Rock oN Monthly Recommend vol.26〜SOUNDTHEORY Gullfoss & OEKSOUND Soothe2/Spiff

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 注目の製品を取り上げ、Rock oNのショップ・スタッフと製品を扱うメーカー/輸入代理店が語らう本連載。今回のテーマは“インテリジェント系プラグイン・エフェクト”。コントロールしたい要素を自動検出、またはオートで操れるプロセッサーだ。SOUNDTHEORY Gullfoss(EQ)とOEKSOUNDのSoothe2(レゾナンス・サプレッサー)、Spiff(トランジェント・コントローラー)の3つにフォーカスし、Rock oN の伊部友博氏とクリプトン・フューチャー・メディア SONICWIREチームの林有希寛氏および岩出 龍馬氏が意見を交わす。

Photo:Chika Suzuki(except*)

 

SOUNDTHEORY Gullfoss
19,090円

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 マスク成分と被マスク成分を検出し、前者を抑え、後者を持ち上げることで、音の明りょう度を向上させるEQ。処理の内容は膨大なリアルタイム・マルチバンド・イコライジングで、画面上部のTAME(低減)とRECOVER(増幅)の設定を基に“人間の聴感に対して良い音”を作り出す。

REQUIREMENTS
■Mac:OS X 10.9〜10.11/macOS 10.12〜10.15、2GHz以上のINTEL製CPU(2.4GHz以上を推奨)、VST/AU/AAX対応のホスト・アプリケーション
■Windows:Windows 8/10(64ビット)、2GHz以上のSSE対応CPU(マルチコア2.4GHz以上を推奨)、VST/AAX対応のホスト・アプリケーション
■共通:4GB以上のRAM(8GB以上を推奨)

 

●近年は、インテリジェントなプラグイン・エフェクトが台頭していますね。

岩出 簡単に操作できるものもあり、音楽制作ビギナーの方々にも受け入れられているようです。またGullfossのような製品については“人間の力では難しい処理が容易に行える”といった特徴もあります。

 

●GullfossはEQですが、音の明りょうさを損ねるマスキング成分とマスキング“されている”成分の両方をリアルタイムに検出し、イコライジングしていくというユニークな仕様ですね。

Ro伊部 はい。TAMEというパラメーターでマスキング成分を抑制し、RECOVERでマスキングされている成分を持ち上げる仕組みです。どれだけ抑えるか/持ち上げるかは各パラメーターのパーセンテージで決めますが、まずは両方50%にし、そこから調整すればよいと思います。なぜなら、それで大抵“良い音”になるからです。で、例えばギターが激しい曲なら双方のパーセンテージをもう少し上げてみるとか、そういう使い方がお勧めですね。

 

●マスキングを解決するためのEQということは、複数の楽器が重なるステージ、つまりマスターなどでの使用を想定しているのですか?

Ro伊部 そうですね、お勧めはマスターです。トータル処理やマスタリングに自信の無い方でも、ある程度の結果を得られると思います。使うタイミングは、曲作りやミックスを終えた後がお勧め。最初から挿しっぱなしだと、耳が疲れてきたときに高域を抑え過ぎてしまうでしょうし、そうすれば基準があやふやになってきますから。他方、チャンネルで使用する際はインテリジェントなディエッサーとしても機能します。処理したい帯域を範囲選択できるため、耳に付くところをTAMEで抑える要領ですね。

岩出 もしくは、アコースティック・ギターの胴鳴りやダイナミック・マイクの近接効果で膨れた低域などにも有効です。技術的な面に言及しておくと、Gullfossは“聴覚知覚モデル”というアルゴリズムを採用していて、人の耳に心地良く聴こえるようイコライジングを行います。マスキング成分を抑えつつ、埋もれた部分を持ち上げて全帯域を際立たせるので、人間の聴感上、良い結果が得られるわけです。

 

●伊部さんが先ほどおっしゃった“良い音”とは、聴覚知覚モデルに裏付けられたものだったのですね。

Ro伊部 この聴覚知覚モデルというのは、AIではないんですよ。例えるならICのようなもの。ICは膨大な数のトランジスターなどを内包していて、それらが瞬時にさまざまな処理をこなし結果を導くわけですよね。Gullfossも内部でリアルタイムに処理を行っており、その一つ一つをひも解いていくと恐らく何をしているのかが分かるのでしょうけど、あまりに膨大かつ高速なので、ある点では人間業を超えた音作りを可能にする。聴覚知覚モデルの研究には、なんと14年もかけたらしいんです。量子論や微分幾何学など、さまざまな面から数学的にアプローチして完成させたそうですね。

