性とは?
Q4. スマホでボーカル録音をする方法
Q5. 音楽ジャンルに合うボーカルとマイクの最適な組み合わせ
Q6. マイクの音質と自分の声のマッチングを判断する方法(会員限定)
Q7. ボーカル以外にアコギ録音も視野に入れてマイクを選ぶ方法
Q8. 部屋鳴りを収音しないようにマイクを立てる方法【試聴有り】(会員限定)
Q9. 反射音や共振音を防ぐための対策は?【試聴有り】(会員限定)
Q10. マイクとボーカリストの距離の正解とは?【試聴有り】
Q11. マイクの高さはどこがベスト?
Q12. DTMやDAWの録音時にレベル設定で気を付けることは?
Q13. 録音前にやるべきノイズ対策は?(会員限定)
Q14. ポップ・ノイズを防ぐ方法は?(会員限定)
Q15. 自分の声がモニターしづらいときの改善方法(会員限定)
Q16. クリックの音漏れを録音しないようにする方法
Q17. モニターとのレイテンシー(遅延)の対策方法(会員限定)
Q18. エフェクトをかけるタイミングは録音の前/後?
Q19. モニターの自分の声がしっくり来ないのですが……(会員限定)
Q20. 録音後のテイクにノイズが入っていた際の修正方法(会員限定)