☆Taku Takahashi × E-MU E4 Platinum & ARMEN 1200 Sound【前編】〜ハードウェア・サンプラーの何が魅力なのか?

☆Taku Takahashi × E-MU E4 Platinum & ARMEN 1200 Sound【前編】〜ハードウェア・サンプラーの何が魅力なのか?

 ダンス・ミュージックとメジャー・シーンをつなぐ異才☆Taku Takahashi。1990~2000年代に使っていたハードウェア・サンプラーを再び活用し始めたそうで、E-MU E4 PlatinumとARMEN 1200 Sound(E-MU SP1200のラック・モディファイ版)を用い、ポップなビートダウン・ブギー「You You You」を制作してくれた。まずは愛機の魅力を中心に語ってもらおう。

Text:Tsuji. Taichi Photo:Hiroki Obara

Featuring Gears|E-MU E4 Platinum & ARMEN 1200 Sound

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E-MU E4 Platinum

 E4 Ultraサンプラー・シリーズのフラッグシップ機。最大同時発音数は128で、128MBのメモリーや20GBのHDDを標準搭載する。背面のSCSI端子を介して、AKAI PROFESSIONALやROLANDのサンプラーのファイルを読み込んだり、コンピューターとの通信が可能。前面のフロッピー・ドライブからはWAVとAIFFのファイルをロードできる。32ビット処理の内蔵エフェクトも特徴だ。

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背面には6イン/16アウトのアナログ入出力のほか、ADATやAES/EBUのデジタル入出力も装備。MIDI IN、OUT、THRUは2系統で、ワード・クロック入出力やコンピューター・キーボード接続用端子も備える

 SPECIFICATIONS 
■AD/DA:最高16ビット/48kHz ■メモリー容量:128MB ■内蔵シーケンサー:48tr ■外形寸法:435(W)×133(H)×336(D)mm ■重量:8kg(本体) ■価格:680,000円(税抜/2001年発売当時)

 

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ARMEN 1200 Sound

 1987年にE-MUから発売されたサンプラー、SP1200をラック・マウントできるようにした3U機。モディファイを手掛けたのはNYのビンテージ機器リペアラーARMENで、☆Taku Takahashiが所有するのは珍しいレッド・シャーシの個体だ。サンプラーとしての仕様はSP1200と同様で、前面の1~8のパッドに割り当てられるサンプルは最長2.5秒。計10秒のサンプリングが行える。

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入出力はモノラルで、アナログ1イン/9アウト。出力の内訳は8つのチャンネルのパラアウトとミックス・アウトで、パラアウト1~6にはE-MU SP12譲りのローパス・フィルターを備える。MIDI入出力は1系統

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1200 SoundのD/T-MULTYボタンを押し、一番上のLEDを点灯させるとピッチ・モードに入る

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各パッドに割り当てたサンプルのピッチは、スライダーでコントロール可能。液晶画面には、調整の結果が表示される

 SPECIFICATIONS 
■AD/DA:12ビット/26kHz(固定) ■メモリー容量:256KB ■同期:MIDI、SMPTE、オーディオ・クロック ■内蔵シーケンサー:8tr/最大100パターン保存可

最終的には必ずE4 Platinum

 ドラムをはじめ、ホーンのパッセージやシンセのシーケンスに1200 Sound、ストリングスおよびホーンのヒットにE4 Platinumを使ったという☆Taku。E4 Platinumには、かつてサンプリングし貯めた数多くの素材が収められている。

 

 「DJミキサーからE4 Platinumにサンプリングし、そのデータをMacのPROPELLERHEAD ReCycle!(波形編集ソフト)に転送して、不要な部分を切った後にE4 Platinumへ転送する、というのをやっていました。RMEのオーディオI/Oを使い始めてからは、STEINBERG Cubaseに録音したものをReCycle!で編集するようになりましたが、最終的にはE4 Platinumへ転送していましたね」

 

 ReCycle!はアタック検知のサンプル・スライス機能を備え、当時としては画期的な仕様だった。

 

 「僕はAKAI PROFESSIONALのS2000やS3000XLを経てE4 Platinumを使い出したんですけど、どのサンプラーも本体で編集するのが結構な手間で。今のMPCとかにはアタック検知などの便利な機能が付いていますが、当時はそういうのも無かったし、素早く視覚的に編集できるReCycle!に頼っていましたね。NujabesにReCycle!のことを教えたら、わざわざ僕の家まで見に来て“これヤバいじゃん!”と。みんな実機で編集していて“ツラいよね~”って言ってた時代だったから(笑)。あとReCycle!でスライスすると、音の終端が正再生と逆再生を交互に繰り返しながら伸びて、フェード・アウトしていくんです。その感じが独特で、実機で切るよりも面白いものになると思っていました」

