最前線で活躍する9人のプロフェッショナルに、愛用しているUAD-2プラグインのアンケートを実施。実際にどのUAD-2プラグインを、どのように使っているのか見ていこう。
レコーディング・エンジニア
D.O.I.
【Profile】本誌Engineers' Recommend のライターとしてもおなじみ、Daimonion Recordingsを拠点に活動するエンジニア。ヒップホップを中心にさまざまなジャンルを手掛ける。
【Equipment】
DAW:AVID Pro Tools
DSP:UAD-2 PCIE Card(Octo)、UAD-2 Satellite Thunderbolt 3(Octo)
オーディオI/O:AVID Pro Tools|HD I/O
【Recent Work】
Neve 1084
使用頻度の高かったNeve 1073と用途がかぶってしまいそうな気もしていたのですが、実際に使ってみると両者はかなりニュアンスが異なるプラグインでした。既にNeve 1073を持っている方でも導入をお薦めします。Neve 1073が中域~中低域のリッチさと自然な高域の美しさを持っているのに対して、Neve 1084はサブベース的な低域の伸び方が特徴的。高域に関しても、原音に無かったニュアンスのきらびやかさが付加されるイメージです。キック単体にかけてローエンドを補強したり、バックグラウンド・ボーカルのバスに挿してドンシャリ傾向にすることで、リード・ボーカルとの分離を図る際によく使用します。DSPの負荷は高いですが、とにかく通すだけで高級な質感になるので、ここぞというパートにはとりあえずインサートすることも多いプラグインです。
Ibanez Tube Screamer TS808
ジェイソン・ジョシュアさんの動画で知って以来、サブベースには欠かせないIbanez Tube Screamer TS808。Distortion Essentials Bundleに収録されている、ペダル・エフェクトの名作を再現したプラグインです。サブベースを1trコピーして、サブベースだけでは聴こえない高域の倍音をこのプラグインで合成します。20Hz~130Hzくらいだけを通すフィルターを入れた後にこのプラグインを挿すのがコツで、必要な成分だけ得ることが可能です。後は元のサブベースのトラックと同時に無音状態から少しずつボリュームを上げ、原音に対してどれくらいこの信号を足すかをイヤホンや小型スピーカーなどで聴きつつ調整すれば、どんなリスニング環境でもサブベースがちゃんと聴こえるように処理できます。
レコーディング・エンジニア
山内”Dr.”隆義
Photo by ハービー・山口
【Profile】レコーディング一筋34年のフリーランス・エンジニア。鈴木雅之やポルノグラフィティ、福山雅治、吉田兄弟、山崎まさよしら、多くの作品に携わる。
【Equipment】
DAW:AVID Pro Tools
DSP:UAD-2 Satellite Thunderbolt(Octo)
オーディオI/O:AVID Pro Tools|HDX2
【Recent Work】
AMS RMX16
1980年代サウンドを象徴する個性的なリバーブレーター。リズム録りの段階で実機、以降のダビングではプラグインを使っているが、両者のイメージの差はほぼ感じない。最も使うプログラムはNonlin。RMX16の音を世に知らしめた独特のデジタル・ゲート・リバーブは秀逸だ。実機ではバーコードで読み込んでいたExpandedプログラムの音色を保ちつつホールドさせるFreezeは、まさに1980年代の“荒いエフェクト”の音色だ。降幡 愛『Moonrise』の「プールサイドカクテル」では、エンディングに入る部分でボーカルを約15秒ホールドさせることによって、ボーカリストの心情を表現している。
Ocean Way Studios
何度かオーシャン・ウェイ・スタジオで録音したことがあり、そんな経緯からなじみのあるStudio AのRE-MICモードをよく使う。アレン・サイズ氏が所有する最高のコンディションのマイクを選択し(個人的にはC12AとM50の無指向性が多い)、フェーダーで距離感を出していくと、あたかもオーシャン・ウェイで録音したような独特のアンビエンス感が得られる。響きの少ないスタジオで収録したドラムやストリングス、ブラスには特に効果的だ。例にもれず、Ocean Way Studiosも『Moonrise』のサックスやコーラスで活躍した。80’sシティポップをほうふつさせる『Moonrise』でUAD-2プラグインが多く活躍したのは、名機の再現度の高さにほかならない。
Studio D Chorus
ピッチが揺れず、とてもナチュラルに独特の広がりが得られる。以前は実機を持ち出していたが、今ではこのプラグインに完全に移行したほど見事に実機をシミュレートしている。よく使うモジュレーション・モードは3+4の同時押しで、点定位が奇麗な面定位に変化する。このようなアナログ特有のまろやかなコーラス効果は、ほかでは作れない。
アーティスト
yuya(Develop One's Faculties)
【Profile】ビジュアル系バンドDevelop One's Facultiesのボーカル/ギター。バンド・メンバーのJohannes(ds)とともに、録音からマスタリングまでをセルフ・プロデュースで行う。
【Equipment】
DAW:APPLE Logic Pro X
DSP:UAD-2 Satellite Thunderbolt(Octo)
オーディオI/O:Apollo Twin(Duo)
【Recent Work】
Manley Massive Passive EQ
マスタリングで使用するプラグインの中で、今一番気に入っているのが、Manley Massive Passive EQ。欲しい帯域が奇麗に持ち上がり、不要な帯域が必要以上に削られることも無く、非常に使い勝手が良いプラグインです。通すだけ結構音が変わるので好き嫌いがあるかもしれませんが、ハマる人には手放せなくなるほど素晴らしいプラグインだと思います。僕は基本的にマスターに2段がけで使っていることが多いですね。
Shadow Hills Mastering Compressor
こちらも通すだけで音色が変化するのですが、原音を尊重しつつリッチなサウンドになってくれます。マスタリングだけではなく、バス・コンプとしてドラムにも使いますね。ニッケル/アイアン/スティールの3タイプからサウンドを選べるので、さまざまなジャンルで重宝すると思います。
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