Rock oN Monthly Recommend vol.25〜ADAM AUDIO T Series

ADAM AUDIO T8V、T7V、T5V

 注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店が語り合う本連載。今回はドイツ・ベルリンを拠点とするスピーカー・ブランド、ADAM AUDIOのTシリーズを紹介する。2018年にリリースされたシリーズで、これまでプロ・オーディオ向けパワード・モニターを開発してきた同社の技術を受け継ぎつつも、価格を抑えることに成功。プロだけでなく、アマチュアや音楽制作初心者にとっても導入しやすいシリーズとして評価されている。今年5月には8インチ・モデルのT8Vもラインナップに加わり、自宅制作環境からスタジオまでカバーできるラインナップとなった。このTシリーズについて、代理店を務めるソニックエージェンシーの小山田耕平氏、メディア・インテグレーションの福山智宏氏に語っていただいた。

Photo:Hiroki Obara(メイン・カット) 

ADAM AUDIO T Series
オープン・プライス/ペア(市場予想価格:60,000円前後/T8V、55,000円前後/T7V、46,200円前後/T5V)

 

●スピーカー・メーカーとして有名なADAM AUDIOですが、あらためてその成り立ちについて教えてください。

小山田 1999 年にドイツのベルリンで設立されたメーカーです。ADAM AUDIOを象徴するツィーターのARTがありますが、その技術を生かしたプロ向けのスピーカーを作ることを目標にスタートしています。当時は今と比べるとパワード・モニター・スピーカーはまだ普及していませんでしたが、ADAM AUDIOのS3Aというスピーカーがエンジニアを中心に人気を博したことで、同社の知名度を上げたとともに、世の中へのパワード・モニター・スピーカーの普及を進めたと言えるでしょう。

ADAM AUDIOスピーカーの特徴と言えるARTツィーター。折りたたまれたダイアフラムにより、広い表面積を確保。ダイナミック・レンジを広げるとともに、効率良く空気を振動せることでトランジェントが向上し、クリアな高域再生を実現するという。ARTツィーターはSシリーズのS-ART、AXシリーズのX-ART、TシリーズのU-ARTの3種類をラインナップ。S-ARTは、X-ARTと同素材/同構造ながらも、より厳しい選定により個体差を少なくしたモデルだという。TシリーズはS-ART/X-ARTと同構造ながら、素材を変えることでスピーカーの価格を抑えている。また、SシリーズとTシリーズには新開発のHPSウェーブ・ガイドを搭載。広いスウィート・スポットを実現している

●ARTツィーターにはどのような技術が使われているのでしょうか?

小山田 ARTツィーターの元となったのは、オスカー・ハイル博士という方の技術です。見ていただくと分かる通り、折り畳まれたリボンのような形状になっています。多くのスピーカーではドーム型やコーン型のツィーターが搭載されていますが、それは前後のピストン運動で空気を動かして音を届けるという構造です。ARTツィーターは前後に動くのではなく、折り畳まれたヒダがアコーディオンのように収縮することで空気の出入りを引き起こし、それによって音を再生しています。従来のドーム型などに比べると4倍近くの効率で空気を振動することができるので、音の立ち上がりが速く、トランジェントの確認しやすいサウンドになるのです。

MI福山 お客様から特に言われるのは、高域が聴きやすいということです。高域が聴きやすいと、楽器のディテールがとらえやすく、EQなどのミキシング処理が行いやすくなります。画角が広がったようなイメージになるんです。

 

●ARTツィーターには幾つかの種類がありますね。

小山田 AXシリーズに搭載されているX-ARTツィーター、上位機種のSシリーズのS-ARTツィーター、今回紹介しているTシリーズのU-ARTツィーターがあります。X-ARTツィーターとS-ARTツィーターは、使われている素材は全く同じものなのですが、あえて違う名前を付けている理由は、選定精度の違いがあるためです。物理的な製品はどうしても個体差が発生してくるものですが、どのメーカーも選定基準を設けていると思います。ADAM AUDIOもそれに則って判断しているのですが、S-ARTツィーターはX-ARTツィーターよりも厳しく選定されており、個体差がより少なくなっているのです。U-ARTツィーターは搭載されるTシリーズが価格面を意識して開発が進められたこともあり、ダイアフラムの面積がコンパクトになっていたり、マグネットのサイズも変更されているなど、S-ART/X-ARTツィーターとは異なる仕様で製造されています。ただ、動作原理においては上位モデルとの違いはありません。