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☆Takuが1990年代に使っていたAKAI PROFESSIONALのサンプラーS2000。1995年に発売され、当時の価格は125,000円(税抜)。標準2MBのメモリーを搭載し、44.1kHzで11.14秒、22.05kHzで22.28秒のステレオ・サンプリングが行える。上位機のS3000XLやS3200XLと同様に、Mac用エディット・ソフトM.E.S.A.が付属。本体とMacをSCSI接続して使う仕様だった

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2000年ごろの☆Takuのスタジオにはハードウェアがずらり。ラックの上に載っているのはE-MU SP12、E4XT Ultra、AKAI PROFESSIONAL S3000XL、S2000だ

 編集済みのサンプルをE4 Platinumに転送して鳴らすのは「音にガッツが感じられるから」だそう。

 

 「S2000やS3000XLよりもガッツがあると思ったから移行したんです。多分、ミッドが強いんじゃないかな。当時はソフト・サンプラーのれい明期で、STEINBERG Halionなどを試したこともあったんですが、音的に自分が納得できるものに巡り会えなくて。あとE4 Platinumは、内蔵のローパス・フィルターが良いんですよ。開き切った状態でレゾナンスを上げると、ハイがガッと上がって未来っぽい音になる……耳障りじゃない“キーン”という音が入るんです。それがすごく好きで。ミックスのときにエンジニアがカットしていたかもしれないけど(笑)。それに内蔵ストレージの容量が大きかったので、E-MU SP12やSP1200でサンプリングした音も、最終的にはE4 Platinumへ移して使っていましたね」

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E4 Platinumの内蔵ローパス・フィルターは☆Takuのお気に入り。開き切った状態でレゾナンスを最大値の127にすると、独特のハイゲインな音が得られるという

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E4 Platinumに保存されたプログラムの数々。楽曲提供するアーティストやプロジェクトごとにプログラムを作成していたようだ

 ☆Takuは、ABLETONのフィジカル・コントローラーPush 2でE4 Platinumのプログラムをプレイできるようにしている。Push 2はUSBケーブル、E4 Platinumは5ピンMIDI/USBのケーブルでAPPLE MacBook Proに接続。「Push 2のパッドでサンプルをトリガーしながら、曲にマッチするものを選びました」と続ける。

 

 「今はオーディオの切り張りでトラック・メイクできる時代ですが、僕はパッドなり鍵盤なりでサンプルをプレイしながら作りたくて。DAWの画面に波形を置いてマウスでいじるようなやり方だと、どうしても脳味噌だけに頼ってしまってクリエイティブになれないんです。でもパッドや鍵盤ならいろんなことを瞬時に試せるし、適当に弾いている中でも、頭を使っているだけでは出てこなかったフレーズが生まれたりする。m-flo loves 坂本龍一の「I WANNA BE DOWN」などは、そういうふうに作った曲の分かりやすい例ですね」

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「You You You」の制作で使われたハードウェア・サンプラー+DAWのシステム。1200 SoundはオーディオI/Oのライン・インに接続され、本体でトリガーしたサンプルをソフト・サンプラーで編集/運用できる。E4 PlatinumはMIDIインターフェース・ケーブル(5ピンMIDI/USB)でコンピューターとつながり、プログラムを汎用コントローラーで操作可能。“プログラム”とは、複数のサンプルをノート・ナンバーやベロシティ、アンプ・エンベロープの設定などと紐付け、一つのカテゴリーとして保存したものを指す

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m-flo『ASTROMANTIC』(2004年)に収録された坂本龍一との共作「I WANNA BE DOWN」は、めくるめく速さでサンプルが切り替わっていくナンバー。鍵盤でE4 Platinumを演奏し、アドリブ的な試行錯誤を繰り返しつつ制作したという

 

☆Taku Takahashi × E-MU E4 Platinum & ARMEN 1200 Sound【後編】では、 かつて実践していたというSP1200へのフレーズ・サンプリングの手法を公開!

 

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☆Taku Takahashi

DJ/プロデューサー。1998年にVERBAL、LISAとm-floを結成。ソロでもカルヴィン・ハリスやCrystal Kayら、数多くのアーティストのプロデュースやリミックスを担当。ハウスからR&B、ヒップホップまで、あらゆるジャンルを自らの作品に落とし込み、Beatportでのチャート・アクションなどで、その実力を世界にも知らしめている。インターネット・ラジオ局block.fmの主宰も務めている

 Recent work 

『Shining One』
BE:FIRST
(BMSG)
☆Taku Takahashiがプロデュースを担当

40周年記念特集|温故知新〜今よみがえる”あのころの機材“

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