Yuichiro Kotaniが証明する Studio One流トラック・メイク術

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Studio One(以下S1)をバージョン2から愛用し続けているYuichiro Kotani。先進的なオーガニック・ディープ・ハウスを手掛け、世界中で人気を博すAll Day I DreamやSag & Treといった気鋭レーベルから作品をリリースし、まさに日々の制作でS1を使い込んでいるエキスパートだ。ソフトの魅力を探るべく、標準搭載の機能や付属の音源/エフェクトをフル活用して1曲作ってほしいと依頼したところ、ディープで味わい深いテクノ・チューンが届いた。そのデモ曲のプロダクションに沿って“S1ならではの強み”を熱く語っていただいたので、ここにお伝えする。

Photo:Hiroki Obara

 

デモ曲の試聴&ソング・ファイルのDL!

 本稿の教材となったデモ曲がご試聴いただけます。さらに、そのソング・ファイルを無償ダウンロード可能! 記事を読みながらファイルの内容をチェックし、プロのサウンド・メイク&S1の使いこなし方を学んでみましょう。



※本ソング・ファイルのご試聴にあたっては、使用インストゥルメントを作者の意図通りに再生するために、Studio One 5の環境設定>オーディオ設定>プロセッシングにて“インストゥルメントの低レーテンシーモニタリングを有効化”にチェックを入れてください(画面参照)

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付属の即戦力ループで“曲の背景”から着手

S1が曲の作り方に大きく影響

 S1の美点の一つに“何かとサクサクできる”というのがあり、特に“オートメーションを描くまでの速さ”は僕の曲の作り方に多大な影響を与えています。目的のパラメーターをクリックして、ソング画面左上の手の平アイコンをタイムラインにドラッグ&ドロップ。これだけでオートメーション・トラックが出現します。もちろん、ミキサーや付属のプラグインだけでなくサード・パーティ製プラグインにも対応。ハウスやテクノのように、ワンループ・ベースの音楽では音量やフィルターなどへのオートメーションで変化を付けていくのが常とう句です。それをサクッとストレスなく行えるのは明らかにアドバンテージですし、楽器を弾いているような感覚で、曲の表現力も高まります。もしオートメーションを描くまでの設定が手間なら、思い立ったとしても“また今度”となってしまうでしょう。僕が面倒くさがり屋というだけなのかもしれませんが(笑)、こうしたクイックネスがS1には数多くあって、ほかのDAWを触ると操作にワンクッション感じる瞬間があるのも事実です。

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S1ではオートメーションを描くまでが速い。目的のパラメーターにクリックするとソング画面左上に手の平アイコンが現れ、それをタイムラインにドラッグ&ドロップするだけでオートメーション・トラックが出現。オートメーションを多用するダンス・ミュージックに最適だ

ピッチを変えても音質が破たんしにくい

 それでは、デモ曲の工程を解説します。S1にはSAMPLE MAGICやVENGEANCE SOUNDといった有名サンプル・ブランドのループが付属し、いずれもハイクオリティです。今回はSAMPLE MAGICの方からボイスとパッドのループを選んで組み合わせ、曲の“背景”となる要素から作り始めました。そして、このとき既にS1の恩恵が。と言うのも、ボイスのピッチをパッドに合わせるべくトランスポーズしたのですが、音質が破たんしないのです。よく言われる“S1の音の良さ”の一例で、素材によってはオクターブくらいの大幅な上げ下げでも“音楽的に格好良い音”であり続けてくれます。付属サンプラーのピッチ・トランスポーズ機能にも同じアルゴリズムが使われているのか、ドラムのピッチをいじったりしても、ちょっとやそっとじゃ変になりません。これはDAWとしての強みでしょう。“ピッチを変えると音が悪くなるからな……”と思って、あきらめる必要はありません。

 

