『IK MULTIMEDIAプラグインで行う 劇伴ミックス時短術』by 加納洋一郎〜サンレコ クリエイティブ・ラウンジ2021 アーカイブ

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IK MULTIMEDIAプラグインの一番の魅力は
プリセットを駆使して短時間かつ直感的に処理できるところ

 ミキサーズラボを経てフリーランスで活躍中のエンジニア、加納洋一郎氏。アーティストの楽曲のほか、劇伴も手掛ける彼に、IK MULTIMEDIAプラグインを使った劇伴音楽のミックス時短術を教えていただいた。

 

『IK MULTIMEDIAプラグインで行う 劇伴ミックス時短術』
by 加納洋一郎

 

楽器ごとのプリセットは約600種類を用意

 「劇伴のミックスでは、1日に仕上げる楽曲の数が違います」と切り出す加納氏。

 

 「ポップスでは1日に1〜2曲のペースでミックスするのに対して、劇伴では1日に10曲以上をこなさないといけません。そうなると、いかに時間をかけずに作曲家のイメージ通りのミックスができるか、ということが目的になります」

 

 加納氏が題材曲として取り上げたのは、マツオカヒロタカ「Frontline Forces」。荘厳なオーケストラが繰り広げられる楽曲で、中盤からはドラムやベース、エレキギターが加わるアレンジとなっている。

 

 「今回登場するパートのほとんどは打ち込みです。曲のイメージは“兵士たちが戦場の最前線で戦っている”というものなので、いかに“生っぽく”そして“ラウド”に聴かせられるかがミックスのポイントになります」

 

 加納氏は、普段からバーチャル・エフェクト・ラック・システムのIK MULTIMEDIA MixBoxや、マスタリング/ミックス用エフェクト・プラグインのT-Racks 5を愛用しているという。

 

 「まずは打ち込みのドラムをMixBoxでラウドにします。MixBoxが好きなのは、画面を拡大することができるから。これが一番の特徴で、直感的な処理につながるのです」

 

 MixBoxでは、API 500互換モジュールを思わせるプラグインをインサートするスロット数を4つ/8つで切り替えることができ、各モジュールの並び替えやプリセットの呼び出しなども簡単に行える。加納氏はこう話す。

 

 「楽器ごとのプリセットは約600種類も用意されています。最初にプリセットを選んでそこから自由に調整してもよいですし、ミックスのアイディアとして参考にするといった使い方もよいでしょう。また各モジュールにもプリセットが用意されているため、どこからでもプリセットを軸とした音作りがしやすい仕様となっています」

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バーチャル・エフェクト・ラック・システムのIK MULTIMEDIA MixBox。API 500互換モジュールを思わせるプラグインを自由にインサートできる。スロット数を4つ/8つで切り替えることができ、各パートごとに用意されたプリセット数は約600種類

 加納氏は説明を挟みながらも、MixBoxのプリセットを選んであっという間にドラムやベースの音作りを進めていく。ドラムのバスにはビンテージ・テープ・レコーダーの名機をシミュレートしたT-Racks Tape Machine 440をインサート。まさに一瞬で打ち込みとは思えないほどの迫力あるサウンドへと変化した。

 

 「ドラムの音がにじむようにまとまって、ローエンドも膨よかになりますね。これでリズム隊は完成です」

 

劇伴では画に合った音色を選ぶことが大切

 次に加納氏が手を付けたのは、楽曲の序盤に登場するシンセ・ベースやFXだ。ここではEQのT-Racks EQP-1Aとステレオ・イメージャーのMixBox Stereo Imagerを使用する。

 

 「T-Racksで好きなのが、M/S処理に対応するパラメーターを備えているところ。シンセ・ベースではEQP-1Aでサイド成分を上げ、FXではStereo Imagerで位相を調整してオケに埋もれないようなアプローチを施しました」

 

 ストリングスのバスには、リバーブのT-Racks Sunset Sound Studio Reverbをセンド&リターンでかけ、さらにマスタリング用コンプレッサーT-Racks Oneをインサートする。

 

 「T-Racks Sunset Sound Studio Reverbでは、自然な余韻がするプレートを選びました。またT-Racks Oneは本来マスターに用いるプラグインですが、僕の場合はブラスやストリングスのバスに“接着剤の役割”として使っています。AIRノブで空気感を足し、WIDTHノブでステレオ・イメージを広げているのです」

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リバーブ・プラグインのIK MULTIMEDIA T-Racks Sunset Sound Studio Reverb。このセッションではストリングスのバスやトランペットに用いられている

 加納氏は、劇伴におけるミックスのポイントをこう語る。

 

 「劇伴の場合、オーディオ的に良ければOKということではなく、画に合っていなければ意味がありません。リバーブ一つにしても、シーンに合った音色を選ぶことが大切です」

 

 最後に加納氏は、マスタリング・ツール・ソフトのIK MULTIMEDIA Lurssen Mastering Consoleをマスターに文字通り“挿すだけ”のアプローチを施した。

 

 「Lurssen Mastering Consoleの特徴は、色付けせずにレベルを稼ぐことができるところ。各EQポイントは的を射た周波数帯域になっていますし、ディエッサーも内蔵しているのがうれしいです。IK MULTIMEDIAのプラグインは、劇伴のようなスピード感を求められるミックスの現場でも非常に活躍します。プリセットを駆使し、短時間かつ直感的に処理できるのが一番の魅力でしょう」

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マスタリング・ツール・ソフトのIK MULTIMEDIA Lurssen Mastering Console。色付けせずにレベルを稼ぐことができるのが魅力的だ

 

加納洋一郎

加納洋一郎

【Profile】ミキサーズラボを経てフリーランスのエンジニアとして活躍。LM.Cやシシド・カフカ、GILLEといったアーティストの作品を手掛けてきた。同時に、映画『サマーウォーズ』などの劇伴やBlu-rayのサラウンド・ミックスもこなす

 

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