BLACKPINK「Kill This Love」のオールラウンダーなシンセ・ブラスを作る! 〜洋楽ヒット曲に学ぶシンセの音作り

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Kポップからヒップホップ、R&B、ロック、EDMまで幅広いヒット曲のシンセを例に挙げ、ソフト・シンセを用いた音作りをサウンド・デザイナーのBlacklolitaが解説します。まずは4人組ガールズ・グループBLACKPINKのヒット曲、「Kill This Love」(『KILL THIS LOVE』収録)に登場するシンセ・ブラスをXFER RECORDS Serumで再現。レイヤーしても良し、メロディ・ラインに合わせて鳴らしても良しの“オールラウンダー”な音を作りましょう。

 使用シンセ  XFER RECORDS Serum

 

KILL THIS LOVE -JP Ver.-

KILL THIS LOVE -JP Ver.-

  • BLACKPINK
  • K-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

Step 1:エンベロープ
アタック・タイムは多少余裕のある設定に

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 単音で鳴らす音色の設定において一番重要なのがエンベロープ。そのため、まずはここから始めます。ENV1にて各パラメーターを画像のように設定。アタックを最短の0msにしてしまうと、デジタル・コンプでつぶしたような“プッ”というクリップ・ノイズが乗ってしまうため、多少余裕を与えてあげるような数値設定(10~20ms)にするのがコツです!

 

Step 2:エンベロープ
LFOをエンベロープ・モードで使用

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 LFOセクションではLFO2を選択し、ENV、BPM、ANCHにチェックを入れましょう。次にマウスを使って画面内の赤丸部分にLFOポイントを設定します。この際、マイナスからゼロの位置まで短時間で上がるカーブを描くのがポイントです

 

Step 3:オシレーター&ユニゾン
2つのオシレーター波形を意識的にずらす

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 オシレーターAには金属的でザラついた音色を、オシレーターBにはきらめきのあるノコギリ波系の音色をアサインします。OSC AはICanHasKick、OSC BにはBasic_McBを選択し、両者ともUNISONは16、DETUNEは11時の位置にセット。お好みで、LEVELを使って両者の音量バランスを変えてもよいでしょう。

 OSC BのOCTは+1にして、OSC Aの波形と明確に区別。また、両者のCRS(赤枠)にはLFO2をアサインし、金管楽器を吹いたときに起こるピッチの揺れとうなりを演出します。最後にOSC AのDETUNEには、ステップ1で作成したENV1をアサイン。こうすることでオシレーターAとBがずれるため、音に有機的なニュアンスを出すことが可能なのです。

 

Step 4:フィルター
カットオフやドライブで動きを付ける

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 フィルター・セクションではプリセットからMG Low 6を選択し、A/B両方のオシレーターにチェックを入れましょう(赤枠)。またCUTOFF/DRIVE/FATにENV1をアサインし、CUTOFFは11時、FATは10時に設定。こうすることによって、発音とともにフィルターが開閉し、DRIVEも効いて荒々しい音になります

 

Step 5:エフェクト
ひずませることでブラス感をさらに強調

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 Serumの画面左上からFXタブをクリックし、DISTORTION、HYPER/DIMENSION、REVERB、FILTER、EQUALIZER、COMPRESSの順にエフェクトをインサートしましょう。DISTORTIONではメニューからDiode 1を選択。ひずませることによって、ブラス特有のきらめきとにごったような音のニュアンスを強調します。

 次はENV1をDISTORTION、HYPER、REVERBのMIXにアサイン。これでENV1の動きに沿って音がひずんだり、空間が広がるようになります。このようにあらゆるパラメーターにエンベロープを設定することで、平坦ではなくダイナミックなサウンドにすることができるのです

 FILTERではメニューからNotch 12を選択し、CUTOFFで110kHz辺りを削りましょう。次段のEQUALIZERでは、236Hz付近でローカットしつつも1.6kHz辺りをブースト。最後にCOMPRESSではMULTIBAND(赤枠)にチェックを入れ、ゲインやアタック、リリースにENV1をアサインします。

 

Step 6:グローバル
STACKで1オクターブ上の音を重ねる

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 最後にGLOBALタブを開き、UNISONセクションで微調整。STACKでは、両オシレーターともに12(1×)にしています。これは、鳴らしている音に対して“1オクターブ上の音を1つ重ねる”という設定です。これはかなり便利なので、覚えておくとよいでしょう。MODEでは、UNISONでの音の重なり具合のタイプを選ぶことができます。今回はExpとSuperというものをチョイスしましたが、ここはぜひ好みで選んでみてください!

 

 

sonicwire.com

 

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Blacklolita

【Profile】サウンド・デザイナー/音楽クリエイター。2012年に音楽活動を開始し、ダブステップを軸にさまざまなダンス・ミュージックやゲーム音楽を制作する。そのほかシンセに関する講座や記事の執筆、サンプル・パックのデベロッパーKYMOGRAPHの運営も手掛けている。Twitter(@_Blacklolita_)も日々更新中!


【Recent Work】

gumroad.com

 

【特集】洋楽ヒット曲に学ぶシンセの音作り

 

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