
縦置き/横置きに対応の美しいデザイン
合計144Wのパワー・アンプを内蔵
まずは、外観を見ていきましょう。サイズはA4の紙よりも少しだけ横幅がスリムになったくらいのコンパクトな大きさです。また、8331Aは3ウェイ・スピーカーですが、一見フルレンジ・スピーカーのように見えます。これは、中域/高域のユニットが同軸上で一つに重なっているから。これにより高域と中域が同じ“一つの点”から出力されるので、縦一列にスピーカー・ユニットを配置する3ウェイ・スピーカーよりも位相特性が良いのです。また同軸スピーカーなので、置き方は縦置き/横置きのどちらでもOK。アンプの出力は低域用と中域用がそれぞれ72W/36W、高域用が36Wで、500Hzと3kHzでクロスオーバーする3ウェイ構成です。上下にあるスリット部分の裏側には楕円形のウーファーが1基ずつ搭載され、とてもユニークで美しいデザインとなっています。
背面には、アナログ入力(XLRバランス)を兼ねたデジタル入力(AES/EBU)とデジタル・スルー出力(AES/EBU)、そしてSAMシステムの制御時に使用するGLMネットワーク用端子2つが備わっています。また、手動で音質補正ができるDIPスイッチと、スピーカーの基本出力を決める音量トリムも装備しています。
測定キットを使い数分で検証し自動補正
ぴったり奇麗に整った位相特性
それでは部屋に8331Aを置いてみて、どのような音がするか聴いてみましょう。ちなみにこの部屋は、低域が恐ろしくだぶつき調整に苦労した場所なのです。
まずは、SAMシステムを使わず箱から出したままの状態でスピーカーを鳴らしてみました。予想通り低域はだぶついています。クラブなどが好きな人はこれで良いのでしょうが、これはいつも働いているプロ・スタジオの音ではありません。
ここでSAMシステムが登場。やり方は、別売りのGMLネットワーク・アダプターにコンピューター、測定マイクを接続し、8331A同士とGMLネットワーク・アダプターを付属のイーサーネット・ケーブルでつないだら、測定マイクをリスニング・ポイントに立てます。そして、コンピューターにインストールしたSAMシステムの制御ソフト、GLM 2.0を起動し測定開始するだけです。“ピューッ”というスウィープ音が数回鳴り、部屋の音響特性グラフが表示されます。“おおっ! やはり70〜80Hz辺りが盛り上がっている”と、測定結果に私はがっかり。GLM 2.0内の測定グラフは、ピークと逆のカーブを描いています(画面①)。検証は約数分で終了。早速聴いてみると、ダブついた低域がスッキリしていて、すごくいい感じです! 現在自分が使用しているスピーカーの出音と比べても違和感が無く、SAMシステムと同等の仕事をした自分の耳に私は自信を持っちゃいました。

それはさておき、8331Aはコンパクト・サイズにもかかわらず十分な音量が出せ、ひょっとしたらかなり大きな部屋でも対応できるでしょう。位相特性はさすが同軸モニター。スッキリ、ぴったりという感じ。例えるなら、私のスピーカーは横一列に並んだバレエ・ダンサーの身長がデコボコなのに対して、8331Aはそれが奇麗にそろっているイメージです。高域は、しっかり出ているのにとげとげしさが無く、とても高級感があります。そして問題の低域は、私のスピーカーよりも“髪の毛1本分くらい”大きかったです。私のスピーカーも“もうちょっとだけ低音だそうかな?”と私は逆に思ってしまいました。もし、もっと自分なりの調整にしたければ、GLM 2.0内でカスタマイズも可能です。また、一度分析した音響プロファイルは保存できるので、いろいろ試すこともできます。
8331Aは、あまりの使いやすさと、音質の良さに文句のつけようがありません。また、電源システムにも工夫があって、しばらく放っておくとスリープ状態になり、消費電力を抑えてくれます。こんな機能も“欲しい”と言いたくなる一因ですね。


撮影:川村容一
(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年12月号より)