MI福山 各社がいろいろなスピーカーを出している中で、リボン・ツィーターを採用しているものは多くなく、ADAM AUDIOのサウンドを特徴付けている理由の一つですね。

 

●ツィーター周りのウェーブ・ガイドもシリーズによって違います。

小山田 Sシリーズから新開発のHPSウェーブ・ガイドが搭載されるようになりました。その際にかなり研究が行われ、ARTツィーターとの相性を考慮され、何パターンもの試作品開発を経て、現在のベストな形状となっています。Sシリーズのウェーブ・ガイドはアルミ削り出しで作っており、非常に優れた放射特性を実現しました。縦が狭く、横に広い特性になっています。アルミ削り出しではありませんがTシリーズにも採用されており、Sシリーズでのウェーブ・ガイド研究の資産が既にあったので、コストを抑えて製作できました。

MI福山 高域が聴こえやすくなることで、指向性も良くなります。全体的に解像度が高いサウンドになっていますね。

 

●指向性の良さや奥行きの見えやすさからエンジニアの方に使われている印象ですが、実際にどういう方が購入されていますか?

MI福山 AXシリーズとSシリーズはエンジニアリングをされる方を中心に購入いただいています。Tシリーズが出てからは購入しやすい価格帯となり、ユーザーの裾野が広がったように感じますね。実際、学生の方がADAM AUDIOを候補として店頭へ試聴しに来られたことがあります。自宅で制作するクリエイターにもお薦めできるシリーズです。

 

●ADAM AUDIOというとやはりプロ向けであり、高価格帯モデルのイメージがあります。低価格を実現したTシリーズはどのような経緯で開発されたのでしょうか?

小山田 実際に音楽制作を始める方は最初から高いモニター・スピーカーを購入されることはあまりないと思います。スピーカーだけでなく、そのほかの機材も購入しなければならないですからコストを気にするのは仕方がありません。そういった初心者の方を含めて、より多くの人にADAM AUDIOが考える理想的なモニター音を体感してもらうため、価格帯を下げた製品を届けたいという挑戦から生まれました。素材の選定などでコストを抑えつつも、上位機種の技術を受け継いだADAM AUDIOらしいサウンドを実現しています。

 

●確かに、ほかのシリーズ同様の音の広がり、スウィート・スポットの広さを感じました。

小山田 U-ARTツィーターとウェーブ・ガイドの組み合わせによる効果です。両者の相性がしっかりと研究された結果ですね。

MI福山 シビアなスピーカーだと、スウィート・スポットがかなり狭い場合があります。そうなると聴き疲れしやすいんですが、Tシリーズは聴き心地も良く、疲れにくいと思います。

小山田 制作した作品がちゃんとした鳴りを実現できるのか、というのは開発において非常に重要視していたようです。Tシリーズでしっかりとしたバランスのミックスを作ることができれば、AXシリーズやSシリーズで聴いた場合でも音の印象が大きく変わらないようになっています。もちろんルーム・アコースティックの影響などは免れませんが、フラットな特性でバランスを保った制作が行えるスピーカーです。上位機種では、さらに音のディテールの見えやすさや奥行きの表現が優れてくるので、より細かい部分の確認ができると思います。

 

●Tシリーズには8インチ・ウーファーのT8Vが加わりましたが、日本では大きなスピーカーを置けるスペースは限られてくると思います。やはり海外の需要に応えて開発されたのですか?

小山田 確かに、日本のマーケットを考えた場合、大きい口径のスピーカーの需要は小型モデルと比べると高くはありません。一方、海外の場合は大きいサウンドが出て、より低域が再生できるスピーカーを好む方は多いようです。これまでのシリーズも大きな口径のモデルは発売されてきたので、その流れを受けてT8Vが開発されています。

MI福山 日本であればやはりレコーディング・スタジオでの需要が大きいと思います。スウィート・スポットが広く、音量が出せて低域までしっかり見えるというスピーカーはスタジオに必要となってきますから。メイン・スピーカーでなくとも、サブスピーカーとして導入するのも良いかもしれません。

小山田 今は新型コロナ・ウィルスの影響もあり、設備投資にお金をかけることが難しくなっているという話も聞いています。そういう中で、低価格でもしっかりと使えるモニター・スピ
ーカーとして候補に入れてもらえるとうれしいですね。スピーカーの購入にあたってRock oN 店頭で試聴ができますが、店頭と自宅では聴こえ方に違いが生まれると思います。試聴にあたって何かアドバイスなどはしていますか?

