SONICWIREで振り返る2020年の注目ソフト

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ソフト音源やプラグイン・エフェクト、サンプル・パックやシンセ・プリセットを収録するライブラリー、そしてDAWまで、音楽制作にかかわるソフトを総合的に取り扱うダウンロード・ストア=SONICWIRE。10月の時点で取り扱い製品数は15,000以上、サウンド総数は1,150万を超えており、その豊富な品ぞろえからプロの音楽クリエイターにも愛用者が多い。この企画では、運営元であるクリプトン・フューチャー・メディアへの取材を元に、プラグイン・エフェクト/ソフト音源/ライブラリーの3つのカテゴリーにおいて、今年注目度の高かった製品やトレンドをお伝えする。今から11月のブラック・フライデーのセールに向けて準備をしておこう。

 

ダウンロード・ストアSONICWIREの3つの強み

  1. 海外デベロッパー(メーカー)の製品を日本語で検索でき、購入手続きを進めることが可能。シリアルナンバーなど製品の取得に必要な情報は購入時に即時発行される。クリプトン・フューチャー・メディアが輸入販売を手掛けるソフト音源やプラグイン・エフェクトは、購入者に対して日本語のインストール・ガイドやマニュアルが提供され、アップデート概要を和訳してお知らせ
  2. 製品に関する問い合わせは、SONICWIREテクニカル・サポートで日本語での対応が可能
  3. 適正な値付けで販売できるよう、毎日必ず為替レートを反映して価格を更新

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Plug-in Effects 〜細部まで感覚的な調整が可能に

EQ感覚で操作できる先進的エフェクト
低域コントロールもより現代的に

 プラグイン・エフェクトでは、サウンドを精細にコントロールできるインテリジェントな製品が目立った。まず紹介したいのはOEKSOUND soothe2。耳障りなレゾナンスを抑えることができるダイナミック・レゾナンス・サプレッサー/ディエッサーだ。ピーキーまたはブーミーなポイントをダイナミックEQで調整するという人は多いだろうが、このsoothe2はレゾナンスのコントロールに特化しているというのがポイント。処理を行う範囲やカットするQ幅に加え、レゾナンスに対する反応の感度やスピードも細かく設定可能だ。また、soft/hardという2つの処理モード、A/B比較、L/RとM/Sの2種類の処理モード、キー・インなども備える。通常のEQ感覚で使えるインターフェースも魅力的だ。soothe2と同じくEQ感覚でトランジェントをコントロールできるspiffも同社からリリースされている。

 

OEKSOUND soothe2

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ダイナミック・レゾナンス・サプレッサー/ディエッサーのOEKSOUND soothe2。EQ感覚でレゾナンスのコントロールが行える

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 SOUNDTHEORY Gullfossも精確なサウンド調整に向いたエフェクト。独自のサウンド分析技術を採用したEQで、人間の聴覚知覚モデルをシミュレートし、明りょうさやバランスを向上させる。TAMEというパラメーターでマスキング成分を抑制し、RECOVERでマスキングされている成分を持ち上げる仕組みで、簡単な操作でサウンドの調整が可能だ。ダイナミクスを維持することができるため、個々のトラックだけでなくマスタリングでの処理にも向く。また、処理帯域も設定可能で、ディエッサーのように使うこともできる。

 

SOUNDTHEORY Gullfoss

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独自のサウンド分析技術を採用するEQのSOUNDTHEORY Gullfoss。マスキングしている/されている成分を調整することで音の明りょうさを高める

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 低域成分のコントロールに特化したLEAPWING AUDIO RootOneも注目度の高いエフェクトの一つだ。同社独自のアルゴリズムによって、音高と位相、ダイナミクスがリアルタイムでトラッキングされ、常に原音に忠実なサブハーモニクスが生成できるとのこと。低域を3つの帯域に任意の周波数で分割でき、各帯域ではゲイン/ダイナミクス/ディケイ/ドライブを自由に設定可能。柔軟に低域成分の加減が行えるのは、現代のトラック作りで重宝されるだろう。指定された帯域の1オクターブ上の倍音を加えられるHARMONICSセクションは、低域再生能力の乏しいスピーカーでも再生可能な低域を生成でき、幅広い音作りに貢献してくれる。

