『Studio Oneでロック・サウンドMixing!!!』by 沖悠央【スクランブルズ】〜サンレコ クリエイティブ・ラウンジ2021 アーカイブ

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どうしたら“この曲が一番輝くのか”という問いを追求した先に
“良い”ミックスがあると思うんです

 BiSHやBiSのプロダクションを手掛ける音楽クリエイター・チーム、SCRAMBLESに所属するエンジニア=沖悠央氏が、松隈ケンタ制作のロック・ソングをPRESONUS Studio Oneを使ってミキシング。プロのニーズを満たすStudio Oneプラグインの使い方や、ロックのミックス・テクニックについて深く語っていただいた。

 

『Studio Oneでロック・サウンドMixing!!!』
by 沖悠央【スクランブルズ】

 

Studio Oneは解像度が高く操作性もシンプル

 年間100曲以上もの楽曲をStudio Oneでミックスしているという沖氏。約10年前にある楽器屋店員からStudio Oneを薦められたのが、導入のきっかけだったそうだ。

 

 「当時ほかのDAWを使っていたのですが、Studio Oneに乗り換えてみたところ、解像度がとても高くて驚きました。それ以外にも操作性がシンプルで、ソフト自体の動作も軽く、非常に好印象だったのを覚えています。外部スタジオで作業するためにオーディオ・データへ書き出して作業する際も、不便さを感じたことはありません」

 

 沖氏が所属するSCRAMBLESでは、チーム全員がStudio Oneを使って作業しているのだそう。

 

 「セッション・データの受け渡しがとても楽なんです。レコーディングをしてボーカル・エディットしたファイルを、チームのクリエイターたちにそのまま渡したりすることもできます。“Studio Oneユーザーじゃないと、SCRAMBLESには入れないよ?”くらいの雰囲気になっていますね(笑)。松隈ケンタがプロデュースするBiSHの楽曲も、すべてStudio Oneで制作しているんです」

 

 今回沖氏が題材曲に挙げたのは、3月12日に松隈ケンタが小社から出版した書籍『松隈ケンタ流 ロックDTM入門』で登場する楽曲「セミのチャーハン」。同曲は既に簡易ミックスが施されているが、沖氏いわくここからさらに自身のミックスでブラッシュアップするとのこと。

 

 

 「まずはトラック構成ですが、ボーカルが1本、コーラスが9本、FXが6本並びます。FXは、いわゆるEDMなどで使われるスウィープやインパクト音なのですが、各セクションの頭に入るとメリハリが付くんです。Studio Oneには、こういった音があらかじめ用意されているので重宝します」

 

 上記に続いて、ギターが3本、ベースとドラムが1本ずつプロジェクトに並ぶ。

 

 「ハイハットはRch寄りに配置しているのですが、これはライブ・ハウスにおける観客目線をイメージしたパンニングです。観客から見るとハイハットは大体右側にありますので」

 

小さな処理の積み重ねが全体に大きく影響する

 沖氏は楽曲を一聴した際、ビート感をよりハッキリ聴かせたいと考えたという。Studio One付属のEQプラグインPro EQ2を立ち上げ、こう続ける。

 

 「まずは余分なところをPro EQ2で“お掃除”します。EQ処理のコツは、あまり聴こえていない帯域をハイカット/ローカットでばっさり切るということ。これを各パートに施すことによって、全体がより引き締まったサウンドになるのです。例えば、キックの高域を削ったスペースにはほかの楽器の高域が入りますし、より音圧を稼げるようになる場合もあります」

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キックのトラックに挿したPro EQ2。24.6Hzでローカット、13.01kHzでハイカットが施されている。沖氏いわく、「キックは100Hz付近をブーストするのがコツ。アタックが強調されて、よりビート感が出せるんです」とのこと

 続けてStudio One付属のコンプレッサー・プラグイン、Compressorを立ち上げ、その使い方を説明する。

 

 「基本的にはあまり深くかけずに、“スロー・アタック/ファスト・リリース”を基準に探っていくのがお勧め。トランジェントは残しつつ、そこからスレッショルドなどを微調整するという流れだと、良い結果につながりやすいでしょう」

 

 そのほかにも、キックにStudio One付属のエキスパンダー・プラグインExpanderを施して余韻をカットしたり、スネアにコンプレッサー・プラグインFatChannel XTを挿して音色を太くするなどのテクニックを披露してくれた。他方、エレキベースやギターはどのような処理をしているのだろうか。

 

 「エレキベースでは、Pro EQ2で500kHz付近をカットします。この帯域をバッサリ切ってギターで埋めるようなイメージです。一見地味な処理ですが、こういった小さな処理の積み重ねが、最終的には全体に大きく影響します。ギターにおいては、セクションごとにステレオ幅を調整しています。こうすることによって、Aメロからサビに進むに従い、徐々にステレオ幅が広くなり、楽曲に展開を付けているのです」

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左右2本のギターにおける、パンのオートメーション・トラック。楽曲のセクションごとにパンニングの値を変えて、ステレオ感を調整している。画面では、Aメロからサビに進むに従って、ステレオ感が徐々に広くなっているのが分かる

 さらには自身が“スライダー”と呼ぶセンター・スペースにおけるパンニング・テクニックや、デモ・ソングにおける音圧設定についてなど、たくさんのミックス・ノウハウを解説してくれた。最後にミックス上達の秘けつについて、沖氏はこう語る。

 

 「どうしたら“この曲が輝くのか”という問いを追求した先に“良い”ミックスがあります。曲を愛することが大事ですね」

 

沖悠央

沖悠央

【Profile】音楽制作集団スクランブルズのトップ・エンジニア。“音がアグレッシブになりそう!”という理由で社長(松隈ケンタ)にバリカンで髪をモヒカンにされる。BiSHをはじめとするスクランブルズ・サウンドのほぼすべてのミックスを手掛け、年に数百曲にものぼる

 

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