MI福山 Rock oN 店内のスタジオはかなり吸音をしているので、購入して自宅環境で聴くと低域が強めに聴こえるということはよく言われます。なので、“自宅だともっとパワフルに感じますよ”というアドバイスはしていますね。しかし、初心者の方にとっては試聴で比較するのは難しいことかもしれません。

小山田 初心者のころはまだ知識もないですからね。ADAM AUDIOでは、そういった初心者の方に向けたレクチャー系動画をYouTubeでアップしています。スピーカーの選び方や制作環境の整え方など、素朴な疑問に答えるような内容です。今は日本語字幕でも再生できるよう準備をしていますので、ぜひ見ていただきたいですね。

 

●福山さんがADAM AUDIOに期待したい製品などはありますか?

MI福山 超小型モニター・スピーカーがADAM AUDIOから出てほしいですね。リュックに入れて持ち運ぶような、モバイル用途のスピーカーの需要が最近は多いんです。

小山田 日本だけでなくアジア全体でもその需要はありますね。現状ではモバイルとしてヘッドフォンのSP-5があります。ヘッドフォンとしては高価格帯に入りますが、スピーカーで聴いたときとの印象が変わらずにミックスができると評価をいただいているモデルです。出先などでもしっかりモニタリングしたいという方には、一度お試しいただきたいですね。

MI福山 あと、モニター・スピーカーではなく、設備系スピーカーや照明一体型スピーカーのようなものも出ると面白いかもしれません。そういった製品はあまり良い音だとは言えないレベルですし、ADAM AUDIOのサウンドで実現できるとヒットするかもしれないです。

小山田 確かに良いかもしれないですね。家でどうやって音を楽しむのか、ということを考える人はどんどん増えてくると思っています。若い方だとホーム・シアター・セットを買うという人はあまりいないと思いますが、もっとスマートな形で良い音楽体験ができる製品が出てくると、“良い音で聴くというのはこんなに素晴らしい体験なんだ”と気付いてくれる人は多い気がしています。ADAM AUDIOとしてそういったアプローチができると面白いですね。

ソニックエージェンシーの小山田耕平氏(写真左)、メディア・インテグ レーションの福山智宏氏(同右)

ADAM AUDIO T Series

左からT8V(フロント/リア)、T7V、T5V

オープン・プライス/ペア(市場予想価格:60,000円前後/T8V、55,000円前後/T7V、46,200円前後/T5V)

SPECIFICATIONS:
T8V ■形式:2ウェイ・バスレフ型 ■パワー・アンプ:クラスD(ツィーター20W、ウーファー70W) ■ユニット構成:8インチ・ウーファー、1.9インチ・ツィーター ■周波数特性:33Hz〜25kHz ■最大音圧レベル:118dB SPL ■外形寸法:250(W)×400(H)×335(D)mm ■重量:9.8kg(1本)
T7V ■形式:2ウェイ・バスレフ型 ■パワー・アンプ:クラスD(ツィーター20W、ウーファー50W) ■ユニット構成:7インチ・ウーファー、1.9インチ・ツィーター ■周波数特性:39Hz〜25kHz ■最大音圧レベル:110dB SPL ■外形寸法:210(W)×347(H)×293(D)mm ■重量:7.1kg(1本)
T5V ■形式:2ウェイ・バスレフ型 ■パワー・アンプ:クラスD(ツィーター20W、ウーファー50W) ■ユニット構成:5インチ・ウーファー、1.9インチ・ツィーター ■周波数特性:45Hz〜25kHz ■最大音圧レベル:106dB SPL ■ 外形寸法:179(W)×298(H)×297(D)mm ■重量:5.7kg(1本)
 

 

 

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Rock oN NEWS

 大改修を終えたRock oN渋谷店は“作りたい音を自分で作れる”新しいスタイルのショップとして生まれ変わっています。店内のお好みの機材を持ち運び、自由に組み合わせて欲しい音をご自身で作って試すことが可能となっています。

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