ポスト・マローン&スウェイ・リー「サンフラワー」の肉厚シンセ・ブラスを作る!〜洋楽ヒット曲に学ぶシンセの音作り

f:id:rittor_snrec:20210401211726j:plain

Kポップからヒップホップ、R&B、ロック、EDMまで幅広いヒット曲のシンセを例に挙げ、ソフト・シンセを用いた音作りをサウンド・デザイナーのBlacklolitaが解説。今回は、映画『スパイダーマン:スパイダーバース』の主題歌でもおなじみ、ポスト・マローンとスウェイ・リーの楽曲「サンフラワー(スパイダーマン:スパイダーバース)」(『ハリウッズ・ブリーディング』収録)のイントロやAメロで鳴る“肉厚シンセ・ブラス”に、Vitalで挑みたいと思います!

 使用シンセ  MATT TYTEL Vital

 

 

Step 1:オシレーター&ユニゾン
UNISONでより肉厚なサウンドにする

f:id:rittor_snrec:20210401212833j:plain

 オシレーター1にはウェーブテーブル・プリセットのBasic Shapesをセットし、UNISONではメニューからPHASE DISPを選択(赤枠)。PHASE DISPはオールパス・フィルターをかけたような独特なサウンドを付加し、ブラス特有の厚みを再現することができます。値は、すぐ上にあるノブで44.50%にしておきましょう。オシレーター2はデフォルトのInit(ノコギリ波系)のままにします。両方のオシレーターにてUNISONのボイス数を16にすることで、より肉厚なサウンドにすることが可能です。

 

Step 2:ボリューム・エンベロープ
ボリューム・エンベロープはナチュラルな減衰に

f:id:rittor_snrec:20210401213143j:plain

 画面右側にあるENV1ではディケイを0.782secs、サステインを0.570、リリースを1.500secsに設定し、ナチュラルな音の減衰を表現。ほかのパラメーターはすべて0.000secsでOKです。ちなみにこのENV1は、デフォルトですべてのオシレーター(OSC1〜3)のLEVELにアサインされているため、ここではあえて何かをする必要はありません。

 

Step 3:フィルター・エンベロープ
エンベロープは使い分けるのがポイント

f:id:rittor_snrec:20210401213237j:plain

f:id:rittor_snrec:20210401213255j:plain

 ENV2は、フィルターの開き具合を調整するためのエンベロープ。音量変化とフィルターの開き具合を同じエンベロープで行うと“かっちり”し過ぎる印象になるため、ここは使い分けるのがポイントです。

 ENV2のアタックを0.006secs、ディケイを1.098secs、サステインを0.117、リリースを0.481secsに設定したら、ENV2をFILTER2のCutoffスライダー(緑枠)にアサインしましょう。そしてOSC1とOSC2をオンにし、オシレーター1と2からの信号をルーティング。Resonanceスライダー(赤枠)を0.000%にしたら、フィルターの設定は完了です。

 

Step 4:エフェクト
空間系エフェクトは低域にかけない

f:id:rittor_snrec:20210401213549j:plain

 画面最上段にある4つのタブからEFFECTSをクリックして、エフェクト画面に切り替えましょう。上からコーラス、リバーブ、EQ、ディストーションの順番でインサートします。基本的には画像を参考にパラメーター値を設定すればOKですが、幾つかポイントがあるので解説します。

 CHORUSのCUTOFFでは、コーラスを適用する周波数帯域を設定できるのですが、次段のREVERBも含め、低域にエフェクトがかからないようにすることで音がにごらず空間の広がりを奇麗に演出することができます。MIXも25〜40%とかけ過ぎないようにするとよいでしょう。

 EQではローカットしつつも中低域と高域をブースト。こうすることで空間系エフェクトが持ち上がり、後段にあるDISTORTIONの下ごしらえになります。このEQ処理をしておかないと、“のっぺり”としたサウンドになりやすいため重要です

 最後のDISTORTIONでは、TYPEでSine Foldをメニューから選択。Soft ClipやHard Clipなどと比べてピーキーなつぶれ方になりますが、程良くかけてあげれば“きらびやかさと存在感を兼ね備えたサウンド”に仕上げられるでしょう。

 コツは、画面の端から端までにサイン波の周期がぴったり収まるようにDRIVEを回すこと!(緑枠)。ここでは5.400dBにしていますが、それ以上の値になってしまうとノイジーさが目立つサウンドになりやすいので注意しましょう。

 

 

vital.audio

 

f:id:rittor_snrec:20210324205824j:plain

Blacklolita

【Profile】サウンド・デザイナー/音楽クリエイター。2012年に音楽活動を開始し、ダブステップを軸にさまざまなダンス・ミュージックやゲーム音楽を制作する。そのほかシンセに関する講座や記事の執筆、サンプル・パックのデベロッパーKYMOGRAPHの運営も手掛けている。Twitter(@_Blacklolita_)も日々更新中!


【Recent Work】

gumroad.com

 

【特集】洋楽ヒット曲に学ぶシンセの音作り

 

関連記事

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp