歌+アコギの弾き語りを録音する方法を指南!〜自宅録音&DIY配信のクオリティ・アップ術

歌+アコギの弾き語りを録音する方法を指南!〜自宅録音&DIY配信のクオリティ・アップ術

エンジニアの林憲一氏が、自身の愛用マイクであるソニーのC-100を用いて、ボーカル録りの方法をレクチャー! 自宅環境を想定したノウハウが満載だ。ここでは、歌+アコギの弾き語りを録音する方法を見ていく。なお、記事末尾にはC-100と5万円程度のコンデンサー・マイクの音質を比較できる音源のダウンロード・リンクを用意しておいたので、併せてお楽しみいただきたい。

Photo:Chika Suzuki
Location & Cooperation:ogikubo velvetsun

声とアコギのバランスで位置決め

 続いては、アコギの弾き語りを録音する方法です。まずは1本のC-100で録るパターンから。吸音については歌録りのときと同様です。カーペットで床からの反射音を減らしつつ、ミュージシャンの後ろと横に布を立てて壁から来る反射音を抑えたり、音が壁に行くのを抑制して反射の原因を減らすなどします。例によって、自宅では服を掛けたハンガー・ラックや毛布で吸音するとよいでしょう。

 

 次にマイキング。弾き語りを1本で収める場合は“声量とアコギの音量のバランスをどう取るか”がポイントになるので、想定しているバランスが得られる位置を探すことが重要です。どこがベストかは、シンガーの声量や楽器のキャラクター、欲しいバランスによるので、アコギ録りのときと同じく試し録りして“ここ”という位置を見付けましょう。

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弾き語りをC-100×1本で録るときのマイキングの一例。吸音は歌録りの際と同じだが、マイクは少し離した位置にセット

 今回は、ボーカル+アコギの全体をとらえるイメージで、歌録りのポジションよりも少し離した位置にC-100を立ててみました。高さに関しては、下げれば下げるほどアコギが大きく入ってきますし、上の方に設置して口元にフォーカスすれば歌が大きくなります。C-100はあらゆる周波数を満遍なく収められるので、バランスを取りやすいでしょう。ただ、少し離して設置するとどうしても音に空間ができてしまうので、歌とアコギの両方を前に張り付いた感じの音にするのは難しいです。なので、そうしたい場合はそれぞれに1本ずつ立てるのがよいと思います。

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マイクをやや離して設置するのは、声+アコギの全体像を1本でとらえるため。また、マイクの高さを変えることで歌とアコギの音量バランスを調整できる

2本で録る場合は“かぶりありき”で設置

 歌とアコギのそれぞれに1本ずつマイクを立てる場合は、“かぶり”が問題になってきます。かぶりとは、ボーカル・マイクにアコギの音が入り込んでくるような現象のことで、複数のマイクを同時に立てて録音する際に生じます。これを無くすのは不可能ですし、かぶりありきで2本のマイクの音を共存させるように立てるのが得策です。ポイントは、両者を合わせて聴いたときに音がくしゃっとならない位置を探すこと。なぜか歌が前に出てこなかったり、アコギが元気良く鳴らなかったりしたら、ボーカル・マイクを固定しつつアコギのマイク位置を調整するなどしてみましょう。

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2本のC-100で歌とアコギを個別に狙うマイキングの一例。いずれにもかぶりが発生するので、両者をミックスしたときに音がくしゃっとしない位置を探ってみよう(もし音に違和感があったら“位相ズレ”という現象が起こっている可能性高し)

 C-100のようなコンデンサー・マイクをアコギに使用して、歌にはダイナミック・マイクを立てるという手もあります。ダイナミック・マイクは往々にしてコンデンサー・マイクよりも感度が低いので、まずはかぶりを減らせます。で、アコギの方は高域を奇麗に伸ばしたいからコンデンサー・マイクを使う。コンデンサー・マイクの高域をEQなどで持ち上げると、かぶっている歌の高域成分も同時に上がってきます。一方、ダイナミック・マイクは中域寄りの音に録れることが多いため、ミックスしたときにボーカルの高域の抜けを補完できる場合があるんです。

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ダイナミック・マイクとC-100の合わせ技も有用なテクニック。ダイナミック・マイクでかぶりの少ない歌を録り、レンジの広いC-100でアコギを収めると、ミックスしたときに全体としてバランスの良い音を得られる場合がある

 歌と楽器を同時に録るのは、僕らプロ・エンジニアにとってもたやすいことではありません。どうしても納得のいく音が得られなければ、アコギ→歌という順に多重録音してミックスで作り込んでもよいと思います。

