6010BPMからアンプがパワー・アップ
入力端子もバランス型のXLRを採用
8010Aはドライバー・ユニットに3インチ・コーン・ウーファーと3/4インチ・メタルドーム・ツィーターを使用した2ウェイ型で、それぞれを独立したアンプで駆動するバイアンプ方式です。同社からはほぼ同じサイズのパワード・スピーカー6010BPMが既に発売されていますが、本機の違いとしてまず挙げられるのはアンプの改良で、ウーファー/ツィーター共に6010BPMでは12Wだったのが、それぞれ25Wにパワー・アップしています。また、スペック上の高域の再生可能周波数(±2.5dB)も18kHzまでだったのが本機では20kHzに伸びています。入力端子も変更され、RCAピンのアンバランスからXLRのバランスに。大きさは121(W)×181(H)×116(D)mm、重量はペアで約3kgと持ち運びも簡単です。
コントロール関係はすべてリアに用意されています。まず、電源オン時に無音状態が1時間程度続くと自動的に切れ、再度信号が入力されると自動的に復帰するISS(Intelligent Signal Sensing)機能が搭載されており、この機能を任意にオン/オフすることが可能。トーン・コントロールはディップ・スイッチの組み合わせで低域を−2/−4/−6dBと3段階で選べるほか、200Hz周辺を4dBカットするデスクトップ・コントロール・スイッチも用意されています。デスク上など水平な場所にスピーカーを置く場合、音がデスク面に反射して不要な中低域が盛り上がってしまうことがあるので、それを回避するための機能です。なおセッティングにあたっては、Iso-Podと呼ばれるゴム製のインシュレーターが付属し、これで上下の角度を簡単に調整できるのが非常に便利です。
小型ながらパワフルな低域
中高域〜高域の解像度も高い
では音を出してみましょう。まずは卓の上に置いてトーン・コントロールはオフで聴き始めましたが、この小さなボディから鳴っているとは思えないほどのパワフルなサウンドです。ただし、少しだけ音像の重心が低いように感じたので、トーン・コントロールで低域を2dBカットしてみるとちょうど良い感じに。表記上は低域のカットとなっていますが、周波数特性を確認すると、実際には1kHz付近からなだらかに下がり始めて、200Hz辺りから下の帯域は一様に2dBカットされるので、結果としては重心が上がりライトな音像になりました。とはいえ、小さな音量でもベースまでしっかり聴こえますし、逆に大きな音量でも飽和せず余裕があり、入力レベルの大小にかかわらずミックス・バランスがほとんど変わらず、音像感が一定に保たれます。
超低域のチェックに関しては、サイズ的にもほかのスピーカーを併用する必要があると思いますが、低域〜高域のバランスが良く、特に中高域〜高域にかけては解像度が高いです。実際の作業で使ってみたところ、細部までよく分かるサウンドで、ピッチやタイミングのエディットでは少しの変化でも聴き取りやすく、ベストなポイントを迷うことなく見つけられました。定位も良く、パンニングした際の左右感だけでなく、各音の前後感や、リバーブやディレイなどを足したときの奥行き感も的確にとらえるので、ミックスの終盤などで細部をチェックするのにも向いています。
なお、あえて壁に近い場所にセッティングしてみたところ、バスレフ・ポートが背面にあるため低域のたまりが気になりましたが、低域を4dBカットすることによって解消できました。またデスク上にノート・パソコンを挟むように設置したときは、デスクトップ・コントロールをオン&低域2dBカットが最良の結果となりました。
箱から取り出したときにはあまりの小ささに驚きましたが、実際に使ってみると良い意味で予想を裏切られ、GENELECのスピーカーが多くの人から支持されている理由を再確認できました。取り回しの良いコンパクト・スピーカーという用途だけでなく、ニアフィールド・モニターとしてスタジオで使用しても満足できるクオリティです。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2014年7月号より)
撮影/川村容一