 

LEAPWING AUDIO RootOne

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サブハーモニックを生成できるLEAPWING AUDIO RootOne。同社独自のアルゴリズムで原音に準じたクリアなローエンドを実現する

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よりインタラクティブな効果を生む
多彩な機能を備えたディストーション

 次に紹介するのはディストーション・エフェクトのOUTPUT Thermal。近年は多彩な機能を持ったひずみ系エフェクトが登場しているが、Thermalはその中でも異彩を放つ“インタラクティブ・ディストーション・プラグイン”だ。画面にはOUTPUT独自の大きなXYコントロールを搭載しており、直感的な調整が可能となっている。19種類のディストーション・アルゴリズムを選択でき、コーラスやコンプレッサー、ディレイなど15種類のエフェクトも装備。ウェーブ・フォームやモジュレーション・エンベロープのセクションも備え、前述のXYコントロールと組み合わせたダイナミックなエフェクトを作り出すことができる。

 

OUTPUT Thermal

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インタラクティブ・ディストーション・プラグインのOUTPUT Thermal。XYコントロールや多彩なモジュレーション、内蔵FXで多彩な効果を生み出す

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 そのほか、インテリジェントなエフェクトとしてはAIを使った製品が挙げられる。smart:Compなどを発売しているSONIBLEからはAIを搭載したリバーブのSONIBLE smart : reverbがリリースされた。入力信号に合わせたリバーブをL/R別々に設定することで、より自然な音像を実現している。まだまだ可能性を秘めたAIプラグインたちからも目が離せない。

 

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浅田祐介

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【BIO】1995年にアーティストとしてデビューし、4枚のアルバムを発表。その後CHARAやCrystal Kay、CHEMISTRY、織田裕二、キマグレンらのプロデュースを手掛ける

初心者も海外製品をオンライン導入しやすい

 作曲をしていると知らない間に深夜になっていて、アレンジ段階でちょっと一味……例えば民族楽器のような音色を加えたいなというとき、SONICWIREでは時間を気にせずにソフトウェアを購入できるのが本当に助かります。海外のソフト販売サイトは製品のセレクションに少し癖があったり、楽器の名前が分からないと検索が難しかったりするのですが、SONICWIREでは日本人の感覚で品ぞろえされているので、目的の音色にたどりつくのにストレスが無いのも魅力です。

 

 急きょデモにラップが必要になったときがあったのですが、スタジオへラッパーに来てもらう時間が無く、ふとSONICWIREで検索したところアカペラのラップ素材がすぐ見つかり、無事デモにラップを付け足して提出できたことがありました。また、最近TOONTRACKの音源を使うことが多いのですが、Superior Drummer 3の拡張音源も本国リリースとほぼ同時に販売されるので、最新の音源をすぐ使えるのもポイントです。

 

 TOONTRACKで言うと、今年はEZ Bassを発売と同時に導入しました。SONICWIREでは、インストールや使いこなしの部分での疑問に日本語でサポートが受けられるのも大きなメリットだと思います。そのおかげもあり、EZ Bassは導入したその日のデモ制作で使うことができました。まるで本物のベーシストを自宅スタジオに呼んで、いろいろなジャンルのベース・パターンを注文しながら作業しているようで、“ついに音源もここまできたか!”と驚きましたね。

 

 EZ Bassをはじめ、最近の音源は機能が非常に多いです。SONICWIREには日本語の動画などが用意されており、作業の効率を上げるのに非常に助かっていますね。また困ったときはよろしくお願いします!