 ボイスとパッドは、長さをエディットした上で、繰り返し再生されるようにコピー&ペーストしていますが、オーディオ・イベントを切った部分に一瞬でクロスフェードを描けるのもS1の速さ。目的のイベントを一括選択し、コンピューター・キーボードのXを押すのみです。そうやって“プチっ”というノイズを処理した後、付属のアナログ・モデリング・シンセMai Taiで低音を足して安定感を出しました。

 

Gaterでフローティング・ポインツ的なリフ作り

ゲートをステップ・シーケンサーで制御

 次に付属のマルチ音源Presence XTを立ち上げ、チェロの音色をロード。先のボイス+パッドがシネマティックな雰囲気だったので、それに合わせてフローティング・ポインツ「Falaise」(2019年)の弦楽のようなリフを入れてみることにしました。ストリングスにゲートをかけてスタッターのごとく小刻みに鳴らすフレーズですが、新しくゲートを立ち上げる必要はありません。Presence XTにはGaterという内蔵エフェクトがあるからです。ゲートの開閉をステップ・シーケンサーでコントロールできるもので、かなり直感的に扱えます。またグリッチが発生するようなリフを作れたりもするため、“今っぽいサイケデリックな表現”だってお手の物。Gaterのおかげで、たった1本のMIDIノートからリフが出来上がり、曲の00:13辺りでフェード・インさせました。

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フローティング・ポインツ「Falaise」のストリングスのようなリフは、マルチ音源Presence XTのGaterが決め手(赤枠)。ステップ・シーケンサーでゲートを開閉できるエフェクトで、グリッチーな音を作ることも可能だ。デモ曲のチェロにはGaterのほか、フィルター・カットオフへのオートメーションも効いている。Presence XTはS1の全グレードに付属

パンにオートメーションを描かない理由

 このチェロと入れ替わるように00:30くらいから入ってくるのもPresence XTの音。クワイアの音色を使い、やはりGaterでフレーズ・メイクしています。チェロとクワイアにはS1付属のパンナーDual Panを挿し、オートメーションで定位を変えて立体感を付与。ミキサーのパンにオートメーションを描かないのは、描いた後で“全体的に左へ寄せたい”などと思ったときに大変だからです。これはボリュームにも言えることで、僕は普段、プラグイン・エフェクトの出力ゲインにオートメーションを描いています。

 

S1を核とするYuichiro Kotaniのプライベート・スタジオ

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S1をメインDAWとするYuichiro Kotaniのスタジオ。本場ヨーロッパのディープ・ハウス・プロデューサーのようにハードウェアを積極的に取り入れた環境だ

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デスク周り。かつては他社のDAWを使っていたそうだが、S1の音の良さとインテリジェンスな操作性に魅力を感じ、数年前にスイッチしたという

 

Impact XTのスライスで4つ打ちに“揺らぎ”を

イベントをサンプラーへ直接アサイン

 続いては4つ打ちのキック。ポイントは“単調に聴こえないよう4つのキックそれぞれを異なるサンプルにする”という技です。と言っても、全然違う音色を使うわけではありませんよ! 今回は、まずアナログ音源のリズム・マシンに4つ打ちを入力し、MIDIで同期させて録音しました。その録り音をイベントの右クリック・メニューからS1付属のドラム・サンプラーImpact XTにインポート。すると4つ打ちが自動的に切り分けられ、4つの異なるパッドにオートでアサインされました。つまり“4種類のサンプル・キック”ができたわけで、あとは1つずつ打ち込んで4つ打ちを作るだけです。

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リズム・マシンの4つ打ちを録り、そのオーディオ・イベントからImpact XTに直接インポートするところ。イベントの右クリック・メニュー>オーディオ>新規Impactに送信という流れだ

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Professional/Artist版に付属のドラム・サンプラー、Impact XT。フレーズ・サンプルなどのオーディオ・イベントを送信すると、アタック検知で自動スライスされ、パッドに割り当てられる。本文中では便宜上、4つのキックを送信&アサインしたと説明しているが、実際には8つのキックを録って割り当て、その中から4つを選んだ

