ブリング・ミー・ザ・ホライズン「オベイ」の攻撃的アシッド・シンセを作る!〜洋楽ヒット曲に学ぶシンセの音作り

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Kポップからヒップホップ、R&B、ロック、EDMまで幅広いヒット曲のシンセを例に挙げ、ソフト・シンセを用いた音作りをサウンド・デザイナーのBlacklolitaが解説。続いては、筆者が最も好きなロック・バンドでもあるブリング・ミー・ザ・ホライズン。最近はシンセを取り入れた曲も多く、目が離せません。今回は「オベイ」(『ポスト・ヒューマン:サバイバル・ホラー』収録)の攻撃的なアシッド・シンセを、Harmorで作っていきたいと思います!

 使用シンセ  IMAGE-LINE Harmor

 

 

Step 1:オシレーター&ユニゾン
Unisonのpitchは程良い値に設定

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 まずはオシレーター部分であるTimbreセクションですが、ここはデフォルトのノコギリ波と矩形波のままでOK。従って、最初に手を付けるのは画面中央にあるUnisonセクションです。

 ここではorderを9にし、PanとPitchはフェーダーの中央付近に、Phaseは上から1/4の位置辺りにセットします。Pitchを上げ過ぎるとスーパー・ソウのようなサウンドになるので気を付けましょう

 

Step 2:倍音の増幅
Harmonizerでサウンドに輝きを付与

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 次はHarmonizer。既存のハーモニクスを増幅することができるセクションです。サウンドに輝きを与えたいときに重宝しています。AMTは時計の8時くらいの方向に、shiftは“1+1”、gapは“5×1”に設定しましょう。

 

Step 3:フィルター
アシッド・サウンドの肝はレゾナンスにあり

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 画面右上にあるフィルター・セクションでは、上段がフィルター1、下段がフィルター2のパラメーターとなっています。フィルター1におけるカットオフ・タイプは、メニューよりClassic band pass(赤枠)を、フィルター2ではClassic high pass(黄枠)を、またレゾナンス・タイプは両者共にDouble cone(青枠)を選択しましょう。

 まずフィルター1のENVは時計の1時、kb trackは6時、widthは11時、FREQは1時、フィルター2のFREQは7時の位置にセッティング。続いてフィルター1のRESは時計の5時、widthは6時、ofsは12時、フィルター2のRESは9時の位置に合わせます。そのほかのパラメーターは基本的にデフォルトのままでOK。このセクションでは、音に強い癖を付けるレゾナンスの設定がポイントです。アシッド・サウンドの肝となるサウンド・キャラクターを作ることができます。

 

Step 4:エンベロープ1&2
音量とカットオフ・フィルターを制御

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 今度は画面右下にあるセクションを見てみましょう。右上にてENVがオンになっていることを確認したら、左上にあるメニューからFilter1 Frequencyを、その右隣ではEnvelopeを選びます。ここではフィルターのカットオフ周波数をエンベロープで制御するのですが、通常のADSRエンベロープとは違って“負の値の領域”も設定できるのが特徴。マウスでカーブを描き込む前に、右下の磁石マークをオンにして、左端のTEMPO(赤枠)にチェックを入れておきましょう❶。こうすることでグリッドの縦軸がテンポに同期するため、カーブ・ポイントをグリッドぴったりに描き込めます。

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 次は、ボリューム・エンベロープを描きます。左上にあるメニューからVolume、その右隣のメニューからはEnvelopeを選びましょう。画像のようにアタックは0ms、サステインは若干下げ気味にして、リリースは2拍分設定すると自然で良い減衰具合になります❷

 

Step 5:Global EQ
EQで中域をピンポイントにブースト

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 続いて左上にあるメニューからGlobal EQを選択すると、画面の横軸は周波数帯域、縦軸は音量になります。画面内にマウスでカーブを描き込むのですが、ローエンドを削りつつも中域では特定の帯域をブーストしてみました。右下にある鉛筆マークをオンすれば、絵を描く感覚でなめらかに調整することができます。

 

Step 6:エフェクト
ディストーションでがっつりひずませる

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 最後はエフェクト。同セクションの右上からFXをオンにすると、エフェクト画面が登場します。Distortionのメニューからは11種類のひずみを選べますが、ここではCubeをチョイス。amtとwetとfilterを上げてがっつりひずませます。Chorusではorderは9、depthはほぼ0にしてmixのみ少し上げます。音の芯を保ったまま空間の響きを付加することで、音自体を強調することができるのです。Reverbでは、オン(赤枠)にしたらほかはデフォルトのままでOK。CompressionではメニューからWarmingを選択するのみです。これだけでコンプがかった派手なサウンドとなり、音量も稼げます。以上で完成です!

 

 

beatcloud.jp

 

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Blacklolita

【Profile】サウンド・デザイナー/音楽クリエイター。2012年に音楽活動を開始し、ダブステップを軸にさまざまなダンス・ミュージックやゲーム音楽を制作する。そのほかシンセに関する講座や記事の執筆、サンプル・パックのデベロッパーKYMOGRAPHの運営も手掛けている。Twitter(@_Blacklolita_)も日々更新中!


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gumroad.com

 

【特集】洋楽ヒット曲に学ぶシンセの音作り

 

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