現代の音楽制作に無くてはならないソフト音源。オールマイティに使えるものから特定のジャンルを象徴する製品、他者との差別化を図れる斬新な音源までそろい、まさに百花繚乱です。そうした数多くの選択肢の中から、プロの現場でリアルに重宝されているものとは何なのでしょうか? 本特集では、著名クリエイター18名に“マイ定番ソフト音源”を挙げていただき、その活用方法を語ってもらいます。
Taquwami
[Taquwami]トラック・メイカー。ハウ・トゥ・ドレス・ウェルらとの共演も経験し、国内外での評価を高める。昨年、ライアン・ヘムズワースのレーベルから毎日1曲/計31曲を発表し、それらをまとめたアルバム『31』をリリース
NATIVE INSTRUMENTS Massive
NATIVE INSTRUMENTS Massive
(18,273円)
ベースとリードへの特化をうたうシンセ。特別に設計された85のウェーブテーブルを内蔵し、それらを読み込むためのウェーブ・スキャン・アルゴリズムと3基のオシレーターが根幹となっています。別途用意されたモジュレーション・オシレーターでは、リング・モジュレーションやフェイズ・モジュレーションなどが可能。画面中央のタブでROUTINGを選択すれば、シンセ・モジュールや内蔵エフェクトを視覚的かつフレキシブルにパッチすることができます。ステップ・シーケンサーやLFO、カーブの一定区間をループ可能なエンベロープ・ジェネレーターなどモジュレーション・ソースも個性的。プリセットの数は1,300にも及びます。
音数を絞ったベース・ミュージックに向く印象で
特にサイン波とホワイト・ノイズの音が良い
知人からの薦めで使い始め、デモ音源~本チャンの制作に活用しています。音数を削ぎ落としたベース・ミュージックに向く印象で、設計がシンプルなので使いやすく、想像した音をすぐ形にできます。具体的にはベースやパッド、リードなど、さまざまなパートに使用。モジュール単位で見て音が良いと思うのは、サイン波とホワイト・ノイズです。
それらの用途は主にベースの音作り。ピッチの低い純粋なサイン波のアンプ・エンベロープ(ADSR)を調整し、内蔵エフェクトで若干ひずませるだけで、すごく良いベース・サウンドが得られます。そのベースを多少派手にしたいときには、ホワイト・ノイズをほんの少しプラスすると、ザラザラして塵(ちり)が舞っているような雰囲気に。さらに派手にしたいなら、CAMEL AUDIO CamelCrusherなどのプラグイン・エフェクトでひずませます。と言うのも、Massiveの内蔵エフェクトは少ーしひずませるのにはものすごく良いのですが、一定量を超えてからのひずみ方は好みじゃないので、そこはプラグインに頼ることにしています。また、特にCamelCrusherはMassiveのサイン波と相性が良いと思います。ベースにビリビリ感を加えたいときには、サイン波+内蔵サチュレーターの音にノコギリ波をプラス。そのノコギリ波は、超低域を思い切りローカットしてから重ねます。
ちなみにMassiveにはオシレーターが3つ備わっています。個人的な経験から、まずは2つのオシレーターで基盤となる音を作り、残りの1つを“ふりかけ”のようなイメージで使用すると良い感じに仕上がると思っています。
この曲で活躍!
上モノとベースに計11本のシンセを使っていて、うち7本がMassiveです。まずはイントロの最初から鳴っているパッドがそう。曲のイメージを印象付けるコード感がさらに印象深くなるよう、ふわふわした音を作りました。内蔵エフェクトはビット・クラッシュ→リバーブ→コーラスです。00:30~のベースもMassive。これはまさに、サイン波をわずかにひずませただけ。アタックを強めにして、キックのような音にしています。あとは01:01~のリード、02:49~のベースもMassiveです。
製品情報
DAWに立ち上がる“マイ名機”の使い方
これが私の定番ソフト音源!
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