 4つのサンプルは、ほとんど同じ音色ですがアナログの微妙な違いはあるため、これらで4つ打ちを作るのと単一の素材から作るのとでは、リスナーが無意識に感じ取る音色変化や揺らぎに差が出てくると思います。しかもImpact XTのスライス精度はほぼ完ぺき。ちゃんと各キックの頭(アタック)で切り分けられますし、調整が必要な場合も画面上部の波形をズーム・インすれば、スライス・カーソルがゼロ・クロス・ポイントにピタッとスナップされます。

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Impact XTの波形ディスプレイ。スライス・ポイントを自分で決めたい場合、カーソル(白い縦線)がゼロ・クロス・ポイントにピタッと吸い付くので便利。プチ・ノイズの防止にもなる

 “オーディオをイベントからサンプラーへダイレクトに送れる”という画期的な機能とImpact XTのスライス性能を合わせれば、オリジナルのドラム・キットの作成も容易でしょう。 また、付属サンプラーのSampleOne XTにも同様の方法で送れるため、録り音をエディットしたりキーボードで演奏したい場合にも便利です。

 

EQP-1A系のPassive EQを使う意味

 僕は普段、キックにPULTEC EQP-1AスタイルのEQを使い、60Hzか100Hzをブーストします。60Hzだと低域の鳴り、100Hzではもう少し上の“コシの部分”(小音量でも感じられる存在感)を強調することができ、一般的なEQとは違う独特の音色変化がキックによく合うのです。例えば通常のEQで100Hzを持ち上げるよりも簡単に“コシ”を強めることができます。

 

 今回は、S1に付属するEQP-1A系のプラグイン、Passiveを使用し100Hzをブーストしました。他社のものに比べてかかりが良く、少し上げるだけでも効果がはっきりと現れます。ブースト後、同じ帯域をアッテネートすることでバランスを整えました。高域については16kHzをブーストし、空気感のようなものやザラつきを強調。これがあると無いでは、クラブなどの大音量環境やインイア・イアフォンで聴いたときの分かりやすい空気感に差が出てきます。EQP-1Aスタイルの音作りを付属のプラグインで行えるというのは素晴らしいことですね。

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Professional/Artist版に付属のプラグイン・チャンネル・ストリップ、Fat Channel XTで使えるPassive EQ。同じ帯域を同時にブースト&アッテネートできるのが特徴

アナログ・シンセを“AUXチャンネル”で運用

ハード音源をソフト感覚で使用可能

 続いてはベースを作りました。1980年代のアナログ・シンセを使い、13ステップのユークリッド ・リズムのパターンで鳴らしています。外部音源を使用する際には、バージョン5の新機能である“AUXチャンネル”が便利。ハードウェアのシンセなどをソフト音源のように扱えるもので、ドラッグ&ドロップによるロード、フェーダーでの音量調整、プラグインを使った音色加工、オートメーションでの音作り、録音せずともステムや2ミックスに書き出せる点など、まさにソフト音源ライクな運用が可能になります。

 

 手順を見ていきましょう。まずは外部デバイスの設定画面を開き、どのMIDI出力/MIDIチャンネルで外部音源をトリガーするか指定します。音源のデバイス名などを入力し設定を保存すると、ブラウザーの外部インストゥルメント欄にデバイス名入りのアイコンが登場。タイムラインにドラッグ&ドロップすれば、指定のMIDI出力にひも付いたインストゥルメント・トラックが現れます。

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外部デバイスの設定画面。まずは、外部音源をトリガーするためのMIDI出力/MIDIチャンネルを選択(赤枠)。画面では、MIDI出力にオーディオI/OのMIDI OUTを選んでいる。次に、デバイス名という欄に音源名を入力(黄枠)。設定を保存後、すぐにブラウザーのインストゥルメント>外部インストゥルメント欄に製品名のアイコンが出てくる

