「RME Babyface Pro FS」製品レビュー:次世代クロックを実装した12イン/12アウトのUSBオーディオI/O

RMEBabyface Pro FS
 Babyface Pro FSは国内外で多くのアワードを受賞したUSBオーディオI/O、Babyface Proの後継機種。精度が1,000兆分の1秒(フェムト秒)単位に向上した次世代のクロックSteadyClock FSの搭載を筆頭に、幾つかのアップデートが施されています。

出力レベルの切り替えスイッチと
盗難防止用K-スロットを新たに搭載

 コンピューター(Mac/Windows)との接続はUSB 2.0を採用し、バス・パワーで駆動。電源サプライ(別売り)からの電源供給も可能で、その場合はAD/DAコンバーターや2chのマイク・プリアンプとしてスタンドアローンでも動かせます。

▲マイク入力(XLR)とライン出力(XLR)をそれぞれ2系統搭載するリア・パネル ▲マイク入力(XLR)とライン出力(XLR)をそれぞれ2系統搭載するリア・パネル

 モバイル・オーディオI/Oということで、入出力は取り回しやすいシンプルな構成となっています。アナログ入力はマイク・イン(XLR)とライン・イン(TRSフォーン)が2つずつで合計4ch、アナログ出力はメイン・アウトL/R(XLR)とヘッドフォン・アウト(TRSフォーン&ステレオ・ミニ)で合計4chです。ヘッドフォン・アウトは同社のAD/DAコンバーターADI-2 Pro FSと同じオペアンプを備え、メイン・アウトとは別系統の出力端子として設定できます。

▲右サイドにヘッドフォン出力(ステレオ・フォーン&ステレオ・ミニ)と、ライン入力(フォーン)を装備。右端は盗難防止のK-スロット ▲右サイドにヘッドフォン出力(ステレオ・フォーン&ステレオ・ミニ)と、ライン入力(フォーン)を装備。右端は盗難防止のK-スロット

 デジタル入出力用にオプティカル端子も搭載しているため、ADAT入出力を備えた外部機器と接続することで8ch分の入出力を拡張可能です。付属のブレイクアウト・ケーブルでMIDIのやり取りにも対応しています。

▲左サイド。左からUSB、ACアダプター・イン、MIDI入出力、オプティカル入出力と端子が並んでいる ▲左サイド。左からUSB、ACアダプター・イン、MIDI入出力、オプティカル入出力と端子が並んでいる

 新しく本体裏側に、メイン・アウトのレベル切り替えスイッチ(+19/+4dBu)が付きました。右サイドの盗難防止用K-スロットも今回で初実装です。

▲本体底面。メイン・アウトのレベル切り替えスイッチ(+19/+4dBu)が新たに実装された ▲本体底面。メイン・アウトのレベル切り替えスイッチ(+19/+4dBu)が新たに実装された

前モデルからさらに解像度が増した出音
800Hz〜2kHzに密度のある録り音

 今回のチェックはバス・パワーで行ってみます。まずはスピーカーの出音から。ハイエンドからローエンドまで、高い解像度で素直に再生しています。特にローエンドの出方が素晴らしく、ジャンルを問わず30Hz以下の扱いが重要となる近年の音楽表現に対して見事に呼応しています。私が前モデルのBabyface Proを購入した最大の理由はローエンドの再生能力の高さだったのですが、Babyface Pro FSもその良点がしっかり継承されていますね。さらに焦点の合い方が抜群に良く、音像の一体感に優れています。それ故に音像が大きく感じられて、小さな音量でも細かなところまで聴き取りやすいです。Babyface Proも十分に高い解像度を有していましたが、さらに磨きがかかっています。新しいクロック・ジェネレーターによる結果でしょうか。

 ミックスでも使ってみました。解像度の向上により音が飽和しにくくなっていて、大胆な設定でギリギリまで攻めることができます。例えばサチュレーションは線がくっきりする範囲にとどめることが肝心なのですが、この見極めがかなり楽になりました。コンプでもアタック感のコントロールが格段にしやすくなり、コンプそのもののチョイスも容易です。

 ヘッドフォン・アウトも検証してみると、驚くべきアップデート内容です。Babyface Proと比べて周波数レンジが明らかに広くなっていて、ヘッドフォンのグレードが上がったかのような高解像度でクリアなサウンド。例えるならリノベーションによって窓が大きくなり、見える景色が広がったような変化です。私のようなクリエイターの多くは、コンピューターの前でマイク録りをする場面も多いかと思います。そういった点でヘッドフォン・アウトのサウンドは音決めに直接影響してくる部分。この進化は、確実に録り音にも良い影響を及ぼしてくれるでしょう。また、純粋にリスニング用として使っても気持ち良いサウンドで、いつまでも聴いていたいと思えるほどです。

 録り音もチェックしてみましょう。入力レベルや48Vファンタム電源の供給は、付属ソフトのTotalMix FXでコントロールできますが、本体のボタンとエンコーダーのみでも素早く行えます。今回の録音ソースはアップライト・ピアノとアコースティック・ギター、バイオリン、シンセサイザーの4種類。どれも素直で濁りの無いサウンドで録れました。単に素直なだけではなくみずみずしさもあり、外部のプリアンプを使わずとも魅力的なサウンドで録れます。特に800Hz~2kHz辺りの密度が充実していて、焦点がくっきりとしている印象です。この傾向はライン入力で録ったシンセサイザーにも顕著に現れていたので、焦点の向上に関しては新たに実装されたクロックの影響が大きいのでは、と思います。

 長年Babyface Proを使用してきて人にも薦めてきた私ですが、Babyface Pro FSは単なる後継機種とは思えないほどクオリティが上がっていると感じました。モバイル・オーディオI/Oの購入を検討するすべての人にとって、満足度の高い選択肢となるでしょう。

サウンド&レコーディング・マガジン 2020年2月号より)

RME
Babyface Pro FS
オープン・プライス(市場予想価格:95,455円前後)
▪接続タイプ:USB 2.0 ▪入出力:4イン/4アウト(アナログ)、8イン/8アウト(デジタル) ▪ゲイン・レンジ:−11〜+65dB ▪入力インピーダンス:2kΩ(バランス)、1kΩ(アンバランス) ▪ビット&サンプリング・レート:最高24ビット/192kHz ▪外形寸法:108(W)×35(H)×181(D)mm ▪重量:680g 【REQUIREMENTS】 ▪Mac:Mac OS X 10.6以降 ▪Windows:XP SP2以降 ▪共通:INTEL Core 2 Duo以上のCPU