Modern/Vintageの音色キットは
ビンテージ・コンソールを用いて収録
EZ Drummer 2はMac/Windows対応、スタンドアローンのほかVST/Audio Units/RTAS/AAX Nativeプラグインとしても動作します。初代EZ Drummerと完全互換しており、拡張音源のEZXシリーズも引き続き使用できます。インストール後、ソフトを立ち上げるとドラマーの視点で描かれたドラム・キットが大きく表示され(メイン画面)、各楽器をマウスでクリックすると発音します。画面右にはハンド・クラップ、シェイカー、タンバリンなど通常のドラム・キットには含まれない楽器が表示され、こちらもクリックして音色を確認できます。画面右上にあるオレンジ色のスロットには、立ち上げた時点では“Basic”と表示されています。ここは音色プリセットを選択できるセレクターで、あらかじめ“Modern”“Vintage”という2つのライブラリーが用意されています。ModernはNEVE 88RとEMI TGコンソール、一方のVintageはEMI Redd 51コンソールを使用して収録されているとのことで、音質へのこだわりが伺えます。Modernに含まれる音色プリセットは“Basic”を筆頭に“80s”や“Disco Pop”など16種類。一方のVintageも“Dirty Rock”“Glam Delay”など11種類のプリセットを収録しています。好みのキットを選んだ後で、例えばスネアの音だけをほかに差し替えることも可能です。楽器の下にある小さな矢印をクリックすると変更可能な音色が表示され、例えばスネアは“5x14"Ludwig 400”といった感じで選ぶことができ、ここでピッチや音量の調整も可能です。こうして好みのパーツで構成したドラム・キットは、先述したスロットをクリックすると表示される“User Presets”から“Save As”を選ぶと名前を付けて保存でき、以降スロット内にリスト表示されます。
BROWSER/SEARCHの両ページで
MIDIフレーズを手早く検索
次に、画面上部に4つ並んで表示されているDRUMS/BROWSER/SEARCH/MIXERの各ページを紹介したいと思います。まず“DRUMS”ですが、これはここまで紹介したドラム・キットが表示されているページです。EZ Drummer 2は音色と同時に多彩なリズム・パターンを収録しているのが特徴。“BROWSER”ページでは、膨大なMIDIフレーズ(8,000種類以上のリズム・パターンを収録!)の中から、求めるグルーブをテンポ/拍子などを手がかりに検索できます(画面①)。
お気に入りのパターンから
曲構成が作れるSong Creator機能
こうして選び出した好みのMIDIフレーズを順番に並べられるセクションが、新しく搭載された“Song Track”ウィンドウです。リズム・フレーズを取りあえず並べておく、繰り返すなどの作業をソフト内で実現し、全体の構成を視覚的に確認できます(画面③)。このSong Trackはどのページを開いても同じ画面下部に表示されています。
パターン選択のトライ&エラーが容易
意外な組み合わせが功を奏すことも
実際の制作で使用してみての感想ですが、音質的にEZ Drummer 2はオーディオ・エンジンが“完全に刷新”されているとのことで、音色自体のクオリティが高く、メーカーのドラムの質感/空気感/音色に対する意気込みが伝わってくるようでした。個人的に好感触を持った音色はModernライブラリーの“Dry Rock”。文字通りドライな質感ときらびやかなシンバル類の音色が印象的で、ジャンル検索した“Jazz”のMIDIフレーズをあえて組み合わせたところ、ライド・シンバルの音色が際立つグルーブを聴かせてくれました。このキットは“Dry”と言いつつ、MIXERページで“Amb”のフェーダーを上げれば空気感が出てきます。いわゆる打ち込み系の楽曲に、こうした空気感のあるサウンドが入ることで、トラックの音像が立体的になるように思います。EZ Drummer 2は検索したMIDIフレーズをエディットして使用するわけですが、好みの部分を抽出するという意味では、レコード・サンプリングの手法と通じる部分もあるような気がしました。なので、レコードをジャケットで選ぶように、あえて検索/試聴はせず、ランダムにMIDIフレーズを並べ、そこから自分の耳を頼りに好みのグルーブを取り出すという使い方も面白そうです。また、MIDIフレーズ自体は基本的にどのソフトにも適用できるわけで、EZ Drummer 2のリズム・パターンでほかの音源を鳴らしても面白いでしょう。そう考えると、これだけ多彩なMIDIフレーズが収録されていることがいかに制作に役立つか、本ソフトを使用してあらためて認識しました。 “EZ”の名の通り、簡単な操作でいろいろな使い方ができるEZ Drummer 2。検索機能の強化などフォーカスが絞られており、テンポ良くリズムを追い込めるのが何よりの魅力です。幅広い音楽に対応する即戦力ツールと言えるでしょう。 (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年7月号より)