DAWの普及、インディペンデントな制作スタイルの隆盛、SNSでのコンテンツ公開などで、さまざまなクリエイターが取り組んでいる“自宅でのボーカル録り”。コロナ・ウィルス以降、その必要性がますます高まっていると言えます。今回は、プロ・アーティスト20組の自宅ボーカルREC術を使用機材とともに一挙公開。ホーム・レコーディング初心者からアップデートを考えている人まで、Tips集として活用していただけると幸いです。
Mayu
すべてがうまくいっている歌よりも
粗や若干のミスがある方がグッとくる場合もある
自宅ではデモ用の仮歌を録音することが多いですが、録り音をエンジニアの方に送って、そのまま本チャンに使うこともあります。DAWはSTEINBERG Cubaseを使っていて、自宅の地下室でエアコンを切ってから、パソコンの前に座ってハンドマイクで録音しています。うまくいかないところはループさせて、良いテイクが出るまで録りながら歌い続けます。録音時は、基本的に声質の良いところが最大限に出ているかどうか、歌詞を話すように伝えられているかどうか、曲全体の波を作れているかどうかを確認します。その3点以外にも、録った歌を聴くと自分の思い描いていた理想のボーカルとのギャップが見えてくるので、至っていないところを何度か歌い直していきます。やっていくうちに想定外の表現が出てきたり、現段階ではできないことが分かったりするので、細かい方向転換をしながら完成させていきます。
ラフ・ミックスが終わったら、その音源をスマートフォンに入れて散歩しながら聴きます。そうすることでリスナーとして判断できる気がします。すべてがうまくいっている歌よりも、粗があったり若干のミスがある方がグッとくる場合もよくあるので、あまり神経質にならずに直感/第一印象で良いなと感じるテイクを採用するように心掛けています。
機材紹介
Dynamic Mic
SHURE SM7B
スタジオでの本チャン・レコーティングでも、このマイクを使います。自分の声質の中~低域がつやっぽく、かつ高域がキツくならずに録れるので、とても気に入っています。ひずみづらく、ノイズが乗りにくいため、宅録するのにもかなり使いやすいと思います。基本的にはフラットな状態で使用しますが、ミッドブースト/ローカットの設定ができるので、その日の声の調子に合わせて変えます。
【デジマートで探す】
Audio I/O
STEINBERG UR12
手ごろな価格で、シンプルかつコンパクトなところが良いです。2インのオーディオI/Oですが、宅録では同時に2tr以上を録音することがないので、特に不自由しません。よくリュックやギター・ケースに入れて持ち運んでいます。
【デジマートで探す】
Headphone
DENON AH-D5000
以前はSONY MDR-CD900STを使っていましたが壊れてしまって、家で曲を聴く用だったDENONを録音にも使っています。レコーディング向きかどうかは分かりませんが、ベースの聴こえ方がとにかく心地良いので、歌を録る際、ピッチが安定しやすくなっている気がします。
録り音のトリートメント
声に力が入り過ぎて全体として聴きづらくなってしまっていること、細かく歌い直しをし過ぎて全体がのっぺりとした印象になっていることがあります。すべてをエディットで解決するようなことはしませんが、Cubaseの画面上でブレスだけ違うテイクを張り付けることはあったりします。
Mayu
シンガー・ソングライター。ソニー傘下SMALLER RECORDINGSからリリースするなどした後、よりインディペンデントな活動スタイルにシフト。ギター弾き語りからバンド・サウンドまでさまざまな楽曲をこなし、そのいずれもでエモーショナルなメロディ/和声を紡ぐ。GROUPNにも参加
【Recent Work】
『PLP』
Mayu
(Mayu)
プロ20組の歌録り機材&テクニック! 自宅ボーカルREC術
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