「TOONTRACK EZ Bass」製品レビュー:音声からMIDIを自動生成可能な5弦エレキベース専用ソフト音源

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 EZ DrummerやEZ Keysなど、ドラムやピアノ/キーボード専用ソフト音源をリリースしてきたTOONTRACKより、エレキベースに特化したソフト音源EZ Bassが発売されました。早速チェックしてみましょう。

 

“Modern”と“Vintage”の
2種類のベース・サウンドを収録

 EZ BassはMac/Windowsに対応し、スタンドアローンのほかAAX/AU/VSTプラグインとしても動作。5弦エレキベースをシミュレートしたソフト音源で、“Modern”と“Vintage”の2種類のサウンドを収録しています。“Modern”はアクティブ・ピックアップ系サウンド。輪郭のはっきりした音なので、スラップ奏法などにも最適でしょう。“Vintage”はFENDER Jazz Bassを思わせるサウンドで、中域にコシのある音色。どんな音楽ジャンルにもマッチしそうです。

 

 これら2種類のベース・サウンドは、画面最上段の右端にあるメニューから選択でき、指弾き/ピック弾きごとにプリセットを選ぶことも可能です。これらのサウンドだけで、ほとんどの音楽ジャンルをカバーできるでしょう。ちなみに画面最上段にある“Bass”タブでは、選択したベースに対応するBridge/Neck/Sub-Bassなどの各パラメーターが表示され、音色やエフェクト、チューニングなども設定できます。

 

 画面下部にはSong Trackと呼ばれるセクションが表示され、制作しているベースのMIDIノートや楽曲のコード進行、展開などを管理することが可能です。

 

 またEZ Bassは、通常のソフト音源のようにDAWのピアノロールを使ったMIDIの打ち込みが可能ですが、筆者はEZ Bassに内蔵された専用ピアノロール=Grid Editorの使用をお勧めします(画面①)。ここではMIDIノートの編集はもちろん、各アーティキュレーションの割り当てが柔軟に行えるのです。他社のエレキベース専用ソフト音源では、DAWのピアノロールを用いて各キー・スイッチにアサインされたアーティキュレーションを切り替えながらプログラミングする方式が多いと思われますが、これがなかなか手間のかかる作業。しかしGrid Editorでは、ここに打ち込んだMIDIノートに対してさまざまなアーティキュレーションを数ステップで簡単に設定することができるのです。

 

 やり方は、Grid EditorにあるMIDIノートを選択し、同画面の上部にあるアーティキュレーション・メニューから望むアーティキュレーションを選択するだけ。サクサクと作業が進みます! また、このメニューには、指弾き、ピック弾き、スラップ、ゴースト・ノート、タッピングなど、ベーシストが実際に使う奏法が網羅されているので、とてもリアルな演奏を再現できるでしょう。個人的には、人差し指と中指の動きを自動で割り当ててくれる“Auto-Alternate Fingers”が印象的でした。

 

 またGrid Editorではスライドやレガートの設定も簡単にできます。特にスライドを選択したときの音の滑らかさとリアルさには驚きを隠せません。Grid Editorは一度使ってしまうと戻れなくなるほど便利な機能です。これだけでもEZ Bassの導入理由になると言ってもよいでしょう。

 

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画面上部に表示されたEZ Bass内蔵の専用ピアノロール=Grid Editor。MIDIノートのクオンタイズやアーティキュレーションの編集などが行える。下部にはSong Trackを表示することができ、ベースのMIDIノートや楽曲のコード進行、展開などを管理可能だ

 

ドラムやピアノのMIDIデータを解析して
ベースのMIDIパターンを自動生成

 EZ Bassは打ち込みが苦手な人にとっても便利な機能を装備。“Grooves”タブには、EZ Bassに格納された膨大なMIDIパターンの中から、マウスでタップしたリズム・パターンに最も近いものを検出できる“Tap2Find”機能が搭載され、難解なMIDIパターンも簡単に使用可能です。

 

 検出された候補の中から好みのMIDIパターンを一つ選び、画面下部にあるSong Trackにドラッグ&ドロップ。これですぐにMIDIパターンを内蔵音源で鳴らすことができます。格納されているMIDIパターンはさまざまな種類があるので、これらを見るだけでもフレーズ作りの参考になるでしょう。

 

 またEZ Bassには、同社のドラム専用ソフト音源Superior Drummer 3の技術を基にした“Audio Tracker”というユニークな機能が搭載されています。これはギター/ベースのオーディオ・ファイルを解析し、それをMIDIデータに変換してくれるというもの。ソースとするオーディオ・ファイルをドラッグ&ドロップする方法と、EZ Bass内にベースの演奏を録音して解析させる方法があります。ベースのサンプル素材からMIDIデータを抽出すれば、そのパターンやタイミングはそのままに、より細かい編集を施すことができるでしょう。

 

 実際、筆者もベースを弾いてMIDIデータに変換してみましたが、スライドはもちろんグルーブのポイントとなるゴースト・ノートが細かく検出され、さらに自動でアーティキュレーションまで割り当てられました。これはかなりすごい機能だと思います!

 

 “Drums & Keys”タブでは、ドラムやピアノなどのMIDIデータを画面にドラッグ&ドロップするだけでベースのMIDIパターンを生成してくれます。ドラムのMIDIデータを使用する際は、キック/キックとスネア/ハイハットなど、どれにマッチさせるのかを選択することも可能です。ベースのアレンジが苦手な人でも、簡単にベース・ラインを作成することができるでしょう。アレンジ時のアイディアとしても最適ですね。

 

 もはやEZ Bassは、エレキベース専用音源という枠を飛び越え、次世代型ベース・シミュレーター/ジェネレーター・プラグインと言えるかもしれません。音質がリアルなのはもちろん、クリエイティブな作業に集中できるように煩わしい手順を極力なくすように考えられた製品だと思います。ビギナーからプロまで、すべての作家/クリエイターにお薦めです。

 

■製品情報

sonicwire.com

 

  

TOONTRACK EZ Bass
15,000円

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REQUIREMENTS ▪Mac:Mac OS X 10.15、AAX/AU/VST対応のDAWソフト(64ビット)、▪Windows:Windows 10、AAX/VST対応のDAWソフト(64ビット)、▪共通項目:8GB以上のRAM、10GB以上のディスク空き容量

 

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