「TOONTRACK EZ Keys Essential Pianos」製品レビュー:多彩な機能で曲作りをバックアップするピアノ音源3製品のバンドル

TOONTRACKEZ Keys Essential Pianos
EZ Keys Essential Pianosは、サンプル・プレイバック方式のピアノ音源EZ KeysシリーズからGrand Piano、Upright Piano、Classic Electrics(すべて単体価格は14,700円)の3製品をバンドルしたお得なパッケージです。Mac/Windowsに対応し、VST/Audio Units/RTASプラグインとして動作するほか、スタンドアローンでも使えるので、コンピューターにMIDIコントローラーをつなげればライブなどでも使えます。またスタンドアローン起動時は低レイテンシーなので、まるで実際のピアノを弾いているような感覚が得られるとのこと。それでは、パッケージの詳細を見ていくとします。

OSTLIND & ALMQUISTによる
伝説的なアップライトもサンプリング


まずは、バンドルされている製品を整理していきます。Grand Pianoは、STEINWAYのグランド・ピアノModel Dを録音し、音源として使用したもの。キー・ノイズやボディの鳴りまで奇麗に収めているほか、音色自体にすごくエッジが効いているので、ロックやファンクをはじめさまざまなジャンルに対応できるでしょう。Upright Pianoは、スウェーデンの伝説的なメーカーOSTLIND & ALMQUISTのアップライト・ピアノを、同じくスウェーデンのスタジオで録音し作られたもの。ビンテージ・アップライトの重厚さと温かみを帯びた音色は、聴いた瞬間に“これぞ私の思い描くアップライトの音”と感じ、とても驚きました。Classic ElectricsにはRHODES Mark I Stage PianoとWURLITZER 200Aという2種類のエレクトリック・ピアノ・サンプルが収録されています。これら3種類のピアノ音源は、共通の仕様として画面の左下に4つのツマミを装備しており、リバーブやコンプ、テープ・シミュレーター、ディストーションといった内蔵エフェクトをはじめ、音色を調整するためのさまざまな機能がアサインできます。プリセット音色によって異なるエフェクトが割り当てられますので、まずは自分の思う音に最も近いプリセットを見つけて、ツマミを触りながらイメージする通りの音色に近づけていくのがいいと思います。特に、Classic Electricsではツマミを使ってキー・ノイズやハンマーの戻る音量も調整できるので、よりリアリティのある音作りが可能です。エレピでソロを弾く際、実はこうしたピアノの物理構造に起因する音が“往年のサウンド”を再現するのに結構重要だったりするのです。ただ、曲によっては邪魔になることもあるので、そう感じたら控え目に設定し直しましょう。 

ポップスやブラック・ミュージックなどに
幅広く対応するMIDIデータを付属


3種類のピアノ音源に一貫した特徴としては、一流ピアニストの演奏したプリセットMIDIデータも挙げられます。画面中央下の“BROWSER”ボタンを押すとMIDIデータを閲覧できるブラウザーが現れますので、そこから目的のデータを画面中央のソング・トラック・エリアにドラッグ&ドロップすれば、すぐに使い始めることができます。もちろん、選んだデータのエディットやトランスポーズ、テンポ・チェンジも簡単に行えます。MIDIデータは“POPS/ROCK”や“SOUL/RNB”“JAZZ”など、各ジャンルにマッチしたものがフォルダー分けされており、まさに“曲作り支援機能”と言えます。また、各ジャンルのMIDIデータは“Intro”“Verse”“Chorus”“Ending”といった楽曲のセクションごとに細かくフォルダー分けされていますので、全くピアノを弾いたことのない人でも、それぞれから好きなものを選び、並べていくだけで1曲を構成することが可能です。特にClassic Electricsの“FUNK”フォルダー内のデータは独特の演奏アプローチも見事に再現されています。例えば、演奏しているときのミス・トーンなども残っています。ファンクだけでなくディスコ/ハウス系の楽曲に鍵盤の音を足したいときは即戦力になるでしょう。ソング・トラック・エリアにMIDIデータを読み込むと、そのデータに合うコード・ネームが表示されます。そこで、ある程度ピアノが演奏できたり音楽理論が理解できる人は、キーの関係性を表した楽典でおなじみの図=“五度圏”をベースにデザインされたスマート・トランスポーズ機能を使ってみるといいでしょう。この機能では、読み込んだMIDIデータにテンション・ノートを加えたり、MIDIデータ自体を移調させたりと、耳で響きを確認しながらコードのバリエーションを広げることができます。高度なピアノ・バッキングを簡単に生み出すこともできると思います。こうして作り込んだソング・データは、MIDIやWAVで書き出すことが可能です。 EZ Keysシリーズは、初心者にもやさしい操作性と作/編曲のサポートをテーマに開発されてきました。しかし音色が素晴らしく、機能も充実しているので、上級者の方もきっと納得できる内容なのではないかと思います。   (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年9月号より)
TOONTRACK
EZ Keys Essential Pianos
23,730円
▪Mac:Mac OS X 10.5以降、Power Mac G5(Int el Macを推奨)、1GB以上のRAM、VST/Audio Uni ts/RTAS(AVID Pro Tools 8以降)/スタンドアローン対応 ▪Windows:Windows XP(32ビット)/Vista/7/8(以上すべて32/64ビット)、1GB以上のRAM、VST/RTAS(Pro Tools 8以降)/スタンドアローン対応