 

Software Instruments 〜より手軽かつリアルなサウンドを追求

プレイヤーが弾いているような
リアル感を持った音源

 ソフト音源では、XFER RECORDS SerumVENGEANCE SOUND Avengerのシンセ二大巨塔が今年も変わらず人気となった。両者ともEDMで多用されるシンセだが、幅広い音作りが可能なこともあり、Jポップや劇伴などの分野でも活躍している。豊富なプリセットもSONICWIREで取り扱っているので、まだ手に入れていない人はぜひ試してみよう。

 

 今年リリースされた音源からは楽器系をピックアップしてみたい。Superior Drummer 3などを手掛けるTOONTRACKのベース音源、EZ Bassだ。モダン/ビンテージという2種類の5弦ベースを収録しており、音源の画面上にあるピアノロールでMIDIノートの打ち込みが可能。細かなアーティキュレーションを設定したり、曲展開のアレンジが行える。フレーズのパターンも数多く内蔵するほか、ピアノやドラムのMIDIデータに合わせたベース・パターンを自動生成する機能、オーディオを読み込んでMIDIノートへ変換する機能なども備え、誰でも優れたクオリティのベース・トラックを作ることができる音源となっている。

 

TOONTRACK EZ Bass

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2種類の5弦ベースのサウンドを収録するTOONTRACK EZ Bass。ベース・フレーズの作成が簡単にできる機能を豊富に備えているのが特徴だ

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 さまざまなギター音源を開発しているAMPLE SOUNDには、GIBSON SGのサウンドを再現するAmple Guitar VC IIIが加わった。元となったのは1961年製のSGで、ネックとブリッジのピックアップのサウンドを0〜22フレットのすべてで丁寧にサンプリングしている。アンプ・シミュレーターを搭載しており、5種類のアンプ・ヘッド、7種類のキャビネット、8種類のマイクを組み合わせ可能だ。Ample GuitarでおなじみのStrummerモードももちろん内蔵し、8種類まで登録できるリズム・パターンでアルペジオやストロークを交えた演奏ができる。リフ/フレーズを作成できるRifferパネルや、Guitar Proフォーマットのタブ譜を読み込み/演奏できるTab Playerパネルも内蔵。多機能なギター音源となっている。このAmple Guitar VC IIIを含む、Ample Guitar13種類をセットにしたバンドルも発売中だ。

 

AMPLE SOUND Ample Guitar VC III

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ギター音源のAMPLE SOUND Ample Guitarシリーズに新たに加わったAmple Guitar VC III。1961年製GIBSON SGをサンプリングしている

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初心者も導入しやすい
高品質なオーケストラ音源が登場

 次は管弦楽器系を見ていこう。オーケストラ音源というと扱いが難しいというイメージを持っている人もいると思うが、お薦めしたいのがSPITFIRE AUDIO BBC Symphony Orchestra Discover。35種類の楽器と47種類のテクニックを200MBというサイズに落とし込んだ音源で、初心者も使いやすいシンプルなユーザー・インターフェースも魅力。上位版となるCoreやProfessionalというエディションも用意されている。

 

 SPITFIRE AUDIOと同じく多数のオーケストラ音源を手掛けるBEST SERVICEからは、総合オーケストラ音源のThe Orchestra Complete 2が登場した。総勢80名もの奏者からなるオーケストラ・ライブラリーに加え、特殊なアーティキュレーションとモンゴルの民族楽器モリンホールのアンサンブルを収録するライブラリー、パワフルなブラスと神秘的なオルガンを収めたライブラリーをまとめたバンドルになっている。5種類のサウンドを選べるインストゥルメント・スロットがあり、それぞれ独立したアルペジエイターとベロシティ・エンベロープを備えているので、コードを演奏するだけでも本格的なフレーズを生み出すことが可能だ。3つのカテゴリーに分かれた計150のプリセットを備えているので、イメージしたオーケストラ・サウンドにたどり着くのも容易だろう。

 

