春野が使う Cubase Pro 10.5 第1回〜グループチャンネルトラックを活用したオリジナル・テンプレート作成術

スタインバーグのDAW「Cubase(キューベース)」の活用術をシンガー・ソングライター春野さんに語っていただきました

 皆さん、初めまして。シンガー・ソングライターの春野です。普段、僕は作曲/編曲/録音/ミキシングの作業をすべてSTEINBERG Cubase Pro 10.5で行っています。これらの経験を生かして、僕なりのCubaseの使い方をご紹介していきましょう。第1回は、楽曲制作をする際の下準備に欠かせない、オリジナル・テンプレートの作成方法についてです。

ルーム/プレート/ディレイなどの
空間系エフェクトを使い分ける

 新しい曲を作る際、皆さんはこの3つの作業を行うと思います。1つ目は“ 新規プロジェクトの作成”、2つ目は“ 音源用のオーディオ/MIDIトラックの立ち上げ”、3つ目は“センド&リターンまたはバスなどのルーティング”です。これら以外にも、作曲に着手するまでに行うお決まりの手順が幾つかあるかと思いますが、毎回やっていては創作意欲が低下してしまいますよね? そこで、あらかじめいろいろな設定を仕込んだオリジナル・テンプレートを用いて、よりスピーディに制作に取りかかれるようにしてみましょう。

 

 僕の場合、複数のトラックをまとめるグループチャンネルトラックが5つと、ソフト音源用MIDIトラックが2つ、シンセ用オーディオ・トラックが1つ立ち上がるようになっています。

筆者のオリジナル・テンプレート。上から、複数のトラックをまとめるグループチャンネルトラックが5つ並び、その下にはピアノとオルガンのソフト音源が立ち上がったMIDIトラックが2つ、シンセ用のオーディオ・トラックが1つ確認できる。すぐに作曲を始めやすい設定にするのがポイントだ

 5つのグループチャンネルトラックは、上から2ミックス全体の入出力用、FX用、トリガーとなるMIDIトラックを含むサイド・チェイン・コンプ設定用、サイド・チェイン・コンプをかけるパート/かけないパート用に分かれており、これらの下に見える2つMIDIトラックには、それぞれ自分がお気に入りのピアノやオルガンのソフト音源が立ち上がっています。このように僕のオリジナル・テンプレートは、自分にとってすぐに作曲を始めやすい設定になっているのです。

 

 ここで、FX 用のグループチャンネルトラックを詳しく見てみましょう。ここにはセンド&リターンで使用する空間系エフェクト・プラグインがインサートされたFXチャンネルトラックが3つあります。1つはルーム・リバーブ、もう1つはプレート・リバーブ、最後の1つはディレイです。

 

 FXチャンネルトラックは、メニュー・バーの“プロジェクト”から“トラックを追加→ FX チャンネル”と選択すると追加が可能。ルーム・リバーブは各パートに空間的な統一感を持たせるために、プレート・リバーブは任意のパートによりナチュラルな奥行き感を施すために使い分けています。もし必要であれば、そのほかの空間系エフェクトもこのFX 用グループチャンネルトラックに追加しておくとよいでしょう。

普段からよく使うソフト音源は
グループチャンネルトラックにまとめる

 またプロジェクトウィンドウには、サイド・チェイン・コンプ設定用のほか、サイド・チェイン・コンプをかけるパート/かけないパートのトラックをそれぞれまとめた2つのグループチャンネルトラックが並んでいますが、このグループチャンネルトラックを使えばプロジェクト全体を見やすく整理できるだけでなく、ここにルーティングされたチャンネルの音量やエフェクト、オートメーションなどを一括管理することが可能です。ちなみにサイド・チェイン・コンプの設定方法に関しては、連載第2回で詳しく解説したいと思います。

 

 グループチャンネルトラックを作成するには、メニュー・バーの“プロジェクト”から“トラックを追加→グループチャンネル”を選択。ルーティングの設定は、プロジェクトウィンドウの下ゾーンにある“MixConsoleタブ”をクリックすると出現するMixConsole画面で行えます。

