2017年に創設されたAUSTRIAN AUDIO。元AKGのスタッフを核とし、ウィーン製のハンドビルド・カプセルを用いたコンデンサー・マイクなど、高品位な製品を追求している。そのコンデンサー・マイクは現在、指向性可変のOC818と単一指向性のOC18をラインナップ。今回は、レコーディング・エンジニア中村公輔氏がSTUDIO CRUSOEでのセッションに両機種を持ち込み、ドラムやベース、アコースティック・ギターの録音に試してくれた。所感を語っていただこう。
Photo:Hiroki Obara
ここまで癖が無くて万能に近いマイクも珍しいです
次の世代のベーシックになり得ると思いますね
自宅録音にも向きそうな周波数特性
OC818の音は、次の世代のベーシックになり得る気がします。最初に印象的だったのは高域の出方で、そこまで抜けてこないNEUMANN U87とブライトなAKG C414の中間くらいという感じ。C414は、もともとアナログ・テープによる高域のロスを考慮して明るく設計されていたと思うので、それをハード・ディスク時代に向けてリファインしたようなイメージがOC818にはあります。質感もモダンで、C414と比べてもひずみ(ザラつき)が少ない。とは言えAUDIO-TECHNICA AT5040ほどはツルツルしておらず、もうちょっと味があります。言うなれば、ひずみのきめが細かい感じ。それにより定番的なマイクに比べると若干の奥行きが出ますし、空気感があって奇麗な音という印象です。これは低ノイズや描写力の高さにも通じる部分だと思いますね。
低域についてはU87のような膨らみが無く、宅録にも合いそう。自宅では定在波による膨らみが出やすいので、OC818なら太くなり過ぎず扱いやすい音を得られるでしょう。
今回チェックしたソースに関しては、どれも至極ナチュラルに収められました。1本所有しておけばいろいろなものに使えるでしょうし、場合によってはOC818だけでOKかもしれません。ここまで癖が無く万能に近いマイクも珍しく、プロジェクト・スタジオなどがC414的位置付けで導入すれば、用途の広さも手伝って重宝するのではないでしょうか。併せて試したOC18にも同じ印象を持ちました。
録音後に定位へ“にじみ”を与えられる
OC818がOC18と大きく違うのは、無償プラグインPolarDesignerを使って録音後に指向性などを変えられる点です。しかも連続可変なので、例えば単一指向から少しだけ無指向に寄せるような調整も可能。ステレオ・イメージャーやリバーブよりもナチュラルに定位へ“にじみ”を与えられます。あたかも単一指向のマイク+無指向のマイクで録音してバランスを取ったかのようなサウンドが得られるのです。定位がはっきりし過ぎることへの抵抗感というのは多かれ少なかれ誰にでもあると思うので、後からにじみ具合を操れるのには新しい可能性を感じますね。
また、録り音のイメージが固まっていない段階で録音に臨む場合もあるでしょうから、ミックス時にオケを聴きながら指向性を変えられるのは便利です。そしてマルチバンド処理まで行えるため、例えばソースの主要な帯域は単一指向にしておき、超高域だけ無指向や双指向にすることで、迫力と空気感を兼ね備えた音が得られます。帯域ごとに処理しても、やはり自然なのが魅力ですね。
AUSTRIAN AUDIO OC818 / OC18 製品情報
AUSTRIAN AUDIO OC818 / OC18
オープン・プライス
(市場予想価格:130,000円前後/OC818、90,000円前後/OC18)
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