近ごろ、ますます必要性を高めているホーム・レコーディングや自宅からのライブ配信。クオリティ・アップのためには、まず“音の入り口”を見直すのが近道だろう。この企画では、エンジニアの林憲一氏が普段から愛用のソニー製コンデンサー・マイク=C-100を使いながら、マイキングを指南していく。まずはレクチャーの前に、林氏がなぜC-100を選ぶのか、その魅力について語っていただこう。
Photo:Chika Suzuki
Location & Cooperation:ogikubo velvetsun
林 憲一
【Profile】ビクタースタジオでサザンオールスターズなどの作品制作に携わった後、フリーランスのレコーディング/ミキシング・エンジニアに。近年は、Sakuやminami rumiのセッションのほか、miwaや石崎ひゅーい、DISH//、村松崇継らを手掛ける。
Featuring Gears:C-100 & MDR-7506
メインと高域用の2つのダイアフラム(収音部)を備えるソニー製のコンデンサー・マイク。50kHzという超高域まで収められ、ハイレートの録音にも力を発揮する。単一/全/双の指向性切り替えが可能。価格はオープン・プライス(市場予想価格:172,568円前後/税込)。
40mm径ドライバーを採用したソニー製の密閉型ヘッドホン。プロの現場でも使われており、最大入力1,000mVというスペックを誇る。価格はオープン・プライス(市場予想価格:19,800円前後/税込)。ソニーからはMDR-CD900STやMDR-M1STといったスタジオ用ヘッドホンも発売中。
林憲一氏がC-100を選ぶ理由
僕はC-100を3本所有しています。購入の動機はストリングス・セクションの録音に使いたかったからで、音に“硬さ”を感じないんです。例えば小規模なストリングス・セクションをコンパクトなスタジオで録ると、どうしても耳に痛い音になってしまいがちなのですが、C-100ならそれがありません。プロ機としては価格が手ごろということもあって購入し、今ではボーカル、アコースティック・ギター、ガット・ギター、ドラムのトップなどにも使っています。
“音が硬くない”という特徴は、日本語詞の歌を録るときにも生きてきます。日本語は、英語とは違い母音の持続時間が長いので、中域の押し出しが強いビンテージ・マイクなどで録音すると耳に痛く聴こえる場合があるんです。でもC-100はそこをうまく“いなす”というか、非常にスムーズな音が得られます。これは中域に極端なピーク(持ち上がった部分)が無い設計だからでしょう。高域にもピーキーなところが感じられず、女性シンガーの張った声も心地良い音で録れます。
低域から高域までほぼ色付けが感じられずフラットなので、各パートをC-100だけで録ってミックスしても、同じような帯域に音が固まってしまうことはないはず。EQが少なくて済むでしょうし、自宅録音でも汎用性が高いと思います。
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