Cubaseでミックスを作成する際に用いるMixConsole画面。オーディオ/MIDIチャンネルの音量やパンをコントロールしたり、ソロ/ミュートを切り替えることができる。画面上部にはチャンネルラックセクション(赤枠)を備え、ルーティングやプラグインのインサート、センドの設定などが可能。各チャンネルの入出力を変更するには、ルーティングラック(黄枠)にあるいずれかのスロットをクリックする

 MixConsoleは、Cubaseでステレオやサラウンドで楽曲のミックスを作成するための画面です。ここでは複数のチャンネルに対してのルーティング設定のほか、オーディオ/MIDIチャンネルの音量やパンをコントロールしたり、ソロ/ミュートを切り替えることができます。

 

 また、先述したように5つのグループチャンネルトラックの下には、ピアノやオルガンのソフト音源が立ち上がったMIDIトラックがスタンバイ。ソフト音源によっては起動するまで時間がかなりかかるものがあるので、“その時間も短縮してしまおう”という計らいです。ここには、普段から自分がよく使うソフト音源を仕込んでおくとよいでしょう。

 

 さらにその下にあるのは、シンセ用のオーディオ・トラック。シンセを弾いて良いフレーズが浮かんだときなどに、すぐレコーディングできるように設定しています。

 

 プロジェクトにオーディオ・トラックを追加するには、メニュー・バーの“プロジェクト”から“トラックを追加→ Audio”を選択すればOKです。

ルーム・リバーブを薄くかけて
楽曲全体に統一感を出す

 最後に、ミックスにおけるTipsを一つご紹介。普段から僕は、各オーディオ/MIDIチャンネルのほか、プレート・リバーブやディレイをインサートしたFXチャンネルに、センド&リターンでルーム・リバーブを薄くかけています。これは、それぞれの音が“ 一つの空間で響いている状況”を再現しているのですが、楽曲全体に統一感を出すことができるので、ぜひ試してみてください。

 

 ルーム・リバーブをセンド&リターンでかける方法は、とてもシンプル。プロジェクトウィンドウの左ゾーンにあるInspectorタブから“Sends”をクリックすると、Sendsセクションが表れます。

プロジェクトウィンドウの左ゾーンにあるInspectorタブ。ルーム・リバーブをセンド&リターンでかけるには、Sendsセクション内のスロットをクリックし、任意のFXチャンネルトラックを選択する。オン・ボタン(黄枠)をオンにし、スロットの下段に位置するオレンジ色のバーをマウスでドラッグすれば、センド量を調節することが可能だ

 同セクション内にあるスロットをクリックし、任意のFXチャンネルトラックを選択すればルーティング完了です。センド量は、スロット内の最下段に表示されたバーをマウスでドラッグして調整します。センド量を決めるコツは、小さい値から徐々に始めること。そうすればかけ過ぎることなく、程良い量に設定できるでしょう。ちなみに僕はルーム・リバーブ用に、DENISE Perfect Roomというプラグインを使っています。明りょうでタイトなルーム・サウンドを付与することが可能です。

筆者がルーム・リバーブに使用しているプラグイン、DENISE Perfect Room。ルーム系リバーブに特化し、明りょうでタイトな残響音を付加することができる

 テンプレートが完成したら、名前を付けて保存します。次に新しい曲を作るときは、このファイルを複製して曲作りを始めるとよいでしょう。これらの下準備は、まるで流れ星のような衝動的制作アイディアをDAW へ残しておくための大切な役割となります。この続きはまた次回。それでは!

 

春野

 東京を拠点に活動するシンガー・ソングライター/プロデューサー。作編曲からミックス/マスタリングまで自身で行うマルチな音楽家。2019 年8月に初のCD 作品『CULT』をタワーレコード限定で発売する。ローファイ・ヒップホップやジャズ、現代的ポップスなどをクロスオーバーするグルービーなサウンドを特徴としている。また、シルキーな歌声と叙情的なリリックが話題となり、SNSYouTubeを中心に注目を集めている。

Recent work

Is She Anybody? - EP

Is She Anybody? - EP

  • 春野
  • R&B/ソウル


製品情報

new.steinberg.net

STEINBERG Cubase Pro

オープン・プライス

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