 ちなみにAIというのは、学習によってリファレンスの再現を目指すものです。なので、お手本に似せるのは得意ですが、柔軟性に欠ける部分があります。学習していないことをやらせると想定外の結果が出てきたりするのは、そのためです。一方Gullfossは、マスキング成分を処理していくツールであり、プロのミックスに似せるためのものではないので破たんが起こりにくい。だからソースを選ばないし、個々の素材に特化した処理を行うため結果が似てしまうこともありません。

 

SOUNDTHEORY Soothe2
22,720円(価格は為替相場によって変動)

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 耳に痛いピーク成分などを抑制するためのダイナミック・レゾナンス・サプレッサー。soft/hardという2つのモード、a/b比較、L/RとM/Sの2種類の出力モード、キー・インなどを備える。

REQUIREMENTS
■Mac:OS X 10.10〜10.11/macOS 10.12〜10.15、2GHz以上のINTEL製CPU(2.4GHz以上を推奨)、VST/AU/AAX対応ホスト・アプリケーション
■Windows:Windows 8/10(64ビット)、2GHz以上のSSE対応CPU(マルチコア2.4GHz以上を推奨)、VST/AAX対応ホスト・アプリケーション
■共通:4GB以上のRAM(8GB以上を推奨)

 

●特定の帯域を検出して抑える、という点ではSoothe2も同様なのかと思いますが、いかがでしょう?

 Gullfossが読むのはマスキングもしくは被マスキング成分ですが、Soothe2はレゾナンス、つまりピーキーな部分やブーミーな低音に作用するため評価基準が違います。

Ro伊部 “耳に付く音をリアルタイムに追いかけて抑える”というのはGullfossをチャンネル単体に使うときと似ていますが、Soothe2が検出する“耳に付く音”は、帯域的により狭いものだと思います。

 

●いわゆるピーク成分ですね。

Ro伊部 はい。Soothe2は処理範囲やカットのQ幅を設定できたりと便利ですが、どのくらいの深さでかけるのが適切か?といった判断はユーザーに委ねられています。プロのエンジニアであれば使いこなすのにそう時間はかからないでしょうが、ビギナーはプリセットから慣れていくのが近道でしょう。ソースに合わせて数多く用意されていて、アコギやエレキギター、ベース、ドラム、ピアノ、シンセ、オーケストラ、ボーカル、マスターなどのカテゴリーに分かれています。試してみると“この楽器は、やっぱりこの帯域がピーキーなんだな”というのが分かりますね。そして同じOEKSOUNDでは、Spiffが面白い。最大5バンドでトランジェントをコントロールできるプロセッサーで、sensitivityというパラメーターで検出するトランジェントの量を設定します。これはダンス・ミュージックのクリエイターにぜひ使っていただきたいですね。とりわけドラムに使うと、めちゃくちゃ音が良くなります。

 

SOUNDTHEORY Spiff
17,010円(価格は為替相場によって変動)

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 マルチバンドのトランジェント・コントロール用プロセッサー。画面左のsensitivityで検出するトランジェントの量を決め、各バンドのsens(ゲイン)やQ幅で増減を行う。M/S出力モードなども搭載。

REQUIREMENTS
■Mac:Mac OS X 10.7/OS X 10.8〜10.11/macOS 10.12〜10.15、VST/AU/AAX対応のホスト・アプリケーション
■Windows:Windows 8/10(32ビット)、VST/AAX対応のホスト・アプリケーション
■共通:OpenGL 2.0に対応したグラフィックス環境

 

●傾向としては、EDM以降のモダンなサウンドにマッチするようなキャラクターですか?

Ro伊部 現代的なサウンドはもちろん、オールドスクールなものにも対応すると思います。例えば1990年代のハウスやテクノって、ドラムの中域が濃密で“音の塊感”がすごいじゃないですか? そういう音も作れてしまうんです。

