CHOKKAKU × AKAI PROFESSIONAL S6000【前編】〜生楽器の音源が今ほど無かった時代

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 CHOKKAKUが選んだのは、AKAI PROFESSIONALのサンプラーSシリーズ最後にして最高峰の機種=S6000だ。1998年の発売時から2000年ごろまで愛用していたという一台で、当時の使い方を振り返りつつストリングス、ブラス、ドラムを構築。山下和彰が作詞・作曲し、らんぽがボーカルを務める「Body and Soul」のアレンジに活用していただいた。SMAP、L'Arc~en~Ciel、OKAMOTO'Sらを手掛けてきた敏腕アレンジャー/プロデューサーのCHOKKAKUだけに、S6000へのアプローチもハイレベルだ!

Text:Tsuji. Taichi Photo:Hiroki Obara

Featuring Gears|AKAI PROFESSIONAL S6000

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 Sシリーズ・サンプラーのフラッグシップ機。最大同時発音数は128で、メモリー容量は標準8MB、最大拡張時に256MBとなる。本体から分離させ手元で使用できる液晶ディスプレイ&コントロール部がユニークで、液晶左右の16個のファンクション・ボタンにより操作性を高めている。MIDI INとOUTを2系統備え、一台で32chの独立したMIDI信号を扱える。オーディオ・アウトは全16系統だ。内蔵のマルチエフェクトは20ビット処理となっており、同時に最大4系統を使用可能。サンプルのファイル形式にはWAVを採用しており、コンピューターとのファイルのやり取りがスムーズに行えた。兄弟機としてS5000というモデルもあった。

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背面左上にはオーディオ・インL/Rとメイン・アウトL/Rがあり、その下にメイン・アウトを含む16系統のオーディオ・アウト、AES/EBUやS/P DIFのデジタル・イン/アウト、ワード・クロック・インがスタンバイ。SCSIの端子とMIDI IN、OUT、THRUは2系統ずつで、Windowsマシンでのプログラム・エディット時に使用するUSB端子も見られる

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S6000のサンプリング画面。当時のフラッグシップ機だけあって、液晶に高級感がある

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サンプルのエディット画面。チューニングやモノラル化、左右反転、ノーマライズなどが行える

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どのサンプルをどのMIDIノート・ナンバーに割り当てているかを表示

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サンプル・トリガーには内蔵のエンベロープ・ジェネレーターをかけることができ、音の立ち上がりや減衰の仕方を調整可能だ

 SPECIFICATIONS 
■AD/DA:16ビット/44.1/48kHz ■メモリー容量:8MB(標準)、256MB(最大拡張時) ■サンプリング・タイム(44.1kHz/ステレオ):40秒(標準)、25分14秒(最大拡張時) ■外形寸法:482.6(W)×177(H)×410(D)mm ■重量:11.2kg(本体) ■価格:398,000円(税抜き/1998年発売当時)

サンプルの頭を見付けられる独自機能

 「1990年代にS6000で鳴らしていたのはストリングスやブラスの音。生に差し替える前の関係者用デモとかに使っていました。打ち込みのドラムもほぼS6000で、そちらは本チャンまで残ることが多かったです」とCHOKKAKU。さまざまな楽器のマルチサンプルを収めた“サンプリングCD”から一音一音サンプリングし、プログラムを自作していたと言う。今でこそ“ストリングス専用”や“ブラス専用”を謳った音源はソフトで数多く発売されているが、当時は打ち込みで生楽器の音色を使いたいなら、サンプラーとサンプリングCDに頼るのが一番の近道だったようだ。

 