外部音源を素早く取り入れられる

 これでピアノ・ビューなどから音源をトリガーできるわけですが、出音をS1に入力するためのチャンネルが必要。そう、AUXチャンネルの出番です。インストゥルメント・トラックのヘッダーにある鍵盤アイコンをクリックすると外部デバイスのポップアップが開くので、その左上部の矢印アイコンをクリックしてみましょう。現れたプルダウンの中の“AUX 1……”といった表記にチェックを入れれば、ミキサーにAUXチャンネルが登場します。そのオーディオ入力を音源が接続されているオーディオI/Oのインプットなどに指定し、“デフォルトを保存”でセーブしておくと、次回から外部インストゥルメント欄の製品名入りのアイコンをドラッグ&ドロップするだけで、インストゥルメント・トラックとAUXチャンネルがセットで立ち上がるのです。

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AUXチャンネルはProfessional/Artist版で使用可能。オーディオ入力欄のプルダウンから、どの外部音源をインプットするか選べる。画面で選択中の“Preamp”は外部音源の取り込みに使うAPI 512Cを表し、オーディオI/Oのch 17に入っている

 これまではオーディオ・トラックを新規作成して外部音源を受けてという一手間がかかっていましたが、AUXチャンネルによって素早くスマートに外部音源を扱えるようになりました。また先述の通り、オーディオ・トラックを作らずともフェーダーでの音量調整やプラグインを使った処理、書き出しなどが行えるため、リアルタイム性も向上しています。

 

Column: “ツヤがある音質”と“低域特性の良さ”

 AUXチャンネルがあれば、ハードウェアの音源を録音せずとも2ミックスまで持って行けるわけですが、今回皆さんにダウンロードしていただくソング・ファイルではオーディオ・トラックに録った状態での提示となります。そこで注目してもらいたいのが“S1の音の良さ”です。

 筆者はたまに別のDAWも使うのですが、ハードウェアのシンセを録音したときに、演奏中のモニター音と録り音のクオリティに差を感じる場合があるんです。例えば、どことなくザラっとした質感に変わってしまうとか、そういう違いですね。S1には、それが無いんです。かと言って無味無臭な音質というわけではなく、ヌメっとしたツヤのようなものがあり、とても気に入っています。アップデートのたびに音質も少しずつ更新されている印象で、今回のバージョン5では従来よりも明るいトーンに。トラック・メイクやミックスの段階では、そう大きな差を感じませんが、外部の音をマイクで録ったときなどに顕著です。

 低域特性の良さもS1の魅力。ローエンドまでにじまず/ひずまず奇麗に見えるので、キックやベースの配置が容易です。ローエンドを担うサブベースは今のダンス・ミュージックの制作に欠かせないものですが、その点からしてもS1は現代の音楽制作に合っていると言えます。付属の音源やエフェクトのプリセットにも“現在進行形のポップス”やクラブ・ミュージックに向くものが多いので、トレンドやユーザー・フィードバックを生真面目に反映しているのでしょう。

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デモ曲のベースやシーケンスに使われた機材。S1のAUXチャンネルがあれば、こうした資産をソフト音源感覚で扱えるので、今まで以上に出番が増えるだろう

 

内部ルーティングでFXのバリエーションを量産

トラックからトラックに音を送り込む

 ダンス・ミュージックには、FXやSEなどと呼ばれる効果音がたくさん入っていますよね? でもサンプル・パックから選んだFXが曲になじまなかったり、そもそもFX選び自体に結構な時間がかかってしまったりと、悩ましい側面もあるでしょう。今回のデモ曲にも幾つかのFXを盛り込んでいますが、次に紹介する方法を実践すると、億劫だった作業も楽しくなるかもしれません!

