マイクの音質と自分の声のマッチングを判断する方法〜特集『ボーカル宅録ガイド』

ボーカルを自宅で録ってみたいあなたのために、神聖かまってちゃんのサウンド・プロデューサー／エンジニアの萩谷まきお氏が一肌脱ぐ！　今回は、しーな（東京初期衝動）の自宅を実際に訪問してより良い音質で録るために実験してみました。ボーカルを自宅で録ってみたものの“これで良いのか？”と不安に思う方は、より良い音質を追求するためのテクニックを音例とともに学びましょう。

Q6. マイクの音質と自分の声が合っているかを判断する方法は？

A. 自分の声に倍音が多いかどうかを認識しましょう。

　声質を自分で分析するのは難しいので、倍音成分を多く発生させる歌い方をしているかを認識するといいです。口先で歌うよりも、口内や頭蓋骨、体内で振動させるような歌い方は倍音が多く、また丸い声よりハスキーな声も倍音が豊かと言えます。一般的にハスキーな声は、倍音まで忠実に収めるハイファイなマイクよりも高域がマイルドなマイクの方が心地良い音を録れますし、逆に倍音が伸びない人は高域の伸びが良いハイファイなマイクが合います。ただハスキーな声でも、口内であまり響かせずに歌うと倍音は少なくなるので、声質よりも自分の歌い方で発生する倍音に着目してみましょう。大きな声は多くの空気を振動させるため倍音が多く発生しますが、オンマイク（マイクを近付けた状態）の場合は収める空気の音が少ないため“音を伸ばす”“顔の中で鳴らすような歌い方”で発生する倍音の方が収められやすいです。ちなみに、声量はあるのに高域が抜けてこない方は、鼻の通りを良くするだけで倍音が増えますよ。

　また、コンデンサー・マイクだと過大入力されたときに音が割れて倍音が発生しますが、それがその人の声の倍音と噛み合って奇麗に伸びると、相性が良いと感じます。声とマイクが噛み合ったときに発生する特有の倍音を収められるマイクならば、自分の歌が上手く聴こえてくるはずです。

声の倍音って何？

　倍音とは基音に対して整数倍、上の音が鳴って連なっていくこと。手っ取り早く倍音を感じる方法は、生ピアノでC（ド）を弾いて耳を澄ますことです。実際に弾いた鍵盤の音高よりもオクターブ上のCが聴こえてきませんか？　西洋音階でなくても倍音というのは発生しており、よく響く空間で笑ったりしゃべったりするだけで無数の倍音のハーモニーが感じられます。合唱や合奏をする方ならば、複数の同じ音程が合わさったときに、より大きな倍音を体感できると思うので、その機会がある方はぜひ試してみてください。