ケーブルをメインに高品位なオーディオ・アクセサリーを手掛けるACOUSTIC REVIVE。今回のヘビー・ユーザーは、50年以上のキャリアを持つレコーディング・エンジニア=鈴木智雄氏だ。国内外のアーティストたちへ貢献してきた彼に、サウンド・シティでインタビューを行った。
Photo:Hiroki Obara
大音量でも耳障りな音にならない理由
知人のマスタリング・エンジニアに連れられて、鈴木氏がACOUSTIC REVIVEの社屋を訪れたのは2000年ごろのこと。初めての訪問だったが、ケーブルなどの製品を用いたオーディオ・システムに感銘を受けたという。
「それまで自分なりにさまざまなケーブルを試しては比較し、癖が少ないという点でBELDENのものが一番だと思っていたのですが、ACOUSTIC REVIVEの製品はあまりにも音が違ったので驚いたんです。とにかく澄んでいて耳障りでなく、そして素直。オーディオ的な言葉で表すなら“付帯音が無い”と言えるのかもしれません。ほかにも周波数レンジや立体感、奥行きなど、いろいろな要素が自分の使ってきたケーブルとは全く違っていました」
以降、現場でACOUSTIC REVIVEの製品を活用するようになった鈴木氏。例えば、バイオリンの録音に使っているNEUMANN KM56用のマイク・ケーブルがその一つだ。
「KM56の周波数特性には、6kHz辺りに持ち上がった部分があるんです。付属のケーブルだと、そこが耳に痛く聴こえがちなのですが、ACOUSTIC REVIVEのものに替えれば気持ち良く感じられたり、“むしろ華やかで良い”といった印象にもなり得ます。実際には、KM56で収めたバイオリンを生の音に近付けようとしたら、6kHz周辺をEQで下げる必要があるんですけど、“耳障りな音を下げること”と“そうでないものを下げること”は同じ“下げる”でも結果が全く違ってきます」
EQに言及する鈴木氏だが、ACOUSTIC REVIVE製のケーブルを使用していればイコライジングの必要はほとんど無いそう。「マイクや楽器などによるものの、根本的に癖が無くストレートに伝送してくれるからです」と続ける。
「例えば、演劇作品のための音楽。劇場で大音量再生されるものなので、うるさく感じられるとセリフや歌唱を邪魔してしまいます。それではお客さんが心地良くないし、演者やPAエンジニアの方々もパフォーマンスしにくいわけですよね。私自身もセリフに対して音楽がぶつかっているように感じた経験があるため、自分がレコーディングを務める際には“バンタム/XLRケーブルにACOUSTIC REVIVEの線材を使ってみよう”といった発想になるんです。それで実際に32ch分を自作し、録音に使ってみたところ、仕上がりを劇場で聴いたときにあらためて効果を痛感しました。音量は十分なのですが、セリフがきちんと聴こえるんです。それは各楽器をピュアに録音でき、EQでの過度なブーストなどを控えられるから、ミックス・ダウンした音もおのずと耳障りにならないためです」
ミックスにも効果的な新製品RPC-1K
ACOUSTIC REVIVEの製品は、ミックス・ダウンそのものにも効果を発揮するという。鈴木氏が例示するのは電源コンディショナーの最新版=RPC-1Kだ。音響特性を重視して筐体にヒッコリー材を使い、ケーブル部にはシルク・テフロン絶縁を施した独自の音響専用導体“PC-TripleC”を採用。電源プラグのグレード・アップや貴陽石の追加などにより、電源ノイズ除去機能の向上を図っている。
「ある劇団の音楽をミックスする際にRPC-1Kを数台使ったら、作編曲家の方から“オーケストラ・ピットで演奏される生の音よりも生々しく聴こえる”とのお声をもらいました。また演出家の方に“目の前でバンドが演奏しているような音を”とご要望いただいたときも、同様に使用したところ仕上がりに対してお褒めの言葉以外無く……その音は、やはり“生々しい”の一言に集約されると思います。私にとって一番大切なのは、ミュージシャンの音楽をいかに良い形で聴き手に伝えるかです。そのためにもケーブルなどで変質させてはならないと考えていますし、録音物から自分の姿を消したいとさえ思っています。こういうエンジニアとしての芸風にACOUSTIC REVIVEが合っているのだと感じますね」
鈴木智雄
<BIO>1980年よりCBS・ソニー信濃町スタジオのチーフ・エンジニアを務め、1987年に独立。ジェフ・ベックやサンタナ、ボブ・ディランなどのライブ録音のほか、1980年代前半の松田聖子のレコーディング、さだまさし、BEGIN、寺井尚子、TOKU、宮本笑里など幅広いジャンルのアーティストに携わってきた。