暴れることに特化した音楽=スピードコアを制作している特殊音楽家のm1dy(ミデイ)と申します。一度購入すれば生涯無料でアップデートできるFL Studio。無料が故に便利な機能が追加されても、つい忘れてしまいがちです。筆者もアップデートのたびにチェックしているのですが、便利だと思ったきり使わずじまいの機能がたくさんあります。そこで今回は、バージョン20以降で追加された機能をピックアップ。執筆時の最新版となる20.8まで追っていきます。
アレンジメント機能で
用途に応じたプレイリストを生成可能
FL Studioがバージョン12から20へアップデートされたのは約2年半前。Mac版のリリースをはじめ変拍子への対応や、パターン・クリップの素早いオーディオ変換など、大幅に進化を遂げました。中でも複数のプレイリストを切り替えられるアレンジメント機能は、ミックスで非常に便利です。本来は1つのプロジェクト内で別のアレンジを試すための機能ですが、筆者はArrangement 1で楽曲を構築、Arrangement 2でパラデータを並べてミックス、という使い方をしています。
バージョン20.1ではチャンネル・インストゥルメントとプレイリスト・トラック、ミキサー・トラックの3つをグループ化するトラック・モード機能の採用により、さらに視認性の良いワークフローを実現。例えばプレイリスト・トラックの色や名前を変更すると、チャンネル・インストゥルメントやミキサー・トラックも同じように変化するので、チャンネルがどこに配置されていてどのミキサー・トラックにつながっているか、一目りょう然なのです。設定方法はトラック・ヘッダーの右クリック・メニューからTrack modeのInstrumentおよびAudioからグループを選ぶだけ。トラック・ヘッダーにオーディオ・ファイルやプラグインをドラッグ&ドロップしてもグループ化可能です。筆者はこの便利な機能の存在をすっかり忘れていたので、今後使っていこうと思います。
モダンな音色を多く用意する
プリセット・ベースのシンセFlex
プリセット・ベースのソフト・シンセFlexが登場したのは、バージョン20.5。Flexは筆者もよく使っていますが、同じくプリセット・ベースのREFX Nexus 2に近い印象です。細かいエディットができない代わりに、少し調節するだけで使えるモダンな音色が数多く用意されています。また、同バージョンからブラウザー上でオーディオをプレビューする際、Alt(Macはoption)を押しながらクリックすることで最後まで再生できるようになりました。筆者はこれについても完全に忘れており、毎回プレイリストにオーディオ・クリップを張り付けて確認していた自分を呪いたい次第です。
続いてバージョン20.6では、ディストーション&アンプ・シミュレーターのDistructorが登場。ひずませるだけでなくフィルターやコーラスをかけることもできる優れたプラグインです。筆者は攻撃的なシンセの音が欲しいときに使っています。
タイム・マニピュレーション・エディター・プラグイン、NewTimeも実装されています。フレーズ・サンプルの尺を変えずに譜割りを変更できたりと、今まではサンプルを切り刻まないとできなかった加工が可能になって、サンプル・ベースで楽曲を構築する際の自由度が格段に向上しました。
ほかにはChannel Rackのリズム自動生成機能、Advanced Fill Toolも加わりました。ユークリッド・アルゴリズムを応用したリズムも生成できるとのことですが、パンク・ロック出身の筆者にはよく理解できないので“ランダムに良い感じのリズム・パターンを提案してくれるツール”という解釈でたまに使っています。
ノートの色でパラメーターを制御する
VFX Envelope
バージョン20.7ではVJなどに使われていた、動画のレンダリング機能を持つビジュアライゼーション・エフェクト・プラグインZGameEditor Visualizerが強化されました。これがあればFL内でMVを作ることも可能です。
そしてトピックは、筆者が今になって存在を知って使い倒しているVFX Envelope。VFX Envelopeはノートの色ごとに、シンセのパラメーターをエンベロープやLFOで制御できるプラグインです。例えば緑色のノートではダッキング効果、桃色のノートではサステインでピッチ・ダウン、青のノートではフィルターをリズミカルにかけたり……といったことが設定次第で行えます。FlexやHarmor、SytrusといったFL Studioのソフト・シンセでしか使えないのは少し残念ですが、それをカバーできるくらい面白いプラグインです。
それでは実際にVFX Envelopeを使ってみましょう。VFX Envelopeは、インストゥルメントとエフェクトを結線できるプラグイン、Patcherで使用します。まずはChannel RackにPatcherを起動して、画面上を右クリックしてAdd pluginからVFX Envelopeと使いたいシンセを立ち上げて結線します。あとはVFX Envelope上部で色や効果を設定すれば、ノートの色を変えて効果をアサインできます。
試しに単純なLFOを、シンセのカットオフにかけてみましょう。VFX EnvelopeのMODEをLFOにしてからMod Xタブを開き、左下のTEMPOにチェックを入れます。緑色のエンベロープでLFOがかかる範囲を決め、左下に4つ並んだノブでLFOの波形やスピードを設定しましょう。その後、左端のEnable envelopeにチェックを入れれば完了です。もし複雑な効果を出したい場合、MODEをEnvelopeにして左下に設置された▼(Option)のToolsからアクセスできるCreate sequence機能がお勧め。Randomizeボタンでさまざまなパターンを生成し、それを元に作るのが手っ取り早いでしょう。
そして、先日バージョン20.8が公開されました。新たに登場したのは、周波数帯域をマルチバンドで分割して、各バンドを独立したオーディオ出力としてルーティングできるプラグインのFrequency Splitter。前回解説した上モノの低域のみをカットするテクニックもこれを使うとさらに簡単になりました。IMAGE-LINEの公式動画でも紹介されているので、関心を持たれた方はこちらもチェックしてみてください。筆者がこのコーナーを担当するのは今回で最後です。またどこかで。
m1dy
【Profile】1998年より活動する特殊音楽家。国内外でのライブ活動、多数のコンピレーションへの参加を経て、2003年に1stアルバム『SPEEDCORE DANDY XXX』をリリース。過激な速度と破壊的な音色で築くポップな音楽が、国内のみならず欧米でも好評を博す。2010年には北米最大の日本文化コンベンションAnime Expoの一環として、LAのCLUB NOKIAに出演。KONAMIの音楽ゲーム『beatmania IIDX』への楽曲提供も行う。
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