「ANTELOPE AUDIO Galaxy 64 Synergy Core」製品レビュー:Dante/HDX/Thunderbolt対応のフラッグシップ・オーディオI/O

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 ANTELOPE AUDIOが12月にオーディオI/OのGalaxy 64 Synergy Coreを発売。2Uサイズに64ch分のライン入出力を備えるという同社のフラッグシップ・モデルです。早速、詳細をレポートしたいと思います。

ループ・シンクやワード・クロック入出力を装備
ダイナミック・レンジはD/A部で128dBを確保

 まずは外観ですが、フロント・パネルは極めてシンプルで、ボタンは電源のみ。このほかヘッドフォン・アウト(ステレオ・フォーン)とカラー・タッチ・パネル、アトミック・クロックを入力した際に点灯するインジケーターが備わっています。

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フロント・パネルは左から、アトミック・クロック入力時に点灯するインジケーター、ルーティングの設定などを行うカラー・タッチ・パネル、電源ボタンを搭載

 一方、リア・パネルにはGalaxy 64 Synergy Coreのスペックの高さを物語るさまざまな入出力端子が所狭しと並んでいます。右側には、前述した64ch分のライン入出力(D-Sub 25ピン)を搭載。上段は8chの出力×8基、下段は8chの入力×8基というふうに分かれています。

 

 左側には、AVID Pro Toolsと組み合わせて使ったときに最大32ch入出力(192kHz時)を実現するHDXポート(Mini DigiLink)×4基、二重化対応のDanteポート(RJ45)×2基、S/MUX対応のMADI入出力(オプティカル)、コンピューター接続用のThunderbolt 3(USB Type-C)×2基、さらにはS/P DIF入出力(コアキシャル)やAES/EBU入出力(XLR)、ステレオ・モニター出力(TRSフォーンL/R)を備え、まさに至れり尽くせりです。

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リア・パネル。左側上段には付属ACアダプター用の電源入力、ワード・クロック入力、10MHzのアトミック・クロック入力、ループ・シンク・イン/アウト、ワード・クロック出力×6(いずれもBNC)、S/P DIF入出力(コアキシャル)、AES/EBU入出力(XLR)、ステレオ・モニター出力(TRSフォーンL/R)、同下段にはHDXポート(Mini DigiLink)×4、Danteポート(RJ45)×2、MADI入出力(オプティカル)、コンピューター接続用のThunderbolt 3×2を備える。右側には、上段に8chライン入力×8、下段に8chライン出力×8(いずれもD-Sub 25ピン)を搭載している

 クロックはワード・クロック入力、10MHzのアトミック・クロック入力、AVID Pro Tools | HD I/Oなどと併用するためのループ・シンク入出力、また同社の高性能クロッキング技術を採用したインターナル・クロックを分配するためのワード・クロック出力×6基(いずれもBNC)を装備。電源供給には付属ACアダプターを用いますが、接続部分は引っ張っても簡単に抜けない仕様で安心です。

 

 ANTELOPE AUDIOはデジタル機器に強いイメージがあるかもしれませんが、実は優秀なマイクプリなどをリリースしており、そのアナログ回路には定評があります。今回のGalaxy 64 Synergy Coreでは、A/D部のダイナミック・レンジは121dB、D/A部は128dB、ステレオ・モニター出力部では130dBを確保しており、その仕様にこだわりを感じます。

 

 ルーティングやゲイン調整、後述のリアルタイム・エフェクト、メータリング、プリセットなどの設定は、フロントのタッチ・パネルから行えます。ルーティングは、それぞれの入出力が色分けされたマトリクスで表示され、デジタル/アナログ入出力間で自由自在かつ直感的に変更可能です。

 

 例えば、ライブ会場において演奏者の音声はFOH経由でDanteやMADIで受け、オーディエンス・マイクの音声はアナログ入力するということができます。それらをDAWでいっぺんに録音することも容易でしょう。また、モニタリングも簡単に行えます。このようにGalaxy 64 Synergy Coreは、ほかのオーディオI/Oと比べて比類の無い柔軟性を持っていると言えます。

 

リアルタイム・エフェクトを36種類内蔵
信号劣化の少ない原音忠実なサウンド

 さらにGalaxy 64 Synergy Coreは、タッチ・パネル上で設定できる32ch入力のローレイテンシー・ミキサーを8つ搭載。ハードウェアを土台としたモニタリングやシグナル・サミングなど、個々に使い分けができます。

 

 また、36種類のリアルタイム・エフェクトを内蔵。FPGAとDSPを組み合わせた独自のSynergy Coreテクノロジーがコンピューター負荷を軽減し、ニアゼロ・レイテンシーでの処理を実現します。エフェクトは、世界中のスタジオでよく使われている往年のマイクプリやEQ、コンプ、リバーブなどをエミュレーションしたものが多く、非常に実用性が高いでしょう。

 

 なお、I/O用のメイン・コンピューターとは別に、専用ソフトをインストールした2台目のコンピューターをUSB Type-Cケーブルで接続すれば、メイン・コンピューターで録音しながら2台目のコンピューターでコントロール・パネルの設定変更をする、といったことも可能です。

 

 肝心の出音ですが、AD/DA部は色付けや信号劣化の少ない原音忠実なサウンド。普段筆者が使用しているオーディオI/Oと比べても、周波数帯域が上下にしっかり伸び、音の立ち上がりも良くなる印象です。ハイエンドのオーディオI/Oの中には、良い音でも個性的なサウンドを持つモデルが少なくないのですが、Galaxy 64 Synergy Coreはそうではなく“良い音が良い音のまま出ている”というイメージです。

 

 内蔵クロックの良さも特筆すべき点。定位がより明確になり、音はナチュラルかつ“ズン”と太くなるため、国内のエンジニアにも幅広く受け入れられることでしょう。Galaxy 64 Synergy Coreは、まさに“フラッグシップ”と呼ぶにふさわしいオーディオI/Oだと思います。

 

林田涼太

【Profile】いろはサウンドプロダクションズ代表。録音/ミックス・エンジニアとして、ロックからレゲエ、ヒップホップとさまざまな作品を手掛ける。シンセにも造詣が深く、9dwのサポート(syn)としても活動。

 

ANTELOPE AUDIO Galaxy 64 Synergy Core

1,000,000円

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SPECIFICATIONS
▪コンピューター接続:Thunderbolt 3(USB Type-Cはリモート用のみ) ▪アナログ入出力::最大64イン/64アウト ▪ビット/サンプリング・レート:最高24ビット/192kHz ▪ダイナミック・レンジ:121dB(A/D)、128dB(D/A)、130dB(モニター) ▪外形寸法:約482.0 (W)×88.0(H)×270.0(D)mm ▪重量:約6.4kg

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.12以降(macOS 10.14推奨)、Mac 2012以降のThunderbolt 3搭載モデル(Thunderbolt 2互換性あり)
▪Windows:Thunderbolt 3 搭載かつ、Windows 10最新版アップデート済みのコンピューター(64ビット、Thunderbolt 2互換性あり)
▪共通:4GB以上のRAM(8GB 以上を推奨)、INTEL Core I3またはAMD FX以上のプロセッサー、インターネット接続環境

 

ANTELOPE AUDIO Galaxy 64 Synergy Core 製品情報

jp.antelopeaudio.com

 

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