
定番以外にマニアックな音も収録
統一感と存在感のあるサウンド
Superior Drummer 3のサンプルはエンジニアのジョージ・マッセンバーグがレコーディングしました。LUDWIGやPEARLなどの定番メーカーだけでなく、ほかの音源では見かけないマニアックなメーカーの音も多数収録。スネアだけでも25種類あり、そのほかスネア・ワイアーを外したものやブラシ、スネアにスプラッシュ・シンバルを乗せたもの、ガムテープを張った音など面白いサウンドも収録されています。かなり潤沢に種類があるのですが、違う組み合わせでも音に統一感があるのが特徴。例えばフロア・タムだけ変えたりしても、違和感無くキットになじむことが多く、別キャラのパーツを組み合わせたばかりに一からキットを作り直し、ということが比較的少ない音源だと感じました。
ライブラリーは24ビット/44.1kHzで収録されています。このハイレゾ時代にこのサンプリング・レートはどないやねん、とつっこまれる方も多いでしょう。しかし実際使ってみると、デフォルトでもオケの中で“ガン”と立つ音になっています。先ほど述べたサウンドの統一感含め、そこはさすがジョージ・マッセンバーグの録音。非常に存在感のある音です。
DAWのように使えるミキサーとエフェクト
録音済みトラックの音の差し替えにも対応
複数ある設定タブ画面の一つ、DRUMSタブでまずはキットのサウンドを作っていきます。この画面ではかなり細かい部分まで調整が可能。特に面白いものを紹介しますと、チューニングとは別にピッチのカーブをエンベロープで作れるPitch FXいうモードや、音を反転できるReverseというモードがあります。Reverseはリバース・スピードなども変えられるので、後述のMIXERタブに切り替えて音作りをする前に、まずここだけでもかなり面白い変化を与えられます。いわゆる生バンド・サウンドの中にギミック的な効果を持たせる用途に優れていますね。
MIXERタブではAVID Pro Toolsのようなミキサー画面が表示されます。エフェクトがなんと35種類もあって、しかもDAWのプラグイン感覚で使用可能。プラグインの中にプラグイン、DAWの中にDAWとも言えます。僕のお気に入りなのが、Multiband Compressor。音も良く、目的の音まで最短距離でたどり着けそうな直感的な操作が行えるエフェクトで、DAWのトラックにも挿したいくらいです。
ジャンル別にMIDIファイルが用意されているグルーブ機能は生ドラム音源には必ずと言っていいほど付いているものですが、Superior Drummer 3はさらに工夫されています。GROOVESタブでジャンルやプレイ・スタイル別にグルーブを選べて、好みのグルーブを下部のSong Track画面にドラッグ&ドロップすると細かくエディットできます。とても便利に感じたのがコピーです。スネアだけ、ハイハットだけ、というふうにパートを選んでコピーができます。もちろんリージョンをそのままDAWにドラッグ&ドロップしたり、MIDIのエクスポートも可能。そのほか、Tap2Findというモードでは、マウスでドラム・キットをたたくと、それに近いフレーズを膨大なグルーブ・ライブラリーから探し当ててくれます。
TRACKERタブでは、マルチトラックのドラムのオーディオ・ファイルからそれぞれのパートのトランジェントを検出してMIDIを生成することができます。そのパートに該当するSuperior Drummer内の音に差し替えられ、しかも原音とミックスすることも可能。これはいろいろな使い方ができそうですね。生ドラムのレコーディング後、エディットしやすいように音源の音に差し替えてもいいですし、原音とレイヤーさせて音を太くしたり、生のグルーブをギミック的な音に適応することも容易です。
今回説明した機能以外にも11.1chのサラウンドに対応するなど、多機能で大量のサンプル・ライブラリーを読み込むにもかかわらず、動作が軽いことがSuperior Drummer 3の素晴らしいところ。機能の先進性も含め、今の時代に即したドラム音源だと思います。


(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年12月号より)