“音楽制作を始めたい”“パソコンを使って作曲がしてみたい”といったDTMをスタートする人に向けた『松隈ケンタ流 ロックDTM入門』。BiSHやBiSのメイン・ソングライターとして活躍する松隈ケンタ氏が、独自のメソッド「ワンコーラス作曲法」を解説した本です。最初から1曲作り込むのではなく、とにかく作ってみて、繰り返し作業することでスキルを上達させることに焦点を当てているのが特徴。理論的なDAW解説書で挫折した初心者にもオススメの内容となっています。そんな本書の一部をサンレコで無料公開! 購入前に、まずはWeb版でお楽しみください。
目次
情熱を持ってDTM機材を準備!
DTMはバンド・メンバーがいなくても1人でもできるし、楽譜が読めなくても音楽は作れると僕は思います。ロックにルールはないのですから自由に音楽を作っていい。プロになるとセールスなどの結果が当然求められますが、最初は自分がやりたい音を出せばいい。他人のやり方に縛られる必要は無いんです。
最も重要なのは、“音楽を作りたい!”という情熱。もちろん、ロックをやりたいならギターは弾けた方がいいと思いますけど、とりあえずDTMを始めてから自分の得意な音楽スタイルを探していく人も意外と多いんです。DAWソフトをいじっているうちに、“自分って実はダンス・ミュージックが向いているんだな”など、新しい発見があるかもしれません。とにかく挑戦してみることが大切です。
DTM機材は絶対に必要。準備としては以下があれば大丈夫です。
❶ パソコン
❷ DAWソフト
❸ オーディオ・インターフェース
❹ マイク
❺ ヘッドフォン/スピーカー
❶パソコンで音楽制作用の❷DAWソフトを動かします。これは演奏の録音/再生、それからソフト・シンセ(パソコン内で使えるシンセサイザー)やプラグイン・エフェクト(パソコン内で使えるエフェクター)を使って曲を作っていくことができるツールです。そして、それぞれの楽器音を調節してミックス・ダウン=曲をまとめる作業もできます。DTMには必ず必要なものです。
❸オーディオ・インターフェースは❹マイクやギターをつないでパソコンに録音したり、❺ヘッドフォン/スピーカーでDAWソフトのサウンドを高音質で聴くための装置です。パソコンによっては入力端子やヘッドフォン端子/スピーカーも内蔵されているので、最初のうちは無くても一応は成り立つんですが、ちゃんと音楽を作るならオーディオ・インターフェースは絶対にあった方がいいです。
DTM機材ってどうやって選べばいいんスかね?
今はDTMの市場も大きく、いろんな製品が出回っていて選択肢も幅広いです。その反面、最初は何を選べばいいのか分からないと思いますので、おすすめの機材セレクト方法を紹介します。
❶パソコンの選び方
まずパソコンですが、僕がメインで使っているのはAPPLE MacBookAirの2014年モデル(!)です。もう使い始めて6年以上になりますね。でも全然不都合なく動いています。曲作りもそのほかの作業も基本はこれ一台。一昔前はCPUやメモリー不足がダイレクトに影響していたので自作PCを組んだりしていましたが、最近のパソコンは音楽作りのスペックを既に上回っているので、映像制作のような重い作業をやらない限りはどんなパソコンでも十分でしょう。MacでもWindowsでも好きな方を選べばいいと思います。ただ、おすすめしたいのはノート型。スタジオや友達の家に持っていったり、移動中も作業できるのは本当に便利なので、できるだけノート型を選んでください。
❷DAWソフトの選び方
こちらもたくさん選択肢があります。多くのプロ・エンジニアが使っているAVID Pro Tools、昔から人気のあるAPPLE Logic、STEINBERG Cubase、MOTU Digital Performer、それからABLETON LiveやIMAGE-LINE FL Studioなどそれぞれが特徴を持ちつつ、基本的にできることは似ています。UI(画面)が自分のセンスに合うもの、自分の好きなクリエイターが使っているもの、周りの友人が使っているものなどを基準に選ぶといいと思います。ただ、DAWソフトを買う前に必ず対応動作環境を見て、持っているパソコンのOSに合うかどうかはチェックしてください。
僕のおすすめDAWソフトは、今メインで使っているPRESONUS StudioOneです。動作が軽いのがすごく気に入っていて、ストレスがありません。僕は最上位グレードのStudio One Professionalを使っていますが、フリーで使えるStudio One Primeというエントリー向けもあるので、試しに使ってみると面白いと思います。
松隈サンはどうやって曲作りしているの?
ふとした瞬間に“メロディが降ってくる”とおっしゃる音楽家の方も多いですよね。でも、僕は降ってきたことが無いです(笑)。多分、降ってくるのを待っていたら半年くらい曲が出来上がらない気がします。なので、“曲を作る”という明確な目標を持って作業に入ります。曲の頭からワンコーラス(イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ)をヘボくてもいいから完成させてみるんです。
例えばAメロまで作って途中でやめてしまうことってよくあると思うんです。僕も“サビが思い付かないから今度にしよう”と放置したものがたくさんあったのですが、そこから良い曲に発展した試しがありません。大抵その楽曲ファイルは捨ててしまうか、もう二度と開かずにパソコンの隅で忘れ去られてしまうんですよね。なので無理矢理でもワンコーラス作って、一つの作品としてしっかりと保存してください。そして、このやり方を何百曲も繰り返してほしい。恐らく100曲目くらいまでは大した曲はできないと思います。初心者だから当たり前です。でもそこで悩んでいても仕方が無い。とにかく“1曲作る”ということを繰り返していくことによって、自分がどんどん成長していくのです。
このときに絶対やってほしいのが、楽曲ファイルに規則性のある名前を付けておくこと。おすすめは、曲の通し番号と仮タイトルを組み合わせるやり方です。僕の場合は、“M-001”“M-002”という通し番号を頭に付けます。“M~”というのはミュージックの意味もありますし、松隈の“M”でもあるので(僕の音楽集団=SCRAMBLESのメンバー内で認識できるように)、皆さんは好きなアルファベットを付けましょう。その後ろの通し番号は3桁は用意しておきたいですね。ちなみに僕は今“M-900”台まで来ています。こうやってナンバリングしておくと探しやすくなるし、後で聴き比べると数字が多くなっていくにつれて確実に熟練度が上がっているのが分かります!
仮タイトルは「鼻水」でも何でもいいですし、後で変えても大丈夫です。ただし曲の世界観を思い出せるものにしてください。「速い曲」とか「ギターから始まる曲」とかは説明であって感情が込められていないので、僕は反対です。「頼むから前貼りして!」とか(笑)、衝撃的なタイトルを付けておいた方がどんな曲か思い出しやすいし、何より愛着がわきます。
人に聴かせるときも「ブルー・スカイ」などのありきたりなタイトルより「頼むから前貼りして!」の方が気になるじゃないですか(笑)。
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