 

 一例として、ベースが入る“きっかけ”として作成したFXを取り上げます。まずは、00:40辺りからフェード・インするノイズSEをMai Taiのノイズ・オシレーターから作成。その上で、Impact XTのシンバルをベースが入る瞬間に鳴らし、バウンスしてから加工しました。MIDIでトリガーするよりオーディオ化しておいた方がリバースなどの処理が楽なので、特にFXを扱う際にはバウンスありきです。そのバウンス済みのトラックにS1付属のAnalog Delayをインサート。しかし、単にディレイをかけた音にしたいわけではありません。かけながらディレイ・タイムなどのパラメーターを動かして、演奏的な要素を加えるのです。では、それをどうやって記録するのか? ここで“内部ルーティング”が役立ちます。つまり、ディレイのパラメーターをリアルタイムに動かしながら、その音を別のオーディオ・トラックに録るのです。

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Professional/Artist版に付属のAnalog Delay。操作画面が一新され、遊びの感覚が強くなった。本文中で解説している“ディレイを演奏する”といったアクションも、よりエンジョイできる

動かすノブや使用エフェクトの変更も手

 やり方は簡単で、新規のオーディオ・トラックを作り、入力欄で先述のバウンス済みトラックを選ぶだけ。レコーディング状態にしてから“ディレイを演奏”すると、その結果が録音されます。今度はフィードバックを触りながら録音するもよし、異なるエフェクトに替えるもよしです。そうして録り進めていくと、1つの素材からバリエーションを得ることができる上、曲を聴きながら音作りするので“なじみやすさ”も担保できるでしょう。

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オーディオ・トラックの入力欄に表示されるプルダウン。オーディオI/Oのインプット以外にもさまざまなソースが選べる。画面内の“トラック”にはソング・ファイル内のほかのオーディオ・トラックが並び(赤枠)、いずれかを選択すると、その出力をインプットできる。プラグインのかけ録りなども可能だ。トラックの上にある“インストゥルメント”ではソフト音源などの出力を選べる

 バージョン5では付属のエフェクトがアップデートされていて、Analog Delayのようにハードウェアっぽいルックスのものもあります。見た目にも楽しいですし、あたかも実機のノブを触るような感覚で操作できるため、リアルタイムにパラメーターを動かす際にも“その気”になりますね。

 

徐々に変化させたい音に効く“テイクをレイヤー化”

キモはテイクを“縦”に録りためられること

 FXの後は、キック以外のリズムを作成するなどして、展開を付けました。また、曲が進むにつれてアルペジオ的なシンセが増えていきますが、特にハードのシンセで“徐々に音色やパターンが変化していくフレーズ”を作る場合、録音結果からベストなものを選ぶのが大変だったりします。

 

 そこで有効なのがS1の“テイクをレイヤー化”機能。デモ曲では、ベースと一緒に入ってきて、ほぼ一曲を通して鳴らしているシンセ(中域のフレーズ。例えば02:00や04:30辺りが分かりやすい)に活用しました。この機能は、同一のオーディオ・トラックに録音した複数のテイクを“レイヤー”として縦方向に積んでいけるもので、各テイクをソロ再生したり好きなものをトラックに移したり、はたまた気に入った部分を選んで1本にまとめることなどが可能です。録音パネル>録音モード>テイクをレイヤー化でアクティブにでき、本来は歌録りに向けたものだと思いますが、僕はシンセの録音に応用しています。

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画面最上段はオーディオ・トラックで、その下にレイヤーが連なる。レイヤー・ヘッダーの矢印アイコン(↑)を押すと、そのテイクがトラックに移動。また、画面のように各テイクの良い部分を1本のトラックにまとめることも可能だ。テイクの採用個所を選択するだけでトラックに自動反映される

 使い方は、シンセが欲しいセクションをループ再生し、曲を聴きながら心ゆくまで演奏を録音。その後、採用するものを決めるという流れです。DAWによっては横方向にしか録り進めていけず、気付いたら次のセクションに移っていた、なんてこともありますが、この機能を使えば縦に録りためられる上、各テイクが自動配色されるので視認性抜群。選ぶのが大変!といったことになりにくく、緩やかに変化していくフレーズなど長尺の素材の録音に便利です。

