エンジニアの林憲一氏が自身の愛用マイク=ソニーのC-100を用いて、自宅録音の方法をレクチャー! 最後は、DIY配信を想定した音声の収録方法を見ていこう。なお、記事末尾にはC-100と5万円程度のコンデンサー・マイクの音質を比較できる音源のダウンロード・リンクを用意しておいたので、併せてお楽しみいただきたい。
Photo:Chika Suzuki Movie:Kazuki Kumagai
Location & Cooperation:ogikubo velvetsun
C-100やPCM-D10で演奏動画の音を録る
2人へのマイキングを決めた後、YouTubeなどで公開することを想定した演奏ムービーを撮ってみました。なるべく手軽に撮影できる例として、スマートフォンとタブレットの内蔵カメラを使用。いわゆる“2カメ”での撮影です。
音声については、スマホとタブレットの両方で録音。スマホ側でC-100の音を録り、タブレットでは内蔵マイクを使います。後で録り音を比べてみましょう。なお、スマホにはC-100を直接つなげられないので、スマホ対応のオーディオ・インターフェースを用意しました。ただし、両者の接続にLightning – USBカメラアダプタが必要になる場合は注意が必要です。スマホからインターフェースに電源が供給されなくなるため、USB電源アダプターなどを別途用意し、外部から電源を確保しましょう。
スマホの中で使用したのは、標準搭載のカメラ・アプリです。ムービーとともにC-100からの音も録れるのですが、別の機器にも録音しておいた方が安心なので、ソニーのハンディ・レコーダーPCM-D10を使いました。オーディオ・インターフェースをもう1台用意して、パソコンにDAWを立ち上げて……とやるよりもずっと手軽だからです。XLR/TRSフォーン・コンボのマイク/ライン・インを備えるのもポイントで、インターフェースのライン・アウトを直接つなぐことが可能。PCM-D10もスマホのカメラ・アプリも、ステレオの各チャンネルに歌とアコギがそれぞれ記録されるので、ムービー編集時にモノラル分割して使うとよいでしょう。
ムービーのような“収録モノ”でもライブ配信でも、スマホやタブレットの内蔵マイクで済ませようとするのではなく、ハイクオリティなマイクを使うことで演奏の生き生きとした感じを伝えられると思います。特にC-100はトランジェント特性に優れているので、視聴者に伝わる音場も内蔵マイクとは比較にならないほどリアルなものになるはずです。
ちなみに、ライブ配信するときは、ミュージシャンの顔にマイクがかぶらないようにするとよいでしょう。音のクオリティを重視するなら、この企画で紹介しているようなマイキングを行った上でカメラ・アングルを考えてみてはいかがでしょうか。きちんと構図を決めてから、スマホのアウト・カメラで画質重視の配信を行うもよし、イン・カメラを使って視聴者とコミュニケーションを取りながら進めるもよし、楽しみ方は人それぞれです。
C-100の総評:ステップ・アップのためにもお勧め!
自宅でのマイク録りクオリティ・アップをテーマにノウハウを紹介してきましたが、実は部屋鳴りなどが面白い効果を生む場合もあります。例えばちょっと変わったアンビエント・ミュージックなどを作りたければ、C-100を無指向性にして高いところに設置し、アコギを録ったりすると意外性のある音が得られるかもしれません。
C-100は情報量豊かで素直に収音できるマイクなので、どんなソースにも使いやすいし、パフォーマンスを繊細にとらえることができます。ただし、コンデンサー・マイクなので、特に歌録りで多用する場合は湿気の少ない状態で保管することをお勧めします。例えば、ファスナー付きのビニール袋にシリカゲルなどの乾燥剤を入れ、その中に保管しておくようなやり方です。とは言え、ソニー製のマイクなので、耐久性にも優れていると思います。アフター・ケアに関しても安心感がありますし、そういった部分も含めセルフ・レコーディングをワンステップ上げたい方にお薦めですね!
【連動音源の内容】
●2ミックス(ボーカル+アコギ+バック・トラック)
・ボーカルとアコギをC-100で録ったバージョン
・ボーカルとアコギを比較用マイクで録ったバージョン
●ボーカル
・C-100で録ったボーカル
・比較用マイクで録ったボーカル
●アコギ(GIBSON Hummingbird)
・C-100で録ったHummingbird
・比較用マイクで録ったHummingbird
●アコギ(GIBSON J-45)
・C-100で録ったJ-45
・比較用マイクで録ったJ-45
●デュオ(ボーカル+アコギ)
・C-100×1本で録ったデュオ
・比較用マイク×1本で録ったデュオ
※上記の通りフォルダー分けしています
※各音源ファイルの形式は24ビット/48kHz WAV。総容量は約234MB(zipファイル)
林 憲一
【Profile】ビクタースタジオでサザンオールスターズなどの作品制作に携わった後、フリーランスのレコーディング/ミキシング・エンジニアに。近年は、Sakuやminami rumiのセッションのほか、miwaや石崎ひゅーい、DISH//、村松崇継らを手掛ける。
minami rumi
【Profile】バンド“キャラメル”を経て、シンガー/作詞・作曲家として活動。Paravi、バスクリン、ヤクルト、ファイブミニ、グリコなどのCMで歌唱を担当しつつ、指原莉乃プロデュースのアイドル“=LOVE”への曲提供や藍井エイルの作詞などを展開する。
Saku
【Profile】昭和音楽大学在学中に、ユニットで日本コロムビアからメジャー・デビューし、現在は作編曲家/サウンド・プロデューサー/ギタリストとして活動。関ジャニ∞、ジャニーズWEST、藍井エイル、ASCA、斉藤壮馬、天月らに楽曲提供などを行う。