DAWの普及、インディペンデントな制作スタイルの隆盛、SNSでのコンテンツ公開などで、さまざまなクリエイターが取り組んでいる“自宅でのボーカル録り”。コロナ・ウィルス以降、その必要性がますます高まっていると言えます。今回は、プロ・アーティスト20組の自宅ボーカルREC術を使用機材とともに一挙公開。ホーム・レコーディング初心者からアップデートを考えている人まで、Tips集として活用していただけると幸いです。
Reol
音楽を生業にしているならば
宅録を行いやすい部屋選びはマストです
ボーカル録音を自宅で行う一番の理由は、歌いながら“今の発声だめ”と思ったり“リズム崩れた”と判断したときに、自分で即録音停止できるからです。スタジオ録音ではこの作業をエンジニアが行うので、歌い直す際のタイム・ロスとテイクごとの発声の変化に悩まされることになります。また私は、立ち会いの人数が増えることで、歌に没入できないこともありました。自宅ならば自分の耳を頼りにセルフ・ディレクションできますし、自由自在にパンチ・インすることも可能です。また、時間を気にせずにいろいろな声ネタを試せるので楽しめます。さらに、私は宅録を快適に行いたいので、ほかの住人と部屋が隣り合わない物件を選びました。防音室も設置して、万全な環境を整えています。周囲を気にしていたらクオリティの高いテイクは録れません。音楽を生業にしているならば、宅録を行いやすい部屋選びはマストですね。
そして実際に録音をした後には、自分の過去の作品と比較しながら聴いたり、ほかのアーティストの曲を聴くための休憩を挟むようにしています。そのあと自分のボーカル・テイクを確認して、良しあしを判断するんです。その際により正確なジャッジを行いたいので、エフェクトのかかっていない音源をチェックしています。素材の加工については、私の発声の帯域や響き方が特殊なために参考になるアーティストがいないので、独自のミキシングを生み出しました。ピッチよりもリズムやタイミングを重視したエディットです。WAVESプラグインやANTARES Auto-Tune Pro、CELEMONY Melodyneなどを使用しています。
機材紹介
Condenser Mic
NEUMANN TLM 103
れをる名義のアルバム『極彩色』でメジャー・デビューする前にTLM 103(写真右)を購入して、アルバム『事実上』の制作までの間、メインで使いました。音色に少し癖もありますが、私の声の高域にある倍音成分が増幅して録れるのでお気に入りです。楽曲制作を担当するギガの作るサウンドとも相性はとても良いんです。今は経年劣化のためにNEUMANN U 87 AI(写真左)をメインに使用しています。しかし、高域のきらめき方はTLM103特有の魅力があるので、今後も声ネタのサンプリングなどで使用する予定です。
【デジマートで探す】
Audio I/O
RME Babyface Pro
見た目がスタイリッシュで可愛いのも魅力の一つですが、先人たちによる知識がさまざまなWebサイトでたくさん拾えるところが良いと思います。宅録は一人でリラックスして作業に取り組めるのが最大の魅力ですが、独断で間違った機材の操作や設置をしやすいのが難点です。せっかく導入したのに、全機能の半分も知らずに使ってしまっては良い機材の意味がなくなってしまいます。機材の操作や知識を独学で高めるためにも、使用方法を学びやすい機材を選ぶことは大事です。
【デジマートで探す】
Headphone
AUDIO-TECHNICA ATH-M50
サウンド・プロデューサーのモニター環境と合わせるために、同じメーカーのヘッドフォンを使っています。多少ドンシャリ気味ですが、その特性を計算した上でモニター・チェックをしていますね。耳が慣れているというのもありますが、一番好みの音です。
【デジマートで探す】
Reol
自身の活動全般をセルフ・プロデュースするシンガー・ソングライター。DAWで曲作りや録音を行い、ベース・ミュージック基調のトラックにキャッチーな歌を乗せる
【Recent Work】
プロ20組の歌録り機材&テクニック! 自宅ボーカルREC術
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