オーディオが含むコードやメロディを自在に変更可能〜ZYNAPTIQ Pitchmap

オーディオが含むコードやメロディを自在に変更可能〜ZYNAPTIQ Pitchmap

 Reviewed by 
阿瀬さとし
【Profile】Kco(vo、ac.g)とのユニット=Cojokでギターとプログラミングを担当。Smash Roomに所属し、CMソングや映画サントラの制作、マニピュレーションもこなす。

ピッチ・シフトの感度などを調整できる5つのトラックボール・スライダーを搭載

 ドイツに拠点を置くZYNAPTIQは、人工知能および信号処理技術を活用したソフトウェアの開発ブランド。今回ご紹介するPitchmapは、ミックス・シグナルからメロディやハーモニーをリアルタイムにMIDIでコントロールできるプラグインです。Mac/Windows対応で、AAX Native/AU/VST2/VST3に準拠しています。

 

 まずはオーディオ・トラックにPitchmapをインサートしてピアノを再生してみましょう。すると、画面上段のグラフィック・ディスプレイに検出されたオーディオ成分とその倍音、ノイズ成分などが泡のようなグラフィックで下から上へと流れていきます。またディスプレイの横軸は、左端が低域で右端が高域といった仕様です。

 

 ディスプレイの下段に位置する鍵盤には、それぞれピッチ・マッピング・スライダーが備えられており、上下にドラッグすることでピッチ・シフトの具合を調整できます。すべてのスライダーをデフォルトにしたい場合は、この鍵盤右端にある“RESET”ボタンをクリックすればOKです。

 

 この鍵盤のさらに下段には、左から編集モード・セクション、処理セクション、KEY TRANSFORMマクロ・セクション、アルゴリズム・セクションが並びます。編集モード・セクションは3つの段で構成され、最上段にはREPEAT/VISIBLE/CUSTOMという3つの編集モードを搭載。ここで編集モードがREPEATに設定されている場合、ピッチ・マッピング・スライダーで変更したノートすべてに対して同じ処理が適用されます。

 

 またVISIBLEのときは、REPEATのときと同様に動作しますが、適用範囲が3オクターブ以内に限定されます。CUSTOMのときはピッチ・マッピング・スライダーで変更したノートのみが変化し、そのほかは変わりません。

 

 処理セクションには5つのトラックボール・スライダーを搭載しており、THRESHOLDはピッチ・シフトの感度、FEELはソースの質感、PURIFYはノイズ成分の除去具合、GLIDEはポルタメントの長さを調整可能。右端のELECTRIFYを上げると、シンセのような音色に色付けすることができます。これらによって、オーディオ素材に合わせた最適な設定が行えるわけです。

スケール・プリセットを複数装備。MIDI鍵盤での演奏にリアルタイムに対応

 実際に使ってみて非常に便利だなと思ったのは、画面右上にある“MUTE”ボタンをクリックして、任意の音階をミュートできること。例えばシンセやストリングスなどのオーディオ素材を楽曲で使用する際、フレーズとサウンドは気に入ってるけれどコードが合わないことがありますよね? そんなときにこのMUTE機能は重宝します。

 

 KEY TRANSFORMマクロ・セクションにはスケール・プリセットも複数用意されているので、想定外のフレーズも作成可能です(画面①)。またドラム、ベース、シンセで構成されたメジャー・スケースのインストゥルメンタルを流し、プリセットでハーモニック・マイナー・スケールを選択してみたところ、ドラムのピッチはそのままでベースとシンセがスケールに追従してくれます。素材の質感をキープしつつ、音楽的にも破たんせずに新たなハーモニーを形成できるのは“すごい”の一言です。

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画面① KEY TRANSFORMマクロ・セクションでは、キーやスケールを設定可能。スケール・プリセットは、クロマチックやメジャー/マイナーはもちろんのこと、ハーモニック・マイナーやメロディック・マイナー、リディアンなど複数が用意されている

 また筆者はCM曲の制作時、さまざまなハーモニーをMIDIノートで打ち込んで試すのですが、編集モード・セクションにあるMIDI MAPを選択すると、MIDI鍵盤での演奏にもリアルタイムに対応します。即座にハーモニーを確認でき、レイテンシーをほとんど感じないことにも驚きました。スナップショットを8つまで保存できるのも、特筆すべき点でしょう(画面②)。

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画面② 画面の最下段には、A~Hまでの8つのスナップショットを保存できる。これによって複数の設定を比較したり、さまざまなオーディオ素材に同一のセッティングを適用したりすることができる。またA~Hまでの各スロットにオートメーションを作成することも可能だ

 ボーカルの入った2ミックスでも、Pitchmapは高い精度でボーカルを認識して処理します。声の質感やニュアンスはしっかりとキープされているのも素晴らしいです。このように、Pitchmapは楽曲制作やミックス、ライブ・パフォーマンスまで幅広い用途で活用でき、新たな音楽的要素を加えてくれる万能ツールだと言えるでしょう。

 

ZYNAPTIQ Pitchmap【特殊処理】

ダウンロード版/38,940円

 Requirements 
■Mac:OS X 10.8以上、AU/AAX Native/VST2.4(いずれも32/64ビット)対応のホスト・アプリケーション
■Windows:Windows 7以上、AAX Native/VST2.4(いずれも32/64ビット)対応のホスト・アプリケーション、INTEL Quad Core I7以上のプロセッサーを推奨
■共通:INTEL CPU(2コア以上)、iLokアカウントまたはiLok 2ベースのアクティベーション

 

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