デュオの録音も聴きながら位置を決める

 今度は、歌とアコギのデュオを1本のC-100で録ってみます。演奏してもらっている間にC-100を動かしつつヘッドホンでチェックし、一番良いと思える設置ポジションを選びました。録音後、全く同じところに比較用のマイクを立ててみたら、あらためてC-100が空気感までよくキャッチしていることを実感。中域の張り出しが無いため、低域から高域までよく見えるのです。

 

 同じデュオを2本のC-100で録る場合は、もともとの音量が小さい歌を基準にマイキングします。手順の一例としては、まずアコギのC-100のゲインのみ絞り切りに設定。2人にパフォーマンスしてもらい、ボーカルのC-100にアコギがどの程度かぶっているかをヘッドホンで確かめます。かぶりが大きければ、“ボーカル・マイクへのかぶりだけだとアコギの音量が足りない”という状態になるまでギタリストの位置を離しましょう。あとはアコギのC-100のゲインを上げて録音するだけ。2本のC-100を合わせたときにくしゃっと聴こえるなら、ギタリストの位置を微調整したり、両者の間に吸音できるものを設置するのが手です。

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歌とアコギを別々のミュージシャンが担当する場合も、演奏を聴きながらベストなマイク位置を探ってみよう。エンジニアが居ない場合は、幾つかのポジションで試し録りして比較検討するのがよい

 

C-100のインプレッション:クリアな音で自分の声がよく分かる(minami rumi)

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 実は私もC-100のユーザーで、自ら購入したものをここ1年、自宅録音に活用しています。とにかく音がクリアだから、奇麗に歌いたい曲で気持ち良く声を出せる印象で。特にバラードとかは、歌うのが楽しくなりました。ロング・トーンなども奇麗に入るし、ヘッドホンに返ってくる自分の声を聴いていると、歌いながらより透き通った感じに持って行くのがとてもやりやすい。前は5万円程度のコンデンサー・マイクを使っていましたが、過去に録ったバラードを聴いたりすると“C-100で録り直したい”と思うくらいです。

 クリアな反面、太さや芯みたいなものが無いのかな?と思いきや、実はめちゃくちゃ低いところまできちんと拾っていて、音域が低い平歌の部分も歌いやすいんです。マイクによっては、サビは歌いやすいけどAメロやBメロが歌いにくい、ということもあるんですけど、C-100ならどんな音域でも自分の声が分かりやすい。声を張っても耳に痛くならないし、とても気に入っています。

C-100のインプレッション:モニターを大きくしなくても演奏しやすい(Saku)

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 僕は林さんにレコーディングしてもらうことが多く、最近のアコギ録りはほとんどがC-100なんです。音がクリアでキラキラした感じだから、キュー・ボックスでアコギの音量を上げなくてもニュアンスがつかみやすく、スムーズに演奏できます。また、コントロール・ルームで録り音をチェックするときにも“ブースでモニターしていた音と何か違う……”みたいな違和感が無く、同じ印象に聴こえるんです。だからC-100の音で“これだ”と思ったプレイをすると、きちんと結果に反映されています。僕も購入したいと思っていますね。

 

【連動音源の内容】

●2ミックス(ボーカル+アコギ+バック・トラック)
・ボーカルとアコギをC-100で録ったバージョン
・ボーカルとアコギを比較用マイクで録ったバージョン

●ボーカル
・C-100で録ったボーカル
・比較用マイクで録ったボーカル

●アコギ(GIBSON Hummingbird)
・C-100で録ったHummingbird
・比較用マイクで録ったHummingbird

●アコギ(GIBSON J-45)
・C-100で録ったJ-45
・比較用マイクで録ったJ-45

●デュオ(ボーカル+アコギ)
・C-100×1本で録ったデュオ
・比較用マイク×1本で録ったデュオ

※上記の通りフォルダー分けしています
※各音源ファイルの形式は24ビット/48kHz WAV。総容量は約234MB(zipファイル)

 

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林 憲一

【Profile】ビクタースタジオでサザンオールスターズなどの作品制作に携わった後、フリーランスのレコーディング/ミキシング・エンジニアに。近年は、Sakuやminami rumiのセッションのほか、miwaや石崎ひゅーい、DISH//、村松崇継らを手掛ける。

 

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minami rumi

【Profile】バンド“キャラメル”を経て、シンガー/作詞・作曲家として活動。Paravi、バスクリン、ヤクルト、ファイブミニ、グリコなどのCMで歌唱を担当しつつ、指原莉乃プロデュースのアイドル“=LOVE”への曲提供や藍井エイルの作詞などを展開する。

 

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Saku

【Profile】昭和音楽大学在学中に、ユニットで日本コロムビアからメジャー・デビューし、現在は作編曲家/サウンド・プロデューサー/ギタリストとして活動。関ジャニ∞、ジャニーズWEST、藍井エイル、ASCA、斉藤壮馬、天月らに楽曲提供などを行う。

【特集】自宅録音&DIY配信のクオリティ・アップ術

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