星野誠 × AUSTRIAN AUDIO OC818 / OC18 〜ウィーンから新風をもたらすマイク・ブランド【Vol.7】

 2017年に創設されたAUSTRIAN AUDIO。“ウィーンでの製造”にこだわったコンデンサー・マイクやモニター・ヘッドフォンを手掛け、前者は現在、2機種をそろえている。専用プラグインPolarDesignerで録音後に指向性などを調整できるデュアル・ダイアフラム・モデルOC818と単一指向性のOC18だ。レコーディング・エンジニア星野誠氏にチェックしていただき、魅力を探ってもらった。

Photo:Hiroki Obara 取材協力:Volta Studio

かつて体験したことのない新しい音色変化が得られるので
音作りに対するイマジネーションが広がります

f:id:rittor_snrec:20210430195513j:plain

【Biography】ビクタースタジオを経てフリーランスで活動するレコーディング・エンジニア。クラムボンの楽曲を多数手掛けたことで知られ、近年もsumika、FLYING KIDS、竹内アンナ、the chef cooks me、toconomaなど一線のアーティストに携わる。

楽器の量感を損なうことなく共鳴を調整できる

 一昨年くらいにエンジニアの森元浩二.さんが“ベース・アンプに使うと良いよ”と、OC818を薦めてくださって。試してみたところ、ひずみ感が無くフラットで、ワイド・レンジかつ何かを欠いた感じのしない音だなと。優秀なマイクだと思う反面、無個性にも感じたのですが、PolarDesignerでできることの奥深さに気付いてからは俄然興味が湧きました。

 

 AUSTRIAN AUDIOの代理店エムアイセブンジャパンのWebサイトに、森元さんがOC818とOC18で録音し、ミックスを行った無償のDAWプロジェクトが上がっていて、その中のPolarDesignerを触ってみたんです。最も驚いたのは、ドラム・トップのOC818の指向性を変えていくと、キックやタムの聴こえ方が大きく変化すること。キックの余韻とタムの共鳴が打ち消し合って聴こえなくなったり、逆に響きが見えてきたりもするんです。EQで共鳴をカットすると量感まで減ってしまいがちですが、PolarDesignerだと量感を保ちつつ共鳴を調整できるのが新しいと思いました。

 

 今回は、まずピアノにOC818をペアで立ててチェック。僕はオンとオフの2ペアを用意して打鍵感と響きのバランスを見ながら設置することがあるのですが、両者に距離ができてしまうため、ブレンドしたときに位相感が変わってしまうんです。でもOC818なら同じポイントから輪郭と鳴りの両方をとらえられるので、位相ズレが起こらない。PolarDesignerはシングル・バンドでしか使っていないものの、広い部屋では背面のダイアフラムが豊かな響きを収めるでしょうから、さらなる奥行きの演出ができそうだと想像が広がります。

f:id:rittor_snrec:20210430200047j:plain

ギターの弾き語りでチェックした日のセッティング。シャンパン・ゴールドのマイクがOC818(オープン・プライス:市場予想価格143,000円前後)で、歌とギターのそれぞれに設置。黒いマイクは、歌に立てたOC18(オープン・プライス:市場予想価格99,000円前後)だ

f:id:rittor_snrec:20210430200307j:plain

OC818のリアには背面ダイアフラム用の出力があり、付属のミニXLR/XLRを接続する

録りながら曲作りするセッションにも向きそう

 PolarDesignerは“かぶり”の調整にも有用です。ギターの弾き語りで歌とギターにOC818を1本ずつ立ててみたところ、歌のマイクではギターのかぶりを、ギターのマイクでは歌のかぶりを調整することができました。無指向に近付けるとかぶりが増え、単一指向や超指向だと減るわけです。弾き語りの曲では、声を張ったときに歌が遠く聴こえたり、声の芯が無くなったりすることがあります。ギターに声が大きな音量でかぶり、そのかぶりと歌のマイクに入った声の位相ズレが顕著になるからなのですが、PolarDesignerを使えば張ったときだけギターのマイクを単一指向に寄せられるので、声が遠のいてしまうのを軽減できます。録音後に調整が利くことから、演奏と録音をやりながら曲を組み立てていくようなセッションにも向くかもしれません。

 

 というわけで、今や誰にでも薦められるOC818。一緒に歌へ立てたOC18は同傾向の音質ですが、やや重心が低いというか“のどの鳴り”にピントが合うような印象でした。

f:id:rittor_snrec:20210430195659j:plain

Mac/Windows対応プラグインPolarDesigner(無償)。ステレオ・チャンネルに立ち上げ、最大5バンドで指向性や音量を調整した後、モノラルで出力する。星野氏は今回、シングル・バンドで使い、響きやかぶりをコントロール。指向性だけでなく、近接効果や各帯域のゲイン調整なども行える

AUSTRIAN AUDIO OC818 / OC18 製品情報

www.mi7.co.jp

www.mi7.co.jp

AUSTRIAN AUDIO OC818 / OC18

オープン・プライス

(市場予想価格:143,000円前後/OC818、99,000円前後/OC18)

f:id:rittor_snrec:20200708193422j:plain

 

関連記事

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp