加納エミリのプライベート・スタジオ 〜Private Studio 2021

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作曲からボーカル・レコーディングやミキシングまで
完全セルフ・プロデュースを実現する制作空間

 昨年、1stアルバム『GREENPOP』をリリースしたシンガー・ソングライターの加納エミリ。ニューウェーブをルーツとする彼女は作詞/作曲/編曲をすべて手掛け、プロデュースも自ら行う。その数々の楽曲が生み出される場所となっているのが、自宅の一角に設置された制作スペースだ。最近引っ越したばかりという彼女の新拠点を紹介してもらった。

Text:Kanako Iida Photo:Hiroki Obara

 

IRig Keys 37 Proを使って各パートを打ち込み
“余白”や“空白”を大事にして使う音を厳選している

 まずは、加納が制作を始めた当初の話から聞いてみた。

 

 「18歳から作曲を始めて、19歳のころにコンピューターを使った編曲を始めたので、もう6年になります。楽器は小さいころにピアノを一瞬習っていたくらいなので全然弾けなくて、DTMからスタートしたようなものです」

 

 『GREENPOP』は、ラダ・プロダクションのChester Beatty氏が一部のミキシング、全曲のマスタリングを担当。ビンテージ・シンセやビンテージ・エフェクトに差し替えた部分もあるが、ベースとなるデモは加納が制作している。

 

 「アルバム以前から、レコーディングや制作、マスタリング前のEQ処理などはAPPLE Logic Pro Xで行っていました。ギターやベースは客演で弾いていただくことが多いですが、基本のラインはIRig Keys 37 Proを使って自分で作っています。ギター以外はほぼできた状態でデモを出して、生に差し替えることが多いですね。ドラムも鍵盤で打ち込んでいます。生楽器系の音はLogicに付属のサンプルや、サンプラーEXS24 MKIIの中の音などを使いますね。シンセはNATIVE INSTRUMENTS Massiveを多用しています。ほかには、IK MULTIMEDIA Miroslav Philharmonik 2というストリングスのソフト音源や、ループ音源集も使います」

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加納は自宅の一角にデスクを設置。APPLE MacBook AirとLogic Pro Xをメイン・システムとして制作を行う。

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愛着があって4年以上使っているというIK MULTIMEDIA IRig Keys 37 Pro。今後はもっと鍵盤数の多いキーボードも導入したいと加納は語る

 最新曲「朝になれ」は、これまでの80’sテイストとは異なるメロウな一曲に仕上がっているが、その音楽性の広がりには聴く音楽のジャンルが変化したことも影響しているようだ。

 

 「以前はニューウェーブばかり聴いていたんですけど、最近はデュア・リパとかチャーリー・プースのような音がすごくイケてるなと思っています。音数は少ないけどパーカッションは種類が多く、ボーカルが一番目立っている。そういうのをいつかやってみたいです。自分の作品でも“余白”や“空白”を大事にしていて、使う音は厳選しているんです

 

ストリーミングのリスナーを意識したモニター環境
UNIVERSAL AUDIO UAD-2で奥行きを追求

 モニタリング環境に関しては、ストリーミングでのリスナーを意識した機材選びをしているという。

 

 「ヘッドホンはBEATS BY DR.DRE Beats EP、イヤホンはSONY MDR-EX110LPを使っています。今はヘッドホンやイヤホンで音楽を聴く人がかなり多いと思うので、あえてリスニング用のものを使って調整していますね。まずはヘッドホンでリズム・トラックやベース、メインのシンセなどをある程度作ります。その後、できたところまでモニター・スピーカーのYAMAHA MSP3で通して聴いて、そこからは交互に聴き比べながら微調整します。「朝になれ」ではMDR-EX110LPで聴き直して、ミックスを手掛けたmicrostarの佐藤清喜さんに調整をお願いしました。ほかの環境でちょうど良いと思っても、イヤホンで聴くと高域が強くツンとすることがあるので、そういう部分を削ってもらいましたね。ミックスも配信優先で考えているところがあります。今後もっと配信で聴かれることが増えると思うので、CD、アナログ、配信でそれぞれミックスを変えてみたいですね」