 

MojitoやMai Taiもアルペジオで活躍

 アルペジオ類にはS1付属のシンセも活用しています。例えば、02:40辺りからフェード・インする奇怪なフレーズ。最近よく聴いているBarkerというベルリンのアーティストをイメージしたもので、音源はモノフォニックのMojitoです。これにNote FX(MIDIエフェクト)のArpeggiatorをかけて、Rate(アルペジオの符割り)を付点64分音符に設定しています。

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アルペジオに使ったMojitoは、Professional/Artist版に付属するモノフォニック・シンセ。ROLAND SH-101を思わせる音で、シンプルながら良い味を出す。フィルター・レゾナンスを上げればアシッドなフレーズにも対応

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Professional/Artist版に付属のNote FX(MIDIエフェクト)、Arpeggiator。画面左の大ぶりのノブでアルペジオの速度を調整できる

 04:47辺りから登場するフレーズはMai Tai。プリセットのPoly – Arp1を元に、ノイズとGaterを加えた音です。Mai Taiはモジュレーション・マトリクスなどが分かりやすく、Characterという味のあるエフェクト群も魅力。初心者の方にも取っ付きやすいシンセだと思います

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Mai Taiはアナログ・モデリングのシンセで、モノ/ポリの両方に対応。ほぼすべてのコントロールが画面上に出ている上、それぞれが大きく見やすいので、シンセ初心者にも扱いやすいだろう。デモ曲ではアルペジオなどに使用し、画面左下のエフェクトGaterが活躍

 ポイントをさらうだけになりましたが、曲作りにS1ならではの特徴が生かされていることをご理解いただけたかと思います。もしほかのDAWを使っていたら制作方法そのものが変化し、結果としての作品も変わってくるでしょうから、ツールと作品の関係性は深いと言えます。

 

 最後に地味ですが、S1のマーカー機能はなかなか便利です! スタート&エンド・ポイントを設定してアレンジトラックと併用すれば、曲の展開を変えたときにも2ミックスの書き出し区間を間違えてしまうことが無いでしょう。ループで指定するより手間も少ないので、あまり使ったことがない方はぜひ試してみてください。

 

Topic: お薦めのS1アドオン

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 S1には“アドオン”と呼ばれるオプション製品が用意されており、VUメーターやFatChannel XT用のコンプ/EQ、サチュレーターのSOFTUBE Saturation Knobは無償で入手できます。筆者が気に入っているのはテープ・シミュレーターのSOFTUBE Tape(オープン・プライス:市場予想価格9,167円前後/画面)。他社のシミュレーターも幾つか試しましたが、Tapeの“にじみ方”が最も好みだったので導入しました。マスターに使用すると強調される周波数帯域が変化し、A~Cの3つのボタンで“ミックスのどこに焦点を当てるか”が決められます。

 

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Yuichiro Kotani

<BIO>米バークリー音楽大学で学び、英All Day I Dreamなどの有力ハウス・レーベルからリリース。8月28日にアレンジ/トラック・メイクを手掛けたFriday Night Plansによるシャーデーのカバーが発売される

 

製品情報

www.mi7.co.jp

PRESONUS Studio One 5

Professional(38,909円前後)、Artist(9,637円前後)、Prime(無償)

※記載の価格はオープン・プライス:市場予想価格

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REQUIREMENTS
Mac:macOS 10.13以降(64ビット版)、INTEL Core I3プロセッサー
Windows:Windows 10(64ビット版)、INTEL Core I3またはAMD A10プロセッサー以上
共通:4GB RAM(8GB以上推奨)、40GBハード・ドライブ空き容量、1,366×768pix解像度のディスプレイ(高DPI推奨)、タッチ操作にはマルチタッチに対応したディスプレイが必要、インターネット接続(インストールとアクティベーションに必要)

 

特別企画「制作&ライブを革新するDAW〜 Studio One 5の深淵」

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