UNIVERSAL AUDIOでインターナショナル・セールズ・マネージャーを務めるユウイチロウ“ICHI”ナガイ氏に、リモート・インタビューを実施。UAD-2プラグインのプロダクト・マネージャーであったこともある彼に、UNIVERSAL AUDIOが持つ製品開発の理念から、マニアックな質問まで答えていただいた。
ユウイチロウ“ICHI”ナガイ
カリフォルニア在住のUNIVERSAL AUDIOインターナショナル・セールズ・マネージャー。12歳のころからサックスを演奏し、1980年代のデジタル機器の波に衝撃を受ける。以降シンセや打ち込みに傾倒し、E-MU/ENSONIQでのシンセ開発を経て2010年からUNIVERSAL AUDIOに勤務。UAD-2プラグイン、710プリアンプ、オーディオ・インターフェースApolloのプロダクト・マネージャーを務めた。ソウル、ファンク、レゲエなど、ルーツな音楽が好き。
開発に多くの時間を要したのは
Ocean Way StudiosとStuder A800
ーUADとは何の略語なのでしょうか?
ユウイチロウ“ICHI”ナガイ(以下ICHI) Universal Audio Digital、略してUADです。ありがたいことに近年UADという言葉がさまざまな国で浸透してきていて、うれしく思っています。展示会などでは、社名がUADだと勘違いされることもあるくらいです。
ーUADを開発するに至った経緯を教えてください。
ICHI CEOのビル・パットナムJrは、1999年にUNIVERSAL AUDIOを再建する前から“アナログとデジタルのどちらが優れているかではなく、レコーディング・スタジオはどちらも受け入れるべき”という考えを持っていました。だから我々はアナログ機材をプラグインで再現し、デジタル・スタジオのニッチに合うようなアナログ機器を作って、アナログとデジタルの2本柱で製品を展開しているのです。
ーUAD-2プラグインはなぜ今もDSPアクセラレーターが用意されているのでしょうか?
ICHI UAD-1プラグインが登場したころはコンピューターの処理が低速だったので、コンピューターのCPUでは実現し得ない高品質なプロセッシングを行うために、DSPアクセラレーターが必要でした。CPUに負荷がかかり過ぎるとフリーズなどのトラブルを引き起こし、作業ができなくなるからです。コンピューターが高速化してきた現代ですが、興味深いことにクリエイターが好むコンピューターは、タワー型のデスクトップからラップトップをはじめとするコンパクトなものへ変化してきました。その状況を考えると、DSPアクセラレーターは現在も欠かせません。小型デバイスで使えない製品は、時代に則していると言えないですよね?
ーUAD-2プラグインといえば、実機に近い音質を支持する声が多い印象です。どのようにクオリティの高いプラグインを開発しているのですか?
ICHI エミュレーションに力を入れています。私たちはこの分野を開拓し、エミュレーション界におけるリーダーであり続けることを常に目指しているのです。最先端のモデリング技術を駆使し、パートナーやアーティストの意見を取り入れながら激しいテスト、リスニング、チューニングをしています。音楽、機材、歴史がお客様にとって何を意味するのかを深く尊重しながらです。クラフトマンシップについても社内でたくさん話し合っています。
ーUAD-2プラグインは、再現する機材のメーカーと協力して実現されているものが多くあります。具体的にどのようなことを協力してもらっているのですか?
ICHI ケースバイケースですが、主に資源や人物へのアクセスです。例えばOcean Way StudiosやCapitol Chambersのようなスタジオの響きを再現するプラグインの開発では、研究や測定のためにスタジオ使用の許諾をもらいます。また、機材を再現するプロジェクトの場合、オリジナルの回路図を見せてもらったり、製品や技術について詳しく知っている人に話を聞いたりもしますね。
ーエミュレートが難しい機材はあるのでしょうか。
ICHI ノンリニアなものが難しい傾向にあるのですが、UAD-2でエミュレートしているものはほとんどノンリニアです。ですが開発に使った時間で考えると、Ocean Way StudiosとStuder A800の2つは、数多くのプラグインの中でも苦労しましたね。
UAD-2は夢のスタジオを構築できる
アナログ・エミュレーション・ライブラリー
ーUnison対応のプラグインを使ってかけ録りするのと、Apolloのプリアンプで録音した後に同じプラグインをミックスで使うのでは、音に違いは出ますか?
ICHI はい、Unisonで録った方が、より実機に忠実なサウンドとレスポンスを得ることができます。ただUnison機能を使ってレコーディングするとそのまま記録されてしまうので、柔軟性を求めるのであれば、Consoleに同じプラグインをインサートして、Apolloのモニターに留めるという手段もあります。
ー1176 Classic Limiter Collectionの中で、Rev.Hが収録されていないのはなぜでしょうか? もう製造されていないにもかかわらず、日本のスタジオでは現在も使われている人気モデルです。
ICHI 理由は単純で、Rev.Hがほかのリビジョンと比べてプラグインにしても面白くないからです。UREI後期に開発されたRev.Hはトランスレス設計なので、サウンド・キャラクターが薄いモデルとなっています。そういったコンプレッサーは、他社からも出ていますよね? それなら人気かつ個性的な機種の方が意義があると思い、Rev.AとE、そしてAEの3つを選んだのです。
ー社内で人気のプラグインを教えてください。
ICHI その人の作っている音楽によります。ですがNeve 1073、1176、Teletronix LA-2A、Pultec Passive EQ、Studer A800、EMT 140、Capitol Chambers、Fender '55 Tweed Deluxe、Moog Multimode Filter……辺りは見かけることが多いですね。
ーUAD-3リリースの予定はありますか?
ICHI 将来的にはあり得る話ではありますが、今のところありません。
ーこれからでも安心してUAD-2を導入できますね。現在どのようなプラグインを開発していますか?
ICHI 具体的な将来の計画については、準備が整うまで話せません。ですが、レコーディング・システムLunaのLuna Extensionsを使って、次世代の開発を行っているということまではお伝えできます。
ー最後にUAD-2プラグイン・ファンへ一言ください。
ICHI お客様が夢のスタジオを構築できるよう、世界で最も優れた最大のアナログ・エミュレーション・ライブラリーを作っているという自信を持って、UAD-2プラグインを開発しています。どういったプラグインを作るかは、お客様のアンケートやフィードバックから直接影響を受けています。何かご要望がありましたら、ぜひ私たちにお聞かせください。
DSPアクセラレーター
現行機種ラインナップ
※価格はすべてオープン・プライス:市場予想価格
Thunderbolt 3接続の最新機種
UAD-2 Satellite Thunderbolt 3
Quad Core 88,000円前後
Octo Core 132,000円前後
Octo Custom 176,000円前後
Octo Ultimate 8 410,000円前後(プロモ価格)
USBで接続するWindows用モデル
UAD-2 Satellite USB
Quad Core 88,000円前後
Octo Core 132,000円前後
Quad Custom 136,000円前後
Octo Custom 176,000円前後
MADIでコンソールに接続するライブ向きモデル
UAD-2 Live Rack
UAD-2 Live Rack Core 340,000円前後
UAD-2 Live Rack Ultimate 670,000円前後
旧来の規格もサポート
UAD-2 Satellite Firewire
Quad Core 88,000円前後
コンピューターや拡張シャーシにプラグイン
UAD-2 PCIE Card
Quad Core 88,000円前後
Octo Core 132,000円前後
Quad Custom 136,000円前後
Octo Custom 176,000円前後
Octo Ultimate 8 410,000円前後(プロモ価格)
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Apolloシリーズでも使える!
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