BEST SERVICE The Orchestra Complete 2

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BEST SERVICE The Orchestra Complete 2は、5つのインストゥルメント・スロットとアルペジエイターにより、オーケストラのフレーズ作成が簡単にできるようになっている

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Library 〜便利な検索機能で探し方に近道を

多彩なジャンルと形式で
クリエイターの創作をサポート

 オーディオのワンショットやループを収録するものから、ソフト・サンプラーに読み込むパッチ、シンセ用のプリセット、MIDIパターン集など、さまざまな形式のライブラリーを販売しているのもSONICWIREの特徴。“R&Bのボーカル・サンプルが欲しい”“民族楽器の音源を使いたい”など、多様なニーズに対応できる膨大なラインナップを誇っている。音楽ジャンルやメーカー、楽器、フォーマット、価格帯などでの絞り込み検索が優れているので、目的のサウンドをスムーズに見つけられる。

 

 各製品ページでは、そのサウンドを使ったデモ・ソングが再生可能。また、デモを聴きながら他製品のページを閲覧することもできる。また、再生したデモはプレイリストとして自動的に蓄積されていく。そのようにSONICWIREのWebサイトでは、お気に入りの製品を見つける手助けとなる工夫が凝らされている。

 

 音楽制作者にとって欠かせない注目ソフトウェアをSONICWIREで振り返ってみたが、いかがだっただろうか? 11月はブラック・フライデー・セールも予定されているので、今から気になる製品をぜひチェックしておこう。

 

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今年にリリースされ、トップ・セラーとなっているSAMPLE TOOLS BY CR2 Vocal RNB。フル尺の女性ボーカル素材のほか、楽器のループも収録している

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NATIVE INSTRUMENTS Kontakt 5用尺八音源、IMPACT SOUNDWORKS Ventus Ethnic Winds - Shakuhachi。SONICWIREではこういった民族楽器も取りそろえている

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鈴木光人

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【BIO】スクウェア・エニックス所属の作曲家。『ファイナルファンタジー VII リメイク』などのゲームのみならず、TVアニメの楽曲や舞台音楽の制作など、多方面で才能を発揮している

インストールまでの手間が少ないのがうれしい

 日本でいち早くSPITFIRE AUDIOの販売を始めたSONICWIRE。ソフトの詳細を知りたくてコンタクトを取ると速攻で返信があり、“なんて反応が速いんだ!”と驚いたものです。SONICWIREが取り扱っているソフトのほとんどは、タイムラグを感じることなく瞬時にダウンロード・コードが送られてきて、ソフトをインストールするまでの手間がとにかく少ないのもうれしい点。また、製品ページの“現場直結型”ブログもつい読んでしまう実践的内容になっていて、常にアップデートされる情報とともに普段から活用しています。

 

 今年購入した個人的ヒット・ソフトは、ディストーション系エフェクトのOUTPUT Thermal。ディストーションをメインに、そのほかのエフェクトを組み合わせた複合型プラグインです。特筆すべきは画面中央のXYコントロールを動かすことにより、パラメーターの大胆な変化がリアルタイムで可能なこと。例えば、サイド・チェイン効果とともにフィルターが閉じるようなサウンドや、シェイパーのパラメーターを動かすことによって生まれるギター・ソロのようなサウンドなど、複数のプラグインを組み合わせて作る効果がとにかく簡単にできます。感覚的には“ひずみを含め新たなフレーズを作り出す効果”と言えば分かりやすいかもしれません。

 

 今年5月にサウンドトラックが発売された『ファイナルファンタジー VII リメイク』の楽曲では、OUTPUT Portalを使ったグラニュラー効果を飛び道具的に取り入れました。OUTPUTの特徴とも言える洗練されたインターフェースは、動かせばすぐに効果が感じられるので、アイディア出しのときに重宝しています。固定概念にとらわれない独創的な発想の製品を数々リリースしているOUTPUTは今後も要チェックです。

 

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