 「CDプレーヤーのアナログ・アウト、またはS/P DIFオプティカル・アウトをS6000に直接つないで、いろんなピッチや強さのサンプルをどんどん録音していくんです。アナログかオプティカルかは、試し録りの結果を聴いて決めていました。良い音で録りたかったから、サンプルによって使い分けていたんです。録った後は音の前後に無音部分ができるので、S6000本体でカットしていました。と言っても、液晶に表示される波形が粗かったので、ズーム・アップしてサンプルの頭を見付けるようなことはほぼ不可能でしたが。サンプリングの開始点からカット用のカーソルまでを再生してくれる便利な機能があってね。カーソルがサンプルの頭に少しでもかかると“プッ”っていうアタック音の断片が聴こえるんです。だからカーソルをちょっとずつ動かしていって、“プッ”が初めて聴こえなくなったところが頭。そこでカットするわけです。サンプルの終端にも同じ機能が使えましたね。で、白玉のフレーズを打ち込んだときに奇麗に伸びて聴こえるよう、ループのポイントをベストなところに設定するんです」

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S6000には、サンプルの頭がどこかを探るための機能が付いている。サンプリング開始点からカット用カーソルまでを再生できるというもので、カーソルが少しでもサンプルの頭にかかれば“プッ”というアタック音の断片が聴こえる。そこから少しずつカーソルの位置を前に戻していき、初めて“プッ”が聴こえなくなったところこそサンプルのド頭というわけだ。サンプルの終端にも同じ機能が使える

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S6000に付属していたサンプリングCD

 今のDAWの感覚からすると、気の遠くなるような話だ。

 

 「同じ音高のMIDIノートで鳴らすにしても、ベロシティによって強さが変わって聴こえるように設定していました。例えばベロシティ120以上になると、アタック成分が出てくるとかね。つまり各ノート・ナンバーに、ベロシティごとの複数のサンプルを割り当てておく必要があったんです。市販のストリングスやブラスのプログラムには劇伴寄りの製品が多く、ポップスに求められるアタッキーなものが見当たらなかったので、自作するしかなかったんですよ。また、ブラスならブラスでセクション単位のものが中心だったから、トランペット1と2、テナー・サックス1と2、トロンボーン1と2というふうに楽器単体のプログラムを作って、それぞれにボリューム・オートメーションやピッチ・ベンドを描いていました。今回も同様の方法を採っています。プログラムの作成には結構な時間をかけていましたが、作ってしまえば何度でも使えるし、たまに改良も加えていました。その後、EMAGIC LogicのEXS24(現在はSampler)やNATIVE INSTRUMENTSのKontaktで扱えるようMacに移植したんです」

 

 当時のプログラムは今も現役だそう。CHOKKAKUの昨今のワークスにも、S6000が息づいているのだ。

 

 「2000年ごろは、LogicからSシリーズのプログラムを読み込めたんですよ。そのときに“読めなくなるときが必ず来る”という野生の勘が働いて(笑)。やり方としては、フロッピー・ディスクやCD-Rにプログラムをコピーして、それをLogicにロードする形でした。移植後はループの設定が少しおかしくなったりするので、手作業で修正していましたね。Kontaktへの移植は、サード・パーティのアプリケーションを介して行っていました。ただやっぱり、S6000本体で鳴らすのとLogic上で鳴らすのとでは、同じプログラムでも音が違いますね。S6000には16ビット/44.1kHzでサンプリングしていましたが、今は24ビット/48kHz以上のプロジェクトで制作しているので、高域が伸びて明るくなるんです。ちなみにS6000の音は、同世代のサンプラーの中でもかなりフラットな方だったと思います」

 

CHOKKAKU × AKAI PROFESSIONAL S6000【後編】では、S6000を3台を楽器の属性によって使い分けていたというサンプラー使いこなし術を語っていただきました。

 

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CHOKKAKU

アレンジャー/プロデューサー。SMAP、L'Arc~en~Ciel、真心ブラザーズ、Sexy Zone、King & Prince、映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』など数々のヒット曲やサントラを手掛けてきた。近作としては、アレンジを担当したMISIA『Welcome One』(4月リリース)、複数曲でリズム・アレンジ+ギターにて参加した鷺巣詩郎『EVANGELION INFINITY』(7月リリース)などが挙げられる

 Recent work 

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鷺巣詩郎
(キング)

40周年記念特集|温故知新〜今よみがえる”あのころの機材“

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