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原真人 × AUSTRIAN AUDIO OC818 / OC18 〜ウィーンから新風をもたらすマイク・ブランド【Vol.10】

 2017年に創設されたAUSTRIAN AUDIO。“ウィーンでの製造”にこだわったコンデンサー・マイクやモニター・ヘッドフォンを手掛け、前者は現在、2機種をそろえている。専用プラグインPolarDesignerで録音後に指向性などを調整できるデュアル・カプセル・モデルOC818と単一指向性のOC18だ。その両機種をサウンド・エンジニアの原真人氏に試していただき、インプレッションを語ってもらった。

Photo:Hiroki Obara Cooperation:マジコンスタジオ(仮)

2機種ともモダンなコンデンサー・マイクでは個人的に最高峰
何に立ててもレスポンスが良くピーキーにならないんです

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原真人【Biography】スパーブを経て2005年よりフリーのレコーディング・エンジニアに。大森靖子、細野晴臣、カーネーション、古川麦、World Standardなど数多くのアーティストの作品を手掛ける

素直に録れるから処理のしやすさにつながる

 どちらも久々に“本当に欲しいな”と思ったマイクです。ドラムのトップやマリンバ、ビブラフォン、バイオリン+チェロ、ボーカルに試してみて、どんなソースにも対応できそうだなと。“新時代のNEUMANN U87”という印象です。U87も万能型だと思いますが、古いマイクは総じてアナログ・テープを見越して設計されているようで、DAWと併用したときに高域が少し耳に痛く聴こえたり、周波数の凹凸が気になったりします。だからコンデンサー・マイクでは、DAWに自然な音で録れるモダンなモデルの方が好みなんですけど、その最高峰がAUSTRIAN AUDIOではないかと。

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写真左の黒のマイクはOC18(99,000円前後)。右のシャンパン・ゴールドの機種はOC818(143,000円前後/1本)で、ペアのセットもラインナップ(280,500円前後)。なお、どちらもオープン・プライス(記載の価格は市場予想価格)だ

 特筆すべき点は、何に立ててもレスポンスが良いところ。マイクによっては、大音量のソースには向くけれど弱音ではピークが目立ったり、その逆の結果になったりするんですが、AUSTRIAN AUDIOのマイクなら弱い音も強い音もとにかく素直に奇麗に、ワイド・レンジで収められると思います。例えば、ウィスパー・ボイスなどは倍音が少ないので低域がボワついたり、破裂音が混ざると局所的に痛くなりがちだったりしますが、そういうのが全く無いんです。

 

 僕はミックスでサチュレーションをよく使うので、まんべんなくひずませられる点でもAUSTRIAN AUDIOのマイクはありがたい。録り音がピーキーだと、意図しない部分が耳障りになったりしますからね。そして素直に録れるということは、EQやコンプのかけやすさにもつながると思います。

 

 2機種の違いについては、わずかな差ですけどレンジの広さはOC818、パワー感はOC18に分がある印象。後述する通り、OC818はプロにとってもクリエイティブに使えるでしょうし、OC18は宅録にはやや高めかもしれませんが、何を録ってもスキ無しの万能マイクになるのではと思います。

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角銅真実のマリンバ録音の様子。マイキングは原氏によるもので、L/RにOC818のペア、中央にOC18を設置している

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あだち麗三郎のドラムのトップには、OC818をペアで設置した

リボン・マイクに代わる選択肢となり得る

 僕は普段からリボン・マイクをよく使うんです。ピーキーになりにくく、双指向性だから背面側の響きまで含む自然な音が得られるからですが、当然ながら正面の音と響きのバランスを録音後に調整することはできません。ですがOC818とPolarDesignerを併用すれば、それを後から変えられます。要領としては、前面/背面のどちらのダイアフラムを大きく出すか、指向性で調整するというもの。各ダイアフラムは同じ位置なので位相がズレないし、リボン・マイクのようなロール・オフも無くワイド・レンジに収音できます。ゲインの低さに悩まされることもないので、個人的には願ったり叶ったり。XY方式で立てたりしても面白そうですが、新しく出たStereoCreator(無償プラグイン)で“XYシミュレーション”を試してみるのもよいでしょう。

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Mac/Windows対応プラグインPolarDesigner(無償)。ステレオ・チャンネルに立ち上げ、最大5バンドで指向性や音量を調整した後、モノラルで出力する。原氏は今回、ビブラフォンなどの録り音にシングル・バンドで使用し、指向性を変化させることで直接音と響きのバランスをコントロールしたという

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