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制作時のモニター・ヘッドホンBEATS BY DR.DRE Beats EPと、イヤホンSONY MDR-EX110LPはリスニング用としても普段から使っているという

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モニター・スピーカーは最近買い換えたというYAMAHA MSP3。スピーカー・スタンドは、高さが調節できるようになっている

 加納はアナログ盤のリリースも積極的に行っており、今月には7インチ・シングル『朝になれ』のリリースも控えている。

 

 「配信やCDとは違う“音の良さ”がきっかけとなって、若い人がアナログを聴き始めていると思うんです。アナログにおしゃれさを感じている人も多いと思うので、自分もデザインまでこだわって、“映える”ものを作りたいと思っています」

 

 ボーカルはレコーディング・スタジオで録るという加納だが、プライベート・スタジオでは、仮歌やコーラス録りを行っているという。歌録りに使っているのはコンデンサー・マイクのMXL 770。それをオーディオI/OのUNIVERSAL AUDIO Apollo Twinへ接続し、ボーカル・データをLogic内へ取り込んでいる。

 

 「Apollo Twinは、ボイス・トレーナーの先生に教えてもらって3年くらい前に買いました。付属するUAD-2のリバーブやディレイもよく使います。Logic付属のエフェクトも使いますが、奥行きが欲しいときはUAD-2を選びますね

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MXL 770は仮歌のレコーディングと、スタジオで録ったメイン・ボーカルに対してのコーラスを録るために使用

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オーディオI/OはUNIVERSAL AUDIO Apollo Twinを使用。UAD-2プラグインを多用するほか、Luna Recording Systemもインストール済みとのこと

 Chester Beatty氏の“NEVEが一番声に合う”という助言もあり、加納はレコーディングでNEVEのマイクプリを多用している。ここでの作業でもUNIVERSAL AUDIO UAD-2のNeve 1084 Preamp & EQを使うそうだ。

 

 「UAD-2 Neve1084 Preamp & EQは、仮歌を録るときに試しに使うことがあります。自分は結構声が低いので、低音を前に出したいのですが、自分の声の倍音を最も引き出せるのがNEVEだと思っています。「朝になれ」も“NEVEでお願いします”と自分から言ったりしましたね」

 

 加納は今後、さらにプライベート・スタジオでのレコーディング環境を整備していきたいと語った。

 

 「環境が整ったら家でもメイン・ボーカルまで録ってみたいですね。この部屋は鉄筋コンクリートなので、場所によっては結構音が跳ね返ってしまうところがあるんです。そういうところもこれから工夫していきたいですね。あとは、これから吸音材を張ってルーム・チューニングしたいと思っています。音の響き方が全然変わると思うので、その辺りもこれからちょっとずつ整えていきたいと思います」

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練習するために購入したというエレクトリック・アコースティック・ギターのEPIPHONE AJ-220SCE/N

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D&L SOUL DL-636DP-88はリスニング用に使用しているレコード・プレイヤー。下の棚には加納のリリースした「恋せよ乙女」のアナログ盤も見られる

Equipment

[DAW System]
Computer:
APPLE MacBook Air
DAW:APPLE Logic Pro X
Audio I/O:UNIVERSAL AUDIO Apollo Twin
Controller:IK MULTIMEDIA IRig Keys 37 Pro

[Recording & Monitoring]
Monitor Speaker:YAMAHA MSP3
Headphone:BEATS BY DR.DRE Beats EP
Earphone:SONY MDR-EX110LP
Microphone:MXL 770

[Instruments]
Guitar:EPIPHONE AJ-220SCE/N
Other:D&L SOUL DL-636DP-88 Record Player

 

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加納エミリ

【BIO】1995年生まれ。北海道札幌市出身。2018年5月にデビューし、作詞/作曲/編曲/プロデュースを自ら手掛ける。ニューウェーブ、テクノ、インディー・ロックなどをルーツとした楽曲を制作。3rdシングル「朝になれ」は配信&7インチ盤でリリース。

Recent Work

朝になれ

朝になれ

  • 加納エミリ
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

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