 キックのアタック感なども自在にコントロールできるので、個々のチャンネルに挿して積極的な音作りを行うのがよいと思います。

Ro伊部 個人的には、効果の深さを決めるdepthを最大にして使うのがお勧めです。ただ、そうするとマスターでクリップしやすくなるのでリミッターを入れておいた方がいい……と言うか、マスターでのリミッティングを前提にdepth全開で使うのが面白いと思います。僕は、WAVES L3と併用したら非常に良い結果になりました。アナログ機材では、少しひずんだときに一番おいしいサチュレーションが得られるじゃないですか? SpiffやL3はデジタル・プロセッサーですが、アナログ・サチュレーションの感覚で突っ込み気味に使うんです。例えば中域にガッツが欲しいと思ったら、目的の帯域をdepth全開でブーストしてもいいでしょう。Spiff+リミッターで得られる効果は、今のところ唯一無二だと感じます。

 

●非常にワイルドな使い方ですね。

岩出 もちろん、もっとプレーンな使い方もできます(笑)。

Ro伊部 本来は繊細な処理に使うものでしょうしね。

岩出 例えばリズミックなピアノ・リフの“打鍵感”を強調したい場合、高域の方へ強めにかけると、かなり際立って聴こえてきます。同様の音作りをコンプとEQでやろうとすれば、結構な技量が求められるでしょう。

Ro伊部 パーカッションを入れてみたけど、埋もれてしまって全体のノリが遅く聴こえる……みたいな場合には、パーカッションの輪郭が立つようにかけることでグルーブを補正することができますね。

 

●depth付近のグローバル・コントロールを見てみると、decay lf/hfなど聞き慣れない名称のパラメーターが配置されています。

Ro伊部 まず、Spiffにはdecayというパラメーターがあって、各トランジェントのブースト/カットがどのくらい持続するかを設定できます。次にdecay lf/hfを12時の位置にしておくと、全帯域でdecayの処理時間がイコールになりますが、左に回せば低域の処理時間が高域よりも伸びていき、右へ回したときにはその逆となります。例えば低域のトランジェントをブーストした後、右へ回していくとボトムが引き締まり、なおかつ高域の存在感を加えることが可能です。パラメーターの中では、mixも便利。原音とエフェクト音のバランスを調整できるため、ものすごくアタッキーなサウンドを原音にブレンドしていくパラレル・コンプのような処理にも対応します。また“トランジェントを強調したけど、やり過ぎたかな?”といった場合に、原音の割合を高めるのも簡単。出力レベルのtrimと併用すれば、後段に挿したコンプなどがインプット・ゲインを持たない場合も、最適な信号を送出できます。

 

●ここまではチャンネルでの使用を想定したお話でしたが、バスやマスターにも使えるのでしょうか?

Ro伊部 ドラムやベースのグループ・バスにかけるのは良いと思います。かなり良い効果が得られるでしょう。プリセットもいろいろと収録されていて、ブースト系のものなら何も考えずに挿すだけで音が前に出てくるはず。本当に、魔法でもかけたように格好良い音になるんですよ。マスターで使用する際には、バランスが崩れないよう慎重に設定すべきですが、後段にGullfossを入れて調整すると、ガッツとブライトネスを兼ね備えた2ミックスができるかもしれません。

 

●今回ご紹介いただいたようなインテリジェント系プラグインは、今後ますます盛り上がっていきそうですか?

 ここ10年ほどで誕生した新興ブランドが互いに影響を及ぼし合い、より洗練された製品を送り出していくと思います。実際に彼らは、The NAMM showなどで見かけても非常に仲良さそうにしているんですよ。

Ro伊部 こういうプラグインに対して“音が平均化されて、みんな同じになるんじゃないか”という危惧もあったかと思いますが、そんなことは無さそうですよね。

岩出 AI系のプラグインのように“お手本に寄せていく”というものではないので、今までに無かった新しいエフェクトという観点で受け入れてもらえたらと思っています。それぞれ作用するポイントは明確ですし、どこをどう調整するかというのは、ミックスする人の考え次第ですからね。

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Rock oN の伊部友博氏(写真左)とクリプトン・フューチャー・メディア SONICWIREチームの林有希寛氏(同中央)、岩出龍馬氏(同右)

Rock oN NEWS

 大改修を終えたRock oN渋谷店は“作りたい音を自分で作れる”新しいスタイルのショップとして生まれ変わっています。店内のお好みの機材を持ち運び、自由に組み合わせて欲しい音をご自身で作って試すことが可能となっています。

Rock oN Shibuya:☎︎03-3477-1756 営業時間12:00-19:00(日曜日臨時定休)
Rock oN Umeda:☎︎06-6131-3077 営業時間12:00-19:00(定休日:日曜日、祝日)
※営業時間及び営業日は変更になる場合がございます

www.miroc.co.jp

 

製品情報

sonicwire.com

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