DAWの普及、インディペンデントな制作スタイルの隆盛、SNSでのコンテンツ公開などで、さまざまなクリエイターが取り組んでいる“自宅でのボーカル録り”。コロナ・ウィルス以降、その必要性がますます高まっていると言えます。今回は、プロ・アーティスト20組の自宅ボーカルREC術を使用機材とともに一挙公開。ホーム・レコーディング初心者からアップデートを考えている人まで、Tips集として活用していただけると幸いです。
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いろいろチャレンジして積み上げていくことが
歌録りにおいても自分の方法論なんです
本番用の歌録りを自宅でやっています。防音対策は部屋の窓を閉め切るのみ。冬場以外は暑くなるので、パンツだけ履いて録るのが基本です。パソコンの前で作業するだけだから、エンジニアの方が介入するセッションよりも圧倒的にスピーディ。他者に気を遣う必要も無く、自分を解放して、やりたいときにやりたいだけ録れるのでラクです。
レコーディング時は、声色に気を付けながら発声して、自分が納得できる限り作業を続けます。力を込めるよりも脱力して歌った方が、声も安定して良い揺らぎと音色が生まれます。一気に録って“はい、OK!”って日もあれば、録音中に良いと思っても翌日聴き返してみたら微妙、という場合もあるので、少し休憩を挟んだりしながらマインド・リセットして見極めていくことが多いです。悩んでしまったら、一曲に対してフリー・スタイルを20本くらい録って、その素材をコラージュ的に組み合わせるのもオモロいです。
テイクは、なんとなく気持ちが上がるものを選んでいけばOKです。たくさん録って制作していると、経験から自然に学んで理解していくことが増えるので、自らが得た知識を信じてやるだけだと思います。いろいろチャレンジして積み重ねていくことが自分にとっての方法論です。
機材紹介
Dynamic Mic
CUSTOMTRY CM-2000
もともとはライブ用に1,500円くらいで買ったものです。前はRODEのコンデンサー・マイクNT1-Aを歌録りに使っていたのですが、アルバム制作中に壊れてしまい、このCM-2000を兼用するようになりました。ステージで落としてグリルが凹んだ結果、唇がフィットするようになって歌いやすく、気に入っています。
Earphone
PANASONIC RP-NJ100
これも1,500円ほどの安価な機種。断線してもすぐに買い直せるので、消耗品として使っています。録音時は片耳だけに装着し、もう一方の耳で生の歌声を聴く。この“片耳モニタリング術”は自分の声を確認しやすく、歌いよさにつながっています。制作した楽曲は安価なイヤホン、ミニ・コンポ、カー・ステレオ、スタジオ・モニターなどさまざまな環境で聴き比べ、異なるパースペクティブから判断するのが大事。
Audio I/O
AUDIENT ID14
オーディオI/Oは、コンソールも手掛けるAUDIENTのコンパクトなモデルを使っています。
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録り音のトリートメント
ボーカルは基本的にAPPLE Logic Express 9のChannel EQやChorus、AUMatrix Reverb、WAVES Renaissance Compressorで処理します。Logicの純正エフェクトは動作が軽く、使い勝手が良い。たまにFlangerやTremoloで味付けすることもあります。Renaissance Compressorは、かかり具合がナチュラルなので気に入っています。
Aru-2
ビート・メイカー。2013年に名門OILWORKSからデビュー。近年は自身のボーカル・プロジェクト=Notologyのアルバム、Fresh Selects(US)からのビート・テープ、NF Zesshoとのジョイント・アルバムなどをリリース。新作『Little Heaven』にも自身でボーカルを取った楽曲が収められる
【Recent Work】
プロ20組の歌録り機材&テクニック! 